2012 Fiscal Year Research-status Report
自発的チオエステル形成ユニットを用いる蛋白質の選択的標識反応の開発
Project/Area Number |
24550187
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川上 徹 大阪大学, たんぱく質研究所, 准教授 (70273711)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生体分子 / ペプチド / タンパク質 / 受容体 |
Research Abstract |
これまでに,Cys-Proエステル(CPE)をカルボキシ末端に有するペプチドが,自発的にペプチドチオエステルへ活性化され,ペプチド縮合法に利用できることを見出している.本研究ではこの自発的活性化法を用いて,標識基を部位選択的に蛋白質に導入する方法の開発を目的とする.CPEペプチドはそれ自身ではアシル化の反応性を有さないが,系中で自発的にチオエステルへと変換されてアシル化の反応活性を獲得する.したがって,標的蛋白質へ結合するまでの非特異的な反応や分解を抑制できると考えられる. 平成24年度は,‘リガンド結合型自発的活性化ユニットの設計’とそれを用いた‘PTH(1-34) 誘導体を用いる細胞表面上PTH受容体の共有結合による蛍光標識’を計画した.CPE構造を介してリガンドと標識化部位を結合させると,活性化の際にリガンドと標識基が分離してしまう.そこで,リガンドが解離しないように自発的活性化ユニットを設計し,その検証を行った.その結果,リガンドが結合したままチオエステルに変換されることを確認し,さらに,それは元のCPEペプチドよりも速やかに活性化されることが判明した.この自発的活性化ユニットを用いて,副甲状腺ホルモン(PTH)受容体に対してPTH部分ペプチドをリガンドし,この受容体のリガンド結合部位の蛍光標識に着手した.PTH部分ペプチドに自発的活性化ユニットを介して蛍光団を導入して,細胞表面受容体へのアシル基転移による蛍光標識を試みた結果,蛍光顕微鏡観察によって細胞の受容体発現部位に蛍光が確認できた.しかし,現在のところ,確かに共有結合によって受容体が蛍光修飾できたかどうか確認できていない. また一方で,自発的活性化ユニットの重要性を示す目的で,メチル化修飾したヒストンH3(135残基)の化学全合成を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度の計画に対して,‘リガンド結合型自発的活性化ユニットの設計’では,目的のリガンド結合型自発的活性化ユニットを開発することができた.またそれは,元のCPEペプチドよりも速やかにチオエステルへと活性化し,本研究目的の蛋白質の修飾反応だけでなく,縮合反応にも有用であると考えられ,十二分に達成できた. 一方で,‘PTH(1-34) 誘導体を用いる細胞表面上PTH受容体の共有結合による蛍光標識’では,PTH部分ペプチドに自発的活性化ユニットを介して蛍光団を導入して,細胞表面受容体へのアシル基転移による蛍光標識を試みた.その結果,蛍光顕微鏡観察によって細胞の受容体発現部位にPTHリガンド由来の蛍光が確認できた.これは,このリガンド誘導体が受容体に選択的に結合し,蛍光標識できたことを示す.しかし,現在のところ,確かに共有結合によって受容体が蛍光修飾できたかどうか確認に至っていない.この早急な確認が必要であり,場合によっては対策を講じる必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は24年度の結果を受けて,まず,チオエステル自体およびCPE誘導体構造(チオエステル前駆体)を用いて確実に共有結合による蛋白質の修飾法をモデル蛋白質とモデルペプチドを用いて検討する. 1.チオエステルを用いる蛋白質のアシル化修飾の検討:チオエステルを用いて,共有結合によって確実に蛋白質を修飾できることを確認する.チオエステルを介して標識とリガンド結合部位を導入し,モデル蛋白質を用いて試験管内での蛋白質の標識を行う. 2.コイルドコイルペプチドを用いるアシル基転移反応の検討:ヘテロ2量体を形成することが知られているコイルドコイルペプチドを用いてCPE誘導体からのアシル基転移反応の条件を検討する.この系の利点はペプチドの長さを調整することで反応点間の距離や角度を調整できる点にある.ペプチドやCPE誘導体の鎖長を変化させて,反応条件をより詳細に検討し,蛋白質修飾反応の情報を得る. 3.PTH(1-34) 誘導体を用いる生細胞上PTH受容体の共有結合による蛍光標識の継続:24年度にはリガンドを含む蛍光化CPE誘導体による受容体の認識が確認できたが,共有結合によるアシル化修飾の確証を得ることができなかった.引き続きその確認を進めるとともに,上記1,2の結果を受けて,リガンドを含む蛍光化CPE誘導体の改良を検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度には,リガンドと受容体膜外部分の共結晶構造をもとにリガンドを含む蛍光化CPE誘導体をデザインした.このCPE誘導体による受容体の認識が確認できたが,共有結合によるアシル化修飾の確証を得ることができなかった.また,アシル基転位反応の詳細な条件を検討することができなかったために,CPE誘導体の詳細な設計を行えず,予算が残った.25年度はこの予算を用いて,CPE誘導体のデザインと合成に充てる.また,その合成の効率化を図るために,溶媒濃縮装置を拡充する.
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Research Products
(4 results)