2013 Fiscal Year Research-status Report
放射性同位体の土壌から水圏への移行に及ぼす共存微量元素と微生物の影響
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24550176
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中島 覚 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 教授 (00192667)
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Keywords | バイオマット / 環境放射能 / 電子顕微鏡 / 鉄 / カリウム |
Research Abstract |
広島大学東広島キャンパス内の河川中でバイオマットと呼ばれる微生物がつくる金属鉱物が分布している河川の状況を調査した。その結果同じ河川中でもバイオマットの存在量に違いがみられた。それぞれの場所の、鉄、マンガンなどの重金属、カリウムなどのアルカリ金属の水中濃度をICP発光分析により求めた。その結果、バイオマットがたくさん存在する場所の水には鉄、マンガンの存在量が高いことが分かった。 バイオマットを使って水中の鉄、マンガン、カリウムの吸脱着実験を行った。この吸脱着実験では水温を変えて実験を行った。さらに、バイオマットをオートクレーブ処理して同様の実験を行い、バイオマットの活動との関係を明らかにした。カリウムに関しては、採取したままのバイオマットでは吸着するのに対し、オートクレーブ処理すると脱着がみられることが分かった。水中の全β放射能は主としてK-40に起因することをすでに明らかにしているが、その季節変化はバイオマットによるカリウムの吸脱着に起因することが分かった。 バイオマットの顕微鏡写真を撮れるように試料調製条件を検討した。エポキシ樹脂を用いたり、カーボンテープを用いたりして電子顕微鏡写真が撮れるようになった。電子顕微鏡写真は、キャンパス内のバイオマットだけでなく、東広島市内の別の河川からも採取して観察した。 バイオマットのエネルギー分散型X線分析を行った。その結果、バイオマット中の元素組成が分かった。いずれのバイオマットからも鉄、アルミニウムが観測された。また、採取場所の違いにより、マンガンの存在量に変化があった。これらはバイオマット中、均一に分布していることも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで微生物の活動状況と環境水中の全β放射能濃度との関係を明らかにしてきた。今年度、微生物がつくるバイオマットそのものを電子顕微鏡で観察することに成功し、そのエネルギー分散型X線分析に成功したことは大変意義があると考えている。 さらに、バイオマットをオートクレーブ処理するとカリウムの吸脱着に違いがみられることは、土壌から水中への天然放射性核種の移行にバイオマットが関係することを明らかにするものであるからである。
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Strategy for Future Research Activity |
放射性同位元素の土壌から水圏への移行がより明らかになった。しかも微生物活動との関係でより明らかになったので、これを福島第一原子力発電所事故後に汚染米が出る原因解明につなげたい。 すでに、米中の放射性セシウムの研究を開始し、共存カリウムとの関係で検討を開始した。土中の、放射性セシウム、カリウムが競争しながら根に吸収され、それがさらに競争しながら茎をとおって実まで進む状況を、現在研究している放射性同位元素の移行との関係で明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度購入した消耗品の一部を今年度使用できたためである。そして、次年度の予算が少ないので、少量でも残しておき、次年度使えるようにしたためである。 次年度必要な消耗品費に充てる。
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