2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24550199
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
浦田 秀仁 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (80211085)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | Ag(I)-mediated base pair |
Research Abstract |
研究目的のうち、平成24年度の最重要課題はAg(I)イオン存在下でのプライマー伸長反応の検討であり、小野らによるシトシン-シトシン (C-C)ミスマッチ塩基対がAg(I)イオンにより安定化されるという報告に基づくものある。一本鎖領域にCを含む鋳型鎖を用いてAg(I)イオン存在下でのプライマー伸長反応を検討したところ、dCTPではなくdATPが取り込まれることが判明した。この反応はDNAポリメラーゼとしてKlenow fragment以外のTaq polymeraseやKOD dash polymeraseでも進行する一般性を持つ反応であることを見出した。このように、Ag(I)イオン存在下でのDNAポリメラーゼによる伸長反応では、熱力学的に安定とされるC-Ag(I)-C錯体型塩基対ではなく、C-Ag(I)-A錯体型塩基対が形成されることが明らかになった(Angew. Chem. Int. Ed., 2012, 51, 6464.) また、このAg(I)イオン存在下での反応の検討の際に鋳型鎖のCに対してdATPだけでなくdTTPも取り込まれるケースがあることが明らかになってきた。このdTTPの取り込みはdATPの取り込みほど普遍的に起こる反応ではなく、取り込み部位の数塩基上流の塩基配列に依存する反応であることから、3種類(C-Ag(I)-C, C-Ag(I)-A, C-Ag(I)-T)の銀錯体型塩基対の熱力学的安定性を評価した。これらの塩基対を含むDNAオリゴマーの二重鎖形成の自由エネルギー変化からこれらの安定性はC-Ag(I)-C > C-Ag(I)-A ≈ C-Ag(I)-Tであることが明らかになり、必ずしも金属錯体型塩基対の熱力学的安定性が、金属錯体型塩基対形成を介するプライマー伸長反応の基盤となっているのではないことを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNAポリメラーゼにより12通りのミスマッチ塩基対がAg(I)イオンを介して形成されるか網羅的に検討を行い、「研究実績の概要」で述べたように、基本的にはC-Ag(I)-A および C-Ag(I)-Tの2種の錯体型塩基対のみが形成されることを明らかにすることができ、平成24年度の最重要課題であったAg(I)イオン存在下でのプライマー伸長反応についてほぼ完了することができた。 プライマー伸長反応の速度論的解析については、現時点で報告可能な結果は得られていないが、速度論実験の最適実験条件の検討、および反応混合物の電気泳動での定量の高精度化を目的とし、高純度プライマーの入手法、鎖長が一塩基異なるバンドの完全分離を達成するための泳動条件の検討等について進めてきた。これまでの検討により以上の点についてほぼ問題点は解決できており、本実験に着手できる段階に入っている。今後、他の研究項目の進捗状況も睨みがらこの点についても進めていく予定である。 また、既知の水銀イオンや銀イオンにより安定化されるミスマッチ塩基対以外に、特定のミスマッチ塩基対を安定化することによってプライマー伸長反応を引き起こす金属イオンの探索の研究計画を前倒して平成24年度より開始している。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画で、平成25年度の研究実施計画としてC-Ag(I)-A塩基対のgeometryの決定を掲げた。その方法論としては、8位をブロム化した8-Br-dATPや8-Br-アデニンを含むオリゴヌクレオチドを用いたプライマー伸長反応や二重鎖DNAの熱安定性評価を考えていた。しかし、その予備的な検討結果から、8位のブロム化によるグリコシド結合のanti型からsyn型への配座変化以外にも、大きな原子半径を持つ臭素原子の立体的影響が金属イオンの核酸塩基への配位やDNAポリメラーゼの基質認識にも表れることが考えられた。そこで方法論を変更し、15Nおよび13C標識したデオキシアデノシンを含むオリゴヌクレオチド二重鎖を合成し、多核NMRによりAg(I)イオンの配位部位を直接観測することでC-Ag(I)-A塩基対のgeometryを明らかにしようというものである。 15N,13C標識したデオキシアデノシンを部位特異的に含むオリゴヌクレオチドの合成は15N,13C標識したdATPを用いて酵素的に合成する方法が考案されている。この方法は、15N,13C標識したデオキシアデノシンをアミダイトユニットに変換後、オリゴヌクレオチドを化学合成する方法よりも高価な15N,13C標識核酸の使用量を抑えることができるため、コスト的に比較的有利な方法である。 金属イオン存在下でのプライマー伸長反応の速度論的解析も引き続き検討を行っていくとともに、既知の水銀イオンや銀イオンにより安定化されるミスマッチ塩基対以外に、特定のミスマッチ塩基対の安定化によってプライマー伸長反応を引き起こす金属イオンの探索も引き続き行っていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|