2012 Fiscal Year Research-status Report
microRNAのターゲット捕捉機構を狙い撃つ新規核酸素子の開発
Project/Area Number |
24550186
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
山吉 麻子 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (70380532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 章 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (60210001)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | microRNA / 核酸医薬 / アンチセンス核酸 / ペプチド |
Research Abstract |
昨今、microRNAの発現異常が、重篤な疾患を引き起こす原因となることが明らかとなっている。microRNAは、RISC と呼ばれるリボヌクレオプロテインとなった後、mRNAのGキャップ構造を認識して結合し、遺伝子発現を制御する。本研究課題では、microRNA のGキャップ認識過程を狙い撃ち、その機能を特異的に制御する新規核酸素子の開発を目的とした。 今年度はRISCからmicroRNAを剥離する機能性核酸 Antago(piwi)-As の、オリゴRNAとペプチド間のリンカー構造の検討、ならびにペプチド配列の最適化を行った。これまでは、オリゴRNAとペプチド間をS-S結合により架橋していた(design I)が、S-S結合は細胞内のグルタチオンによって切断される可能性がある。このため、アンチセンス核酸とペプチド間の架橋構造を、アルキルリンカーによる架橋構造に変更し(design II)、リンカーの化学構造がRISC機能抑制効果に及ぼす影響について考察した。NH2基が修飾されたCPGを使用し、Fmoc固相合成法によりCPG上にアミノ酸配列を縮合した後に、microRNAと相補的な配列を有する2'-O-Methyl型RNAを固相ホスホロアミダイト法により伸長した。HeLa細胞中でRISC機能抑制効果を評価したところ、RISC 機能阻害効果を確認することが出来た。しかし、design Iと比較してその効果の向上は認められなかった。この原因として、design IIは、リンカー長はdesign I とほぼ同じであるが、リンカー部分にヒドロキシメチル基の分岐構造を有する。この高い構造が立体障害となり、アンチセンス核酸がRISC中のmicroRNAヘ結合するのを阻害している可能性が考えられる。よって今後は、分岐構造などを含まないリンカーの検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RISC の Gキャップ認識能を認識する分子モチーフを探索することを今年度の課題の1つとしていたが、RISC をターゲッティングする機能性核酸の分子デザインについて、ペプチドとオリゴRNAとの間を架橋する化学構造が、現行のS-S結合タイプではグルタチオンによる切断を免れないため限界があり、このリンカー構造の検討を今年度まず検討することとした。現在、最初のデザインよりもやや効果は劣るものの、ペプチドとオリゴRNAとの間をアルキルリンカーで架橋することで RISC 機能阻害効果を維持出来ていることを確認している。この機能性核酸を用いることで、細胞内でのRISC 機能阻害を行えるだけでなく、その後の作用機序解析まで達成出来るものと確信している。よって、当初の研究計画と多少異なるものの、本研究課題の最終的な目的を実行するために十分な研究成果と知見を得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) in vitro RNAi系あるいは培養細胞系を用いた Antago(piwi)-AS の機能評価 GFPあるいはルシフェラーゼ遺伝子等のレポーター遺伝子を標的としたmicroRNA を設計し、Antago(piwi)-AS の効果を迅速に評価出来るアッセイ系の確立を行う。RISC の中核を担う Argonaute タンパク質を過剰発現させた HEK293T 細胞溶解液と、microRNAとを混合し、RISCを形成させる。その後、系中に GFP またはルシフェラーゼ mRNA を添加する。RISCが形成されていれば、mRNA からの遺伝子発現が抑制されるため、GFPおよびルシフェラ ーゼタンパク質は産生されず、発光しない。ここへ、前年度に設計した種々のAntago(piwi)-AS を添加する。An tago(piwi)-AS がRISC機能を制御出来れば、レポータータンパク質の産生が再開され、発光が回復する。よって 、発光強度を測定することにより、Antago(piwi)-AS の microRNA 制御能を迅速に網羅的に評価出来る。結果を Antago(piwi)-AS のデザインに繰り返しフィードバックし、分子構造の最適化を行う。また、同様の操作を培養 細胞を用いて行い、平成25年度末には、培養細胞系で microRNA の機能を阻害することの出来るAntago(piwi)-A S の分子構造を決定する。 (2) Antago(piwi)-Asの作用機序の解析 上記項目で最適化された Antago(piwi)-As が、どの様な機構で RISC 機能を阻害しているのか解析を行う。Nat ive Gel を用いた Antago(piwi)-As の RISC との結合能評価、抗AGO抗体を用いた免疫沈降法を中心に展開する 。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は研究代表者の国外出張が長期に渡り、研究遂行は研究分担者によってほぼ成された。このため、予定していた実施内容のうち、生化学的手法を用いたアッセイが完全に遂行出来なかった。今年度予定していた残りのアッセイを次年度に行うべく、用いる試薬代金分を次年度に繰り越した。 次年度は、in vitro RNAi系において機能性核酸の RISC 機能阻害効果を評価する。このため、in vitro RNAi系に用いる生化学的試薬購入費に研究費を使用する。具体的には放射性物質(gamma-32P-ATP)、クレアチンリン酸、クレアチンリン酸キナーゼ、合成核酸などが該当する。
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