2013 Fiscal Year Research-status Report
光機能材料の調製と光電極系による溶液処理・計測への応用
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24550174
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
前田 康久 静岡大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00159138)
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Keywords | 低環境負荷物質 |
Research Abstract |
【酸化鉄光電極による水溶液中の有機物の光酸化挙動】電位パルス電析によりチタン基板上に酸化鉄膜を析出させ、空気下で熱処理することで酸化鉄電極を得た。ヘマタイト構造の酸化鉄電極は、可視光照射により明瞭な光電流応答を示した。水溶液中にクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸などのヒドロキシ酸が含まれている場合、顕著な光電流増加が起こり、ヒドロキシ酸の構造の違いにより光酸化プロセスが異なることがHPLC測定により分かった。得られた成果は、ヘマタイト上での可視光照射に伴う有機物の光酸化挙動を初めて明らかにしたものであり、溶液浄化、有機物の新規酸化プロセスと人工光合成への展開が期待される。 【ナノポーラス二酸化チタン光電極による水溶液中の有機物の光酸化挙動】フッ化アンモニウムを含んだシュウ酸水溶液中でのチタンの陽極酸化により作製したナノポーラス二酸化チタン電極を用いて、紫外光照射下でのベラトリルアルコールの光酸化挙動を明らかにした。約97 nmの孔径の電極において、芳香族環の開裂を示すケトマロン酸およびギ酸の生成量が多くなるのに対し、ナノポーラス構造が崩壊した電極では有機酸の生成量は少量であった。難分解性有機物の光酸化の反応場として、ナノポーラス二酸化チタンの利用が期待される。 【ダイヤモンド電極による水溶液中の有機物の酸化処理・計測】ボロンをドープしたダイヤモンド薄膜を電極とする水溶液中のp-ニトロフェノール、クロロフェノールのアノード酸化分解プロセスを明らかにした。ダイヤモンド電極による溶液中の色素の電気化学検出を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【酸化鉄光電極による水溶液中の有機物の光酸化挙動】電位パルス電析により作製した酸化鉄膜では、熱処理温度によるマグネタイト→マグヘマイト→ヘマタイトの構造変化が見られた。ヘマタイト電極上では可視光によるヒドロキシ酸の光酸化反応が進むことを明らかにできたので、酸化鉄上での有機物の酸化プロセスを人工光合成への応用を含め系統的に解明できるものと考えている。成果を国内の学会で発表した。 【ナノポーラス二酸化チタン光電極による水溶液中の有機物の光酸化挙動】ベラトリルアルコールの光酸化におけるナノポーラス構造の反応場としての有用性が明らかになったので、他の有機物の光酸化処理へのさらなる展開が期待される。成果を国内の学会で発表した。 【ダイヤモンド電極による水溶液中の有機物の酸化処理・計測】ボロンをドープしたダイヤモンド電極はp型半導体電極の特性を示し、アノードとして用いることにより水溶液中の難分解性有機物の迅速な酸化分解処理が可能であった。成果を国際シンポジウム(イタリア)で発表した。ダイヤモンド電極は水溶液中の低濃度色素類への電気化学応答性が高く、従来の電極では困難であった10μM以下のメチレンブルーの電流測定による検出が可能であった。成果を国内の学会に発表し、論文にまとめた。 以上得られた成果は新規性が高く、今後の大きな展開が考えられるので、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
【二酸化チタン光電極およびダイヤモンド電極による水溶液中の有機物の酸化挙動】水溶液中の有機物の酸化において、二酸化チタン光電極プロセスとダイヤモンド電極プロセスを比較し、詳細を明らかにする。二酸化チタン光電極とダイヤモンド電極を組み合わせた新しい溶液中の有機物の酸化処理システムを構成する。 【酸化亜鉛光電極による水溶液中の有機物の光酸化挙動】硝酸亜鉛水溶液中での電解析出により面積の大きい酸化亜鉛膜を作製し、光電極として用いた場合の水溶液中の難分解性有機物の光酸化処理性能を二酸化チタン光電極と比較して明らかにする。 【酸化鉄電極および酸化銅(I)電極による可視光照射下での水溶液中の有機物の光酸化還元挙動】電解析出により作製した酸化鉄(n型半導体)および酸化銅(p型半導体)を用いた可視光応答型光電極系を構成し、酸化鉄電極上での有機物の光酸化と酸化銅電極上での光還元反応に基づく光エネルギー変換システムを考案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
52,620円の残額が生じたのは、物品費がやや少なかったからである。次年度は、本残額を繰り越して使用する。 次年度使用額752,620円の内、物品費352,620円、旅費400,000円として使用する予定である。
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