2013 Fiscal Year Research-status Report
水熱酸化法とフェントン型促進酸化による有機塩素化合物分解の反応機構の解明と応用
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24550177
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
米谷 紀嗣 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80295683)
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Keywords | 廃棄物処理 / 有機塩素化合物 / 水熱酸化法 / 触媒 / フェントン法 |
Research Abstract |
昨年度の研究で、酸化銅(I)がクロロフェノールの水熱酸化における触媒として高活性であることを見出した。そこで、平成25年度の研究では、(1)酸化銅(I)触媒を用いた際の反応機構の解明、(2)分解生成物の分析と反応速度の解析、(3)最適な反応条件の探索、の3点について研究を実施した。その結果、以下に述べる結果を得た。 (1)安息香酸をプローブに用い、ヒドロキシ安息香酸の生成量の経時変化を観測したところ、反応温度100~200℃でヒドロキシラジカルの生成量が大幅に増えることが分かり、触媒に含まれる銅イオンによるフェントン型反応が水熱酸化促進に寄与していることを確認した。また、安息香酸の分解は擬二次反応式に従うことを明らかにした。 (2)クロロフェノールの水熱酸化分解において全有機炭素量(TOC)の経時変化を測定したところ、反応開始後約10秒で急激にTOCが減少し、その後一定になることが分かった。HPLCによる分析から主な分解生成物はシュウ酸であり、この分解がTOC減少の律速になっていることを明らかにした。 (3)1 mMのクロロフェノール含有水に対し、酸化剤である過酸化水素の濃度と、触媒である酸化銅(I)の濃度の最適値を探索した。その結果、過酸化水素の最適量は完全酸化に要する化学量論量とほぼ一致する14 mMであり、触媒の最適量は39μM(式量濃度)であることを明らかにした。過酸化水素や触媒を過剰に加えると分解効率が低下するのは、過酸化水素や触媒自体によるヒドロキシラジカルの補足が生じることが原因であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、分解処理が困難な有機ハロゲン化合物およびそれらを含む廃液等に対し、水熱酸化法をベースに独自に開発したフェントン型触媒を用いて酸化分解を促進させ、反応温度を大幅に下げて処理を可能にすることである。これにより、処理における省エネルギー化や省資源化を実現できると考えている。 これまでの研究で、(1)反応装置の製作、(2)触媒使用時の有機ハロゲン化合物の水熱酸化分解における反応機構の解明、(3)多様な有機塩素化合物の高度処理の実現、(4)酸化銅(I)が高活性触媒であることを発見、(5)分解反応の速度論的解析、(6)最適反応条件の決定、の6点について十分な成果を得ることができた。以上のことから、ほぼ当初計画通り進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、これまでの研究成果を集約し、実用化へ向けた検討に着手する。現実稼働に近い固定床型反応器の試作と評価、反応方式を固定床型へ変更することに伴う触媒の改良、多様な有機ハロゲン化合物への応用などを計画している。また、酸化銅以外の新たな高活性触媒の探索も計画している。具体的には、Cuと同じ第4周期遷移金属を中心に、V、Cr、Mn、Ni、Coなどの酸化物を取り上げ、水熱酸化法によるクロロフェノールの分解率を指標として、それらの活性を評価、比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬購入費が当初の見積もりより少なく済んだため、若干の繰越金が発生した。 繰越金を使用して学会発表や論文発表の回数を増やすことを計画している。
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