2012 Fiscal Year Research-status Report
ヘム生合成経路におけるテトラピロールの構築および環状化のメカニズム
Project/Area Number |
24550201
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
佐藤 秀明 久留米大学, 医学部, 准教授 (60271996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 正人 久留米大学, 医学部, 教授 (10124611)
東元 祐一郎 久留米大学, 医学部, 准教授 (40352124)
原田 二朗 久留米大学, 医学部, 講師 (10373094)
塚口 舞(古澤舞) 久留米大学, 医学部, 助教 (40624094)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ヘム生合成 / ポルフィリン / 結晶構造解析 / 酵素反応 / 生化学 |
Research Abstract |
ヘム生合成に関わるヒドロキシメチルビラン合成酵素(HMBS)は,基質ポルホビリノーゲン(PBG)を4分子連結して鎖状のテトラピロールであるヒドロキシメチルビラン(HMB)を合成する。今年度は,HMBSによるPBG4分子からHMB1分子への縮合過程について,構造生物学的な手法による解明を目指した。 ヒトHMBSを大腸菌で大量に発現させ,多段階のカラムクロマトグラフィーにより精製し,さらに陰イオン交換カラム(mono Q)で分離して複数のピークとして分取した。それぞれの画分について質量分析を行なったところ,各ピークはホロ型および基質が1~3個結合したES1~ES3型に対応しており,mono QカラムによってHMBSをPBGの結合数に応じて分取できることが確認できた。さらに,ホロ型HMBSの画分については,そのまま,または基質類似体と反応させてから結晶化して,大型放射光施設SPring-8のビームラインBL44XU等を用いて構造解析を行なった。ホロ型HMBSでは,既知の立体構造でディスオーダーしていた一部の主鎖について構造を決定できた。また,ホロ型HMBSに基質類似体を反応させたものの構造解析では,補因子周辺に新たな電子密度を認めた。 今後,ES1型に対応するこの基質類似体結合型HMBSの立体構造を確定させるとともに,PBGが複数個結合したES2~ES4型に対応するHMBSの立体構造も明らかにして,HMBSに対するPBGの結合機構について詳細を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
HMBSの酵素-基質複合体の結晶構造解析を進めるにあたり,必要となるPBG類似体の入手に予想以上の時間を要したこと,またHMBSの結晶化がなかなかうまくいかなかったこと,さらに分担者の一人が産前産後の休暇ならびに育児休業を取得したこと等が重なったために,研究の進行に若干の遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
HMBSの酵素-基質複合体の結晶構造解析については,ES1型に対応するPBG類似体結合型だけでなく,ピロールが複数個連結したES2~ES4型に対応する複合体の立体構造についてもそれぞれ解析する。そして,HMBSの基質結合部位の構造を明らかにし,4分子のPBGがどのように活性部位に結合していくのかを詳しく検討する。 一方,ヘム生合成経路においてHMBSの次に作用するウロポルフィリノーゲンIII合成酵素(UROS)については,基質であるヒドロキシメチルビラン(HMB)の類似体を調製し,HMB類似体結合型UROSの結晶化および構造解析を進める。得られる立体構造から基質結合に関わるアミノ酸残基を同定し,またHMBの環状化反応に必要なプロトン供与体となりうる残基を予測して,UROSがD環ピロールの反転したウロポルフィリノーゲン(Uro'gen) IIIを合成する過程について詳細に検討する。また,基質との相互作用が想定される残基に関する変異体を構築し,反応速度論解析によりこれらの残基が基質結合や触媒活性に果たす役割を調べる。 さらに,HMBSとUROSが複合体を形成することでUro'gen IIIの合成を促進している可能性を検証するために,表面プラズモン共鳴(SPR)法を用いた測定で両酵素間の相互作用について検討する。 これらの実験の結果から,ヘム生合成経路のHMBSとUROSによって,4分子のPBGからHMBを経て1分子のUro'gen IIIが合成される過程の反応メカニズムを詳しく考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初HMBSの結晶化がなかなかうまくいかなかったこと,また分担者の一人が産前産後の休暇ならびに育児休業を取得したこと等が重なって,実験の進行に若干の遅れが生じたため,その分だけ今年度の助成金に残金が発生した。 しかし,最近では結晶構造解析に適当なHMBSの単結晶を安定的に調製することが可能になっており,また次年度後半には当該分担者が育児休業から復帰する予定である。このようなことから,次年度はHMBSの酵素-基質複合体の結晶構造解析を継続して行なうとともに,HMBSの変異体解析,UROSの酵素-基質類似体複合体の結晶構造解析や反応速度論解析など,当初の計画に沿った研究の実施が見込まれる。これらの研究を遂行するために,今年度の助成金の残金と次年度分として請求した助成金とを合わせて使用する予定である。
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Research Products
(53 results)