2013 Fiscal Year Research-status Report
βペプチド分解酵素を提示した全細胞触媒の創出とβポリアスパラギン酸合成への応用
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24550180
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
平石 知裕 独立行政法人理化学研究所, 前田バイオ工学研究室, 専任研究員 (20321804)
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Keywords | バイオベースポリマー |
Research Abstract |
地球環境問題と資源有効利用の両面から、バイオマスを原料とし、生物由来である酵素を触媒としたバイオポリマー製造技術の開発が望まれる。我々が最近発見したβペプチド分解酵素(PahZ1)は、反応の可逆性からアスパラギン酸から新奇なポリマーであるβポリアスパラギン酸(β-PAA)を合成できる。一方、細胞表層工学技術は、酵素を細胞表層へ提示することで、細胞を自己増殖可能な全細胞触媒へと変えることができる。そこで本研究では、本酵素を大腸菌表層に提示し、全細胞触媒の有する優れた能力(自己増殖能・細胞毒性回避・酵素安定化等)を利用したβ-PAA 合成法を開発する。さらに、進化工学による酵素の高性能化を行い、本系の高効率化を目指す。 本年度は、「ハイスループットなPahZ1の進化工学システムの構築」に当たって重要なファクターの一つである酵素基質の選択に関する研究を行った。これまでの研究から、PahZ1はβアスパラギン酸ユニット間のペプチド結合を認識することが分かっているが、その光学異性体認識に関する知見は得られていない。そこで、PahZ1の光学異性体基質認識に関する詳細な知見を得ることを目的として、D体およびL体の様々な連鎖を有するβアスパラギン酸3量体を設計し、本酵素による酵素分解反応を行った。その結果、本酵素は(β-D-Asp)-(β-D-Asp)-(L-Asp)および(β-D-Asp)-(β-D-Asp)-(D-Asp)を除く全てのβアスパラギン酸3量体を基質とし得ることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本申請研究では、細胞表層工学技術によってβペプチド分解酵素(PahZ1)を大腸菌表面に提示した全細胞触媒を作製し、PahZ1 の進化工学による高性能化を計るとともに、全細胞触媒によるβ-PAA 合成反応を行うことを目標としている。 酵素進化工学では、「目的とする反応に特化したスクリーニングシステムの構築」が重要となるため、本年度はPahZ1の光学異性体基質に対する認識について調べ、スクリーニングに使用する基質を決定した。このことにより、「ハイスループットなPahZ1の進化工学システム」がほぼ構築できた。しかしながら、βアスパラギン酸3量体の合成に予想以上に時間がかかってしまったため、当初の計画よりやや遅れていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度において「ハイスループットなPahZ1の進化工学システムの構築」がほぼ達成できている。そこで今後の研究推進方策として、当初の計画通り本システムを使用して「高性能化PahZ1を提示した全細胞触媒の創成」を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度において研究がやや遅れ気味であった結果、本年度実施予定であったハイスループットスクリーニングに必要な機器や消耗品の購入を平成26年度に延期したために残額が生じた。 平成26年度では、高性能化した変異酵素のハイスループットな選抜手法の一部としてPCR を用いた突然変異導入・部位特異的飽和変異導入・DNA 再構築反応を行うため、使用に最適と考えられるスペックを有するサーマルサイクラーの購入費用を設備備品費として計上した。一方、消耗品については、DNA 修飾酵素などの比較的高額な生化学試薬が必要となるうえ、使い捨てのプラスチック器具を多用することになる。さらに、多数の変異体クローンの塩基配列解析が必須であることから、遺伝子解析に関する生化学試薬および消耗部品の購入費用を消耗品費として計上した。この他、成果発表の旅費や論文投稿費を計上している。
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