2013 Fiscal Year Research-status Report
有機ナノ単結晶の形成制御による機能発現とデバイス化
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24550204
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長谷川 裕之 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (10399537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 真生 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (80376649)
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Keywords | ナノ単結晶 / ナノ電解法 / ナノワイヤ / 有機導電体 / 電解結晶成長 |
Research Abstract |
本年度は,昨年度に引き続き①材料設計・合成,②ナノ単結晶形成条件の検討,③電子・磁気・光機能評価の3項目について実験を行った。 ①材料設計・合成:本年度は前年度で得られた手掛かりを基に、新たな有機金属錯体として中心金属に局在スピンを持つ鉄(III)フタロシアニンを用いた。電子機能,光機能については昨年度まで利用した材料を引き続き用いた。 ②ナノ単結晶形成条件の検討:電子デバイス,磁気デバイスの特性評価については,昨年度に引き続き電界効果トランジスタ構造を作製し,評価を行った。シリコン基板上にギャップ幅5ミクロンの電極を作製した。光機能デバイスについては,新たな現象が確認されたため,結晶作製用のセルを新たに考案し用いた。電界効果トランジスタ構造には昨年度のリチウムおよびナトリウムフタロシアニンに加え,ジシアノコバルト(III)フタロシアニンを用い,ナノ電解セルを用い交流による電解を試みた。また,磁気デバイスの作製においては,ジシアノ鉄(III)フタロシアニンを用いた。いずれにおいても上記基板上の2つの電極の間にナノ単結晶を橋渡し形成させることに成功した。得られたナノ単結晶は走査型電子顕微鏡(SEM)によって成長様式を確認し,透過型電子顕微鏡(TEM)によって構造を確認した。一方,光機能デバイスにおいては,光照射による結晶成長の可能性を探索した。材料や照射時間の最適化により,最終的にマイクロスケールの単結晶を作製することに成功した。 ③電子・磁気・光機能評価:リチウム,およびナトリウムフタロシアニン,ジシアノコバルト(III)フタロシアニンナノ単結晶について,電界効果特性を測定したところ,電場依存性が確認された。また,ジシアノ鉄(III)フタロシアニンナノ単結晶については,磁場中での電流‐電圧特性を調べたところ,低温で負の磁気抵抗効果が見られた。一方,光照射の結晶成長においては,X線結晶構造解析とともに,電子特性測定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子機能デバイス,光機能デバイスともに引き続き作製条件の最適化により,デバイス構造を作製することができた。電子機能デバイスでは,リチウムフタロシアニン,ナトリウムフタロシアニンと2種の材料系で確認された電場による応答について精査を行い,論文発表を行った。加えて,コバルトフタロシアニンのナノ単結晶について,制限視野電子線回折実験で得られた回折像を基に構造解析したところ,3次元的なπーπネットワークを持つ中性ラジカル結晶であることが分かった。このナノ単結晶の電場効果を測定したところ,室温ではp型の特性が得られた。これらの結果について論文報告した。また,磁気機能デバイスについては,低温で磁場の印加によって負の磁気抵抗効果を確認した。この結晶についても制限視野電子線回折を基に構造解析したところ,ソース,ドレイン方向にπスタックが形成されていることが分かった。これらの結果は論文発表した。一方,光機能デバイスにおいては光励起と電荷移動によって結晶が成長するという新たな現象が確認され,こちらでも今後につながる成果を得ることが出来た。以上から,研究は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
①材料設計・合成 引き続き得られた手掛かりを基に,新たな有機金属錯体の設計を試みる。基本的には広がったπ電子系配位子を持つもので、磁気デバイスには中心金属にスピンを持つ金属元素を用いる。 ②デバイス作製に適したナノ単結晶形成条件の検討 ナノ単結晶の配向・配列の最適化を目指す。ナノ単結晶の集合状態での機能発現を目指し、周期的・規則的に配置、配向させるための電解条件、電極構造を検討する。また,印刷法による電極作製なども導入し,大気中での作製プロセスとして応用面でも検討を行う。 ③デバイスの電子・磁気・光特性評価 電子・磁気機能デバイスにおいては、配置・配向や大きさと物性との相関を検討し、微小化由来の効果などを検討する。電子デバイスでは電界効果測定を行う。磁気デバイスでは強磁場中での物性評価も行い、局在スピンがデバイスに与える効果を検討する。光機能については、光吸収による結晶成長という興味深い現象が見いだされたため,引き続きこの現象について精査する。なお,これらのデバイス評価には、可能な限りプローブ顕微鏡 (SPM)による物性評価なども採り入れ、多方面から物性を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費を効率的に使用し残額が発生したため。また,今後研究の進展とともに経費が計画より増加すると見込まれるため。 今後増加が予想される消耗品費に加え,成果発表のための論文投稿費,旅費として用いる予定である。
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Research Products
(9 results)