2013 Fiscal Year Research-status Report
環境中の放射性セシウム137の検出と除去を行う新規レセプターの計算化学による設計
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24550172
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
PICHIERRI Fabio 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40374920)
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Keywords | 有害化学物質 / 計算化学 / イオン認識 / セシウム137 |
Research Abstract |
平成25年度は、Cs-137と2つのレセプター分子、すなわち8個のベンゼン環で構成されているカリックスアレーン分子、SO2基を含むスルホラン分子とのそれぞれの相互作用を調べた。その構造解析結果によれば、カリックスアレーンは、単一のCs+イオンを包接するのに適切なサイズの空洞を有する分子である。例えば、Li+及びNa+などの小さいサイズのイオンの場合は、8個のベンゼン環のうちの3個のベンゼン環としか結合していない。したがって、Li+及びNa+の場合は、このカリックスアレーンのマクロサイクルによって選択されているとはいえないことがわかった。一方、より大きなK+とRb+イオンは、マクロサイクルの空洞全体を占有するサイズであり、結合するにはCs+と競合する。計算した結果、Cs+と結合するための結合エネルギーは71.1kcal/molに相当することがわかった。しかしながら、このエネルギーは、対イオンがマクロサイクルの近くに存在するときには変化すると予測される。そこで、3種のアニオンがイオン対の結合に及ぼす効果を調べた。計算の結果、Cs+/Br-イオン対は最も高い結合エネルギーを有するとわかった。 スルホランは4.7デバイという大きな双極子モーメントを持っている。そのため、スルホランのSO2部分にイオンが配位して相互作用を持つことが期待される。そこで、異なるスルホラン:M+ 錯体(M+=Li+からCs+まで)のそれぞれの結合エネルギーを計算した結果、Li+との錯体が最も大きく、Cs+との錯体へと順に減少することが示された。しかしながら、より大きなCs+イオンは、より多くのスルホラン分子と相互作用して錯体を形成する。 さらに、セシウム塩の結晶学的データ(単位胞とBraggの法則に関連する面間距離)の研究を行い、Cs+の正確なイオン半径を得、計算した構造の結合半径と比較した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大きな問題がなく、計算が順調に進んだため。
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Strategy for Future Research Activity |
最近の実験結果(二村ら、J. Environ. Radioact., 2014)によると、Cs+は、硫酸とアンモニアイオンなどの他のイオンとの組み合わせで、土壌中に存在することが示されている。よって今後は、アンモニアや硫酸イオンとCs+との相互作用を研究し、それにより生じるクラスターの構造を調査する。これらのイオンがCs+イオンに配位したとき、水に溶解しない中性な粒子が得られるので、これらの粒子の構造を理解することによって、Cs+イオンを捕獲するレセプターを設計することが可能になる。また、フラン分子に基づいた新しいレセプターでも、酸素原子を介してCs+と結合する能力を持っているかを調査する。
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Research Products
(3 results)