2014 Fiscal Year Annual Research Report
病原性細菌の鉄取り込みに関与するタンパク質の構造・機能に関する研究と創薬への応用
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24550182
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
内田 毅 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30343742)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 病原菌 / 鉄 / 酵素 / ヘム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は病原菌の一つであるコレラ菌が増殖に必要とする鉄原子を獲得する機構を明らかにすることを目的とした研究である。遺伝子解析からHutZがヘム分解酵素であることを予想されたので、大腸菌での発現系を構築し、そのヘム分解活性を調べた。その結果、HutZはヒトのヘム分解酵素とアミノ酸配列に相同性がないが、同じ反応機構でヘムを分解することがわかった。しかし、この分解活性はpH 6以下で発現するが、pH 8以上ででは発現しないというpH依存性があることがわかった。ラマン分光法など分光学的手法を用いた構造解析から、基質であるヘムと結合するHis170が隣接するAsp132と水素結合を形成し、この水素結合の強度の変化と酵素活性が関連していることがわかった。これは、この水素結合により、His170からヘムへの電子供与性が変化し、ヘムの還元速度、自動酸化速度が変化することで、酵素活性が制御されるという新規なヘム分解活性制御機構を明らかにすることができた。 続いて、HutZとオペロンを形成しているHutX, HutWに注目した。遺伝子解析から、HutXはヘム結合蛋白質と予想されたことからHutZに基質であるヘムを輸送する蛋白質、HutWは鉄-硫黄クラスターの結合モチーフが存在することから、ヘム分解反応に必要な電子供与体である可能性が考えられた。そこで、これらの蛋白質のヘム取り込みにおける役割を検討するため、大腸菌での発現系を構築し、機能・構造解析を行った。HutXは2当量のヘムと結合し、その親和性はHutZより高かった。しかし、ヘムと結合させたHutXとヘムと結合していないHutZを混合すると数秒以内にヘム移動が観測された。親和性が高いのにも関わらず、ヘムを含まないHutXを10倍当量追加しても、逆移動が起こらなかったことから、HutXからHutZへのヘムの輸送は不可逆的であることがわかった。このことからコレラ菌内でヘム分解酵素にヘムを輸送する蛋白質として、HutXを世界で初めて見出した。
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Research Products
(8 results)