2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24550199
|
Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
浦田 秀仁 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (80211085)
|
Keywords | metal-mediated base pair / DNA polymerase / Ag(I) ion / primer extension |
Research Abstract |
平成24年度の実績概要で述べたように、Ag(I)イオン存在下での各種ミスマッチ塩基対が形成されうるプライマー伸長反応の網羅的解析で、鋳型鎖のCに対してdATPだけでなくdTTPも取り込まれることを既に明らかにしている。この結果を踏まえ平成25年度は、DNAポリメラーゼとしてKlenow fragment exo-を高活性で作用させる反応を行い、3種(C-Ag(I)-C, C-Ag(I)-A, C-Ag(I)-T)の銀錯体型塩基対の形成されやすさを定性的に比較し、C-Ag(I)-A > C-Ag(I)-T >> C-Ag(I)-Cとなることを明らかにした。また、鋳型鎖シトシンにdTTPを取り込む反応 (C-Ag(I)-T形成反応) はAg(I)イオン特異的であり、鋳型鎖チミンにdTTPを取り込む反応 (T-Hg(II)-T形成反応) はHg(II)イオン特異的であることを利用し、同一配列内にシトシンとチミンを含む鋳型鎖を用いてプライマー伸長反応を行い、Ag(I)イオンとHg(II)イオンをそれぞれ位置特異的に二重鎖DNA中に取り込むことに初めて成功した (Angew. Chem. Int. Ed., in press)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNAポリメラーゼにより12通りのミスマッチ塩基対がAg(I)イオンを介して形成されるか網羅的に検討を行い、「研究実績の概要」で述べたように、基本的にはC-Ag(I)-A および C-Ag(I)-Tの2種の錯体型塩基対のみが形成されることを明らかにしているが、平成25年度は新たにC-Ag(I)-C錯体型塩基対も反応条件によっては生成することを明らかにするとともに、これらの相対的な生成しやすさがC-Ag(I)-A > C-Ag(I)-T >> C-Ag(I)-Cとなることを明らかにした。 DNAポリメラーゼによる金属錯体型塩基対形成の速度論的解析については、上述のように定性的な各金属錯体型塩基対の形成傾向の評価が可能であったため平成25年度は優先事項とはしなかったため、有意な進展はない。今後、他の研究項目の進捗状況も睨みがらこの点についても進めていく予定である。 また、水銀イオンや銀イオンにより形成が促進される既知のミスマッチ塩基対以外に、特定のミスマッチ塩基対の安定化によりプライマー伸長反応を引き起こす金属イオンの探索を平成24年度より実施してきたが、水銀イオンや銀イオン以上にミスマッチ塩基対の形成を明確に促進する金属イオンは認められなかった。これは、スクリーニング条件が銀イオン存在下でのプライマー伸長反応を基礎にしており、ミスマッチ形成反応を促進している可能性のある金属イオンについては個々に反応条件の最適化を行って評価する必要があると思われる。 C-Ag(I)-A塩基対のgeometryの決定については、15Nおよび13C標識したオリゴヌクレオチド二重鎖を合成し、多核NMRによる解析で明らかにする戦略を取ることとし、検討を行っているが、15N,13C-標識ATPの取り込みの選択性が低く現在のところ大きな進展には至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初計画では予定していなかったが、DNAポリメラーゼによる金属錯体型塩基対の連続形成についての検討を行っていく予定である。これは有害な水銀イオンや銀イオンをトラップする方法論としても、導電性などユニークな物性を持つナノマテリアルとしてのDNA分子を創製する方法論としても重要な課題と考えている。 こうした金属錯体型塩基対の連続形成が可能ならば、その速度論的解析も重要と考えられることから、金属イオン存在下でのプライマー伸長反応の速度論的解析を引き続き検討する予定ではあるが、金属錯体型塩基対の熱力学的安定性が、必ずしも金属錯体型塩基対形成を介するプライマー伸長反応の基盤となっているのではないことから、酵素的に金属錯体型塩基対形成反応が進行する要因についても検討項目としたい。 C-Ag(I)-A塩基対のgeometryの決定を達成するために、NMR解析用の15N,13C標識した二重鎖オリゴヌクレオチドの合成を15N,13C標識したdATPを用いて酵素的に行う方法による検討を引き続き行っていくが困難も予想されることから、X線結晶解析による方法も検討し、C-Ag(I)-A塩基対を含む二重鎖オリゴヌクレオチドの結晶化が可能であれば進めていきたい。
|
Research Products
(5 results)