2012 Fiscal Year Research-status Report
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24550202
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Research Institution | The Noguchi Institute |
Principal Investigator |
藤田 雅也 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (20321672)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 浩太朗 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (30321673)
水野 真盛 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (40271506)
土田 明子 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (70378024)
森 昌子 公益財団法人野口研究所, 研究部, 研究員 (90524637)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 酵素化学 / 酵素工学 / 糖鎖工学 / ケミカルバイオロジー |
Research Abstract |
当研究の目的は、腸内細菌由来のCBMにより、抗ピロリ菌作用のあるαGlcNAc含有ムチンの分離および調製が可能か否かを明らかにすることである。また、CBMの工業利用性のポテンシャルを高めるべく、大量調製が可能かどうか、も併せて検討する。 当年度においては、1、タンデム型CBM領域の中からαGlcNAc含有ムチンへの結合に有用な領域を特定する、2、市販ムチンからの抽出分離の試み、3、CBMの糖鎖への結合特性、4、ピロリ菌への評価、を実施する予定であった。 この中で、1においては今までの報告例(Fujita et al.(2011))に加えて、新たに糖鎖への結合特異性を調査すべく、新たな領域の組み合わせのCBM調製を行い、大腸菌にて取得した。これらの各種糖タンパク質への特異性調査の結果(ドットブロット)、C. perfringens由来のCBM4-6もしくはCBM4-5がαGlcNAc含有ムチンへの特異的結合に有効であることが示唆された。また、ビフィズス菌(B. bifidum)のCBMホモログについても検討し、同様にCBM4に対応する部分を含むタンデム型CBMを調製した。2に関して、GST融合型CBM2-6およびCBM4-6が胃ムチン混合物中のαGlcNAc含有ムチンに対して強く結合することが示唆された。3に関しては、各種CBMがどのような糖鎖へ結合するのかを調査する方法の目途(ムチンへの結合後のO-glycanについての解析)はついた。4については、ピロリ菌へのin vitroアッセイがすぐに行える状況を構築した。 なお、1について、当初次年度に行うCBMの大量調製を目的とし、CBM4-6およびCBM2-6についてのブレビバシラス菌(B. chosinensis)での菌体外発現の検討を行い、両者がグラム/L スケールで調製できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、工業生産性を意識したαGlcNAc含有ムチンの調製方法を確立することにある。以下、研究計画で掲げた具体的達成度(4項目)について記載する。1、アミノ酸配列比較などから、ウェルシェ菌以外に、ビフィズス菌およびEubacterium属細菌にαGlcNAc結合性タンデム型CBMがあることが推定できたので、まずビフィズス菌のCBMについての調製を行った。その結果、各種CBMをGST融合型として調製することができた。そこで両菌体(ウェルシェ菌とビフィズス菌)由来の各GST融合型CBMの各種ムチンへの結合を調査し、各種CBMの役割を推定することはできた。2、GST融合型CBMを固定化したビーズを用いて、ムチン粗抽出物からのαGlcNAc含有ムチンの調製を行ったところ、αGlcNAcを含有したムチンに強く結合し、結果として分離・調製できる可能性が示唆された。しかし、一旦結合したビーズからは、1.0M程度までのGlcNAcおよびGalでは、αGlcNAc含有ムチンを溶出できないことがわかった。このため溶出条件をさらに検討する必要性が生じている。3、については、申請当初に蛍光化した糖鎖を調製した上で、それとCBMとの結合定数を測定する計画であった。しかし、研究を遂行する過程で、単なるオリゴ糖とCBMの結合力を評価する意義は乏しく、かつ調査に時間を有する問題が生じている。そこで、当初の予定を変更し、密集した糖鎖とタンデム型CBMとの結合特異性を明確にすることを優先することにした。4、については、まだαGlcNAcを含有したムチンを取得できていないためアッセイ結果は得られていない。 以上により、やや研究達成度が遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、抗ピロリ菌効果を調査するために必要なαGlcNAc含有ムチンを確保するため、1)、引き続き固定化CBMによる分離手法の検討を行う。対策としては、CBMを共有結合にてビーズ担体に固定化すべく、共有結合用タグとの融合型のCBM調製を行う。2)、αGlcNAc含有ムチンの有利な供給源として、海洋植物(すでにHIK1083陽性物質を有することが示唆されている)をターゲットとする検討を行う。すなわち、当該海洋植物が有する糖タンパク質からのαGlcNAc含有ムチンの分離が可能かどうかを検討する。3)、CBMの糖タンパク質(ムチン)に対する結合特異性を、グライカンアレイによって検討する。 4)、抗ピロリ菌効果の評価として、当初2年目から動物評価(in vivo)を検討する計画であったが、この度これを変更し、2年目はまずin vitroアッセイでの結果を得ることを具体的目標として設定する。 5)、また、申請当初の25年度計画として提案していたCBM融合型酵素によるαGlcNAc含有ムチンの調製法については、すでにその調製が可能であることを示唆するデータを得ている。そこで、本年度では、当該方法によって得られたαGlcNAc含有ムチンの構造を調査し、さらにin vitroでの抗ピロリ菌効果を比較検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度には1、O-glycan解析に関する費用(60万円);分離したムチンの構造解析のための費用、2、海洋植物からのαGlcNAc含有ムチン取得に関する費用(70万円);海洋生物の取得のための費用、存在の確認、分離のための費用、3、結合特異性の調査に関する費用(40万円)、4、抗ピロリ菌アッセイに要する費用(20万円)、5、αGlcNAc含有ムチンの酵素的調製に関する費用(50万円)、を予定している。1、でGST融合型での分離が困難な場合には、共有結合型で固定化可能なタグへの変更を予定している。
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Research Products
(1 results)