2013 Fiscal Year Research-status Report
全固体薄膜リチウム電池技術を応用したイオン・電子伝導分離に関する基礎研究
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24550206
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
桑田 直明 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (00396459)
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Keywords | 混合伝導体 / ノンストイキオメトリ / インピーダンススペクトル / 電子ブロッキング電極 / イオン伝導度 / 固体イオニクス / パルスレーザー堆積法 / 全固体リチウム電池 |
Research Abstract |
本研究は、混合伝導体である正極材料LiCoO2薄膜のイオン伝導度・電子伝導度を分離して計測する新しい手法を開発することを目的としている。昨年度の研究で、アモルファスLi3PO4電解質薄膜を電子ブロッキング電極として、LiCoO2薄膜のイオン伝導度を測定することに成功した。しかし定比組成のLiCoO2はLiサイトがすべて占有されている状態であり、Liイオン伝導性は低いと予想される。実際のリチウム電池では、Liを脱離した非化学量論組成(ノンストイキオメトリ)のLi1-xCoO2として充放電が行われており、そのイオン伝導性を調べることが重要である。そのため今年度の目標は、(3)正極薄膜からのLi脱離手法の確立、および、Li脱離Li1-xCoO2薄膜のイオン伝導と電子伝導度の評価とした。 ・不純物を含まない定比組成のLiCoO2薄膜を作製して電子伝導性を調べたところ、1.1×10-2 Scm-1であった。NO2BF4を用いた化学的Li脱離法によりLiを脱離して、Li1-xCoO2(x=0~0.3)を得た。Li量は濃度、時間のどちらでも制御可能であった。構造変化はXRDとRaman分光法により検出した。 ・イオン伝導度はLi0.9CoO2で1.2 ×10-4 Scm-1であり、定比組成と比べて約4倍増加した。Liサイトに空サイトが増えたためにイオン伝導度が上昇したと考えられる。一方、電子伝導度はLi0.9CoO2で1.3 Scm-1であった。定比組成よりも2桁上昇した。これはCoのd軌道が形成する価電子帯にホールが導入されてキャリア数が増加したためと考えられる。以上の成果はLIBD2013- Lithium Battery Discussions、日本物理学会において発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の計画通りに進展している。化学的手法によるLi脱離は順調に進展した。化学的Li脱離に伴う、LiCoO2の体積変化や溶出の問題が懸念されたが、溶液の濃度・脱離時間や膜厚を制御することで解決可能であった。電子伝導性の測定についても順調に行う事が出来た。一方、固体電解質を用いた電子ブロッキングセルはLi脱離の手順が増えたことにより、やや難易度が上がったが、固体電解質薄膜の厚さを十分に確保することで短絡の問題を克服することが出来た。また、電子伝導性が上昇したことにより、低周波(10-4 Hz)での測定が必要となったため、長期安定性の高いセルを作製する必要があった。 以上の検討の結果、Li量をLi1-xCoO2 (x = 0, 0.9, 0.8)と変化させて電子伝導性・イオン伝導性の評価を行うことが出来た。構造と組成の評価も同時に行うことが出来た。Li脱離に伴いLiサイトに空サイトが増え、イオン伝導性が上昇する事が確かめられた。電子伝導についても価電子帯にホールが生成されて伝導度が大幅に上昇することが確認された。 計画では電気化学的Li脱離によってもイオン伝導度を調べる予定であったが、現状では全固体薄膜電池の電気化学的評価により化学拡散係数を調べるに留まっており、イオン伝導性の直接測定が課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、(1)化学的にLi量を制御して、Li1-xCoO2の組成依存性を明らかにする。昨年度までに開発した手法でLi量を変化させた上で、インピーダンスと温度依存性の測定を行うことで、電子・イオン伝導度の組成依存性を明らかにする。(2)これまでに開発した手法をLiCoO2の他の混合伝導体(正極材料)に適用する。特にスピネル系の正極材料が電子伝導性とイオン伝導性の両方に優れているため、研究対象とする予定である。また、(3)化学拡散係数との比較検討を行い、全固体薄膜電池中での正極材料の出力を制限している要素を明らかにする。その他の拡散係数測定との比較検討を行い、本手法の妥当性を評価する。これらの成果をまとめて論文として発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。 消耗品費として使用する他、論文投稿料、謝金として利用する予定である。
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Research Products
(12 results)