2013 Fiscal Year Research-status Report
次世代有機EL素子への応用を指向した熱活性化遅延蛍光の解明と新規分子骨格の設計
Project/Area Number |
24550210
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 徹 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70303865)
|
Keywords | フラーレン / 有機EL / 熱活性型遅延蛍光 / スピン-軌道相互作用 / 電気双極子遷移 / 無輻射遷移 / 振電相互作用 / 点群 |
Research Abstract |
次世代有機EL素子の発光原理である熱活性型遅延蛍光 (TADF) を発現する分子の設計は、一重項最低励起状態S_1と三重項最低励起状態T_1のエネルギー差ΔE_STを小さくするためにドナー性分子とアクセプター性分子を連結させるという指針の下で行われている。一方、この指針から外れているものの、TADFが実験的に観測されている系が存在する。そうした系の一つにフラーレンC_60がある。本研究の目的はC_60のTADFの発現機構の解明及びこれを基にした新規なTADF分子設計指針の確立である。この目的のため、本年度はC_60の励起状態間の相互作用を調べた。 C_60に対し時間依存密度汎関数計算を行った。S_1とT_1のエネルギー差ΔE_STは比較的大きい一方で、S_1と三重項励起状態T_m (m=2,3,4)がエネルギー的に接近していることが明らかとなった。さらに、群論を用いた考察から、対称性の高い構造を有するC_60においてはT_mからT_1への電気双極子遷移は禁制となり、T_mからS_1へのスピン-軌道相互作用遷移には許容なものが存在することが示された。加えて一重項状態と三重項状態との間のスピン-軌道相互作用定数の計算から、この系についてはTADFの発現がT_1を経由せず、エネルギー的にS_1により近い状態であるT_mを経由してしている可能性があることが示唆された。このようなTADFの発現機構はT_1 を経由する従来のドナー・アクセプター連結系におけるTADFの機構とは異なっており、TADF材料の新たな設計指針を与えるものである。本年度はフラーレンの励起状態についての計算から、こうした新規のTADF機構に対して系の構造が有する高い対称性が果たす役割を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フラーレンにおけるTADFの発現機構は、詳細な点をのぞき明らかになりつつあり、新規分子設計指針がすでに得られたことから、おおむね順調に進展していると言える。これらの成果は、現在論文投稿中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、C60におけるTADF発現機構の詳細を明らかにするとともに、既に得られた分子設計指針に基づき、新規TADF分子の理論設計に取り組む予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外研究協力者であるChibotaru教授が来日する計画であったが、都合により果たせなかったため。 海外および国内での学会発表のための旅費として使用する計画である。
|
Research Products
(1 results)