2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24550190
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
蒲池 高志 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (40403951)
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Keywords | シトクロムP450 / 基質特異性 |
Research Abstract |
シトクロムP450BM3は長鎖脂肪酸のアルキル基末端を選択的に水酸化する。荘司らはP450BM3に基質である長鎖脂肪酸とよく似た構造を持つが酸化されないパーフルオロアルキルカルボン酸(PFs: デコイ分子)を取り込ませることで、酵素内部に非天然基質が結合できる空間を形成する戦略(基質誤認識システム)により、従来のアミノ酸置換法を用いずに本来水酸化することのできないプロパンやエタン等のガス状アルカンの水酸化反応に成功している。 さらに最近、ベンゼンを一段階でフェノールへと変換する高難度な水酸化反応に成功している。興味深いことに、キシレンの反応ではメタ体とパラ体の場合芳香環の水酸化が選択的に進行し、オルト体ではベンジル位の水酸化反応が優先的に進行した。このような選択性が生じる要因として、基質の反応性だけでなく酵素内部での基質の配向性が大きく関わっていると考えられる。H25年度に基質結合部位のアミノ酸残基のフレキシビリティを考慮したflexible dockingシミュレーションを実行し、この特異な位置選択性の起源を考察した.結晶構造の基質結合部位にキシレンを導入し、近傍のアミノ酸(残基番87,263-269,328,438)、およびPFC9の末端CF3CF2CF2部のフレキシビリティを考慮したflexible dockingシミュレーションをMacroModelプログラムにより実行した。ヘムの鉄原子とキシレンのベンジル位あるいは芳香環の水酸化される炭素原子の距離を5 Åに限定することで、ベンジル位あるいは芳香環の水酸化に有利な配座を、オルト体、メタ体、パラ体のそれぞれについて効率的に決定した。これらの計算の結果、ヘム近傍のPhe87とキシレン間のπ―π相互作用により、芳香環の水酸化の遷移状態が安定化されることが重要と判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、シトクロムP450の基質特異性に重要なアミノ酸残基の特定に成功しており、今後他の酵素の反応でも適応なこうな一般的なアプローチを確立した。これらの成果により、おおむね研究の目的を達成したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
最新の結晶構造では、フェニル基がヘムに対して垂直であるが、従来の長鎖脂肪酸結合型のP450BM3の結晶構造では平行である。flexible dockingシミュレーションの結果と考え合わせれば、PFC9がPhe87の配向に影響をあたえることで、位置選択性を制御している可能性が示唆される。今後、Phe87のミューテーションや、PFCのアルキル鎖長の変化による位置選択性への影響を評価し、この機構の妥当性を検証したい。
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