2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24550207
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小野田 雅重 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30177282)
|
Keywords | 電池 / 新型高容量二次電池正極材料 |
Research Abstract |
(1)LixV3P8O29系,(2)単斜晶LixV2P3O12系(0≦x≦3),(3)タボライト型LixVFPO4系(0≦x≦2)および三斜晶LixVPO5系(0.9≦x≦1)などの精密結晶構造,電子状態ならびに充放電性能を総括し,次世代二次電池正極活物質の電子状態に共通な因子があるかどうかを検討しました. Li9V3P8O29の初期充電特性は2電子反応を示すことを再確認し,また初期放電過程は平坦電位1.6 Vを持ち,電気化学的にLi12V3P8O29の組成程度までLiを挿入できることがわかりました.すなわち,LixV3P8O29系はx=12(V2+)⇔x=9(V3+)⇔x=6(V4+)⇔x=3(V5+)間の3電子反応に近い電気化学反応を示すことを明らかにしました.ここでLi10V3P8O29組成に近いV3+の結晶場は中間的であり,V原子のイオン性が高いことがわかりました.またLi9V3P8O29単結晶および多結晶の電気伝導測定からも,それを確認しました. LiVFPO4の精密構造解析を行い,またV3+の結晶場が中間的であることを定量的に示しました. 以上の結果と前年度の成果から,V3+を含むバナジウムポリアニオン系の一般的な特徴として,PO4四面体の強い共有結合性によりVイオンの結晶場効果が弱められ,磁気モーメントが減少し充放電電位が高くなることを示すことができました.さらにV-O-P-O-V,V-O(F)-V経路の超交換相互作用が有効な物質は,カゴメ格子,1次元格子などで表されることから,低次元量子スピン系の新しい題材となることを明らかにしました. この他,Li9-zAgzV3P8O29(0<z≦1),AgxVP2O7(0.7≦x≦1),NASICON型Na3V2P3O12などに関して,結晶構造,磁性,電気伝導性,電気化学特性の相関関係を詳細に検討しました.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究実施計画は,日頃の弛まぬ努力により,研究実績の概要に記載の通り達成することができました.また昨年度に引き続き,出前講義と研究室体験授業などを通じて,若い世代に研究成果を積極的に発信するように努めました.
|
Strategy for Future Research Activity |
LixV3P8O29系,単斜晶LixV2P3O12系(0≦x≦3),タボライト型LixVFPO4(0≦x≦2)・LixVPO5系(0.9≦x≦1),AgxVP2O7系(0.7≦x≦1),NASICON型Na3V2P3O12・Ag3V2P3O12・Li2NaV2P3O12などの結晶構造,電子状態ならびに充放電性能をまとめます.それと並行して,種々の元素置換系の研究を開始します. 1) 多結晶および単結晶試料の合成:元素置換として,P-Si,S置換系および酸素欠損系の合成を試みます.また良質の単結晶試料合成が可能かどうかを見極めます.それらと並行して,固相反応法,ソフト化学法あるいは電気化学法を用いて,種々の化学組成を持つ試料合成も行います. 2) 結晶構造の精密解析:種々の組成における結晶構造を詳細に検討するために,単結晶試料を用いた構造解析を行います. 3) a. 電気伝導性:元素置換系の電気伝導性を直接測定し,充放電性能との相関を追究します.b. 磁気的性質:帯磁率の測定を通して,Vイオンの結晶場およびV-O電子混成を評価し,充放電特性との相関解明を追究します.c. 電気化学測定:試料の電気化学特性データを蓄積します. 4) 上記1)~3)の結果に基づき,NMRおよびESRを手法として,微視的見地から電子状態およびダイナミクスを考察します.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
NMR測定の効率化を進めるために,本学研究基盤総合センター工作部門の協力の下,新しいNMRプローブを製作しました.その完成が平成26年はじめになったため,支払いは平成26年度に行うことになりました.本年度に生じた残金はそれに充てます. 平成26年度の研究費は,当初の計画通り,次の消耗品および旅費に充てます. 1) 液体ヘリウム,液体窒素:NMRと帯磁率測定で使用する超伝導磁石の稼動,ESR,各種電気・熱物性の温度変化に使用します.2) 試薬および各種ガス:試料合成用として,Li2CO3,LiF,MgCO3,NH4H2PO4,V2O5,V,TiO2,NOBF4,Br2,アセトニトリル,水素,窒素,酸素ならびにアルゴンガスなど,また電気化学測定用として,アセチレンブラック,電解液,リチウム金属ホイルなどを購入します.3) 透明石英管およびガラス器具:真空封入の条件あるいはソフト化学法で試料を合成する際に用います(適宜,ガラス工作室の支援を受けます).4) 論文掲載および別刷費.
|
Research Products
(21 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] 物性実験研究と物質科学2013
Author(s)
小野田雅重
Organizer
物理チャレンジ2013フィジックス・ライブ
Place of Presentation
筑波大学(茨城県つくば市天王台1-1-1)
Year and Date
20130806-20130806
-
-
-
-
-
-
-