2013 Fiscal Year Research-status Report
高速動作有機CMOS回路の実現に向けた有機トランジスタの基盤技術開発
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24550211
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
北村 雅季 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10345142)
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Keywords | 有機トランジスタ / 有機半導体 / 単分子膜 / 電極表面修飾 / 界面制御 |
Research Abstract |
平成25年度は,高移動度材料として知られるアルキル鎖を側鎖にもつジナフトチエノチオフェン(Cn-DNTT)を中心に有機PMOSについて,短チャネル高移動度化と閾値電圧制御に取り組んだ.トランジスタ構造は短チャネル化が容易なボトムコンタクト構造とした.電極材料としては,これまで我々が開発してきた表面処理電極を採用した.表面修飾には,ベンゼンチオール誘導体を用いるが,表面処理された電極について特性評価も行った. ボトムコンタクト構造の有機PMOSの高移動度化については,蒸着条件と作製後アニールの最適化により高移動度化に成功した.特に80℃程度の温度での長時間アニールが移動度の向上に有効であることを示した.結果として,10ミクロンのチャネル長の素子で,移動度3.2 cm2/Vsを達成した. 閾値電圧制御については,ゲート絶縁膜への酸素プラズマにより,精密に閾値電圧を制御することに成功した.特に,論理回路の動作に適した数V程度の範囲での閾値電圧の制御が可能であることを示した. 有機層へのキャリア注入の改善に必要となる,電極の表面修飾技術について,種々のベンゼンチオール誘導体を用い,4.3-5.5程度の範囲で実効的な電極の仕事関数を制御できることを示した.また,反応性および熱安定性について詳細にしらべ,トランジスタへ応用する際の重要な知見を得た.特に,100℃以上の温度では,ベンゼンチオール誘導体が脱離することを見出した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の開始当時,平成25年度の研究実施計画として,「Cn-DNTTを中心に有機PMOSの移動度向上と閾値制御を目指し,絶縁膜上の自己組織化単分子(SAM)膜の作製技術を確立する.具体的には,①電極表面処理に影響を及ぼさない絶縁膜表面処理法を開発しその有効性を示す.②SAM膜形成の際の溶媒依存性を調べ,平坦かつ緻密な膜が得られる条件を見出す.③分極をもつ分子をSAM膜に用い,各分子に対する閾値電圧変化を明らかにする.」とした.当初,閾値電圧制御の方法として,SAMを利用する予定であったが,絶縁膜への酸素プラズマ処理による閾値電圧の制御方法を見出し,それにより,結果として閾値電圧制御に成功した.閾値電圧制御は回路の高速化にも重要であり,閾値電圧制御の方法を確立したことにより,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,それぞれのプロセス技術を統合し,短チャネル・高移動度の有機NMOSと有機PMOSとを集積化しCMOS回路の高速動作に取り組む.有機PMOSにはCn-DNTT,有機NMOSにはC60を主に用いる.有機NMOSとPMOSを同一基板上に作製する場合,電極および絶縁膜に 対する表面処理に用いる分子が異なるので,各領域で異なる表面処理を適応するプロセスが必要となる.一つの方法としてインクジェット装置を用い,パターニングされた表面処理を実現する.他の方法として,メタルマスクを使用した,UV/ozone処理による分子膜の パターニングも検討する.CMOS回路の動特性には,移動度だけでなく,閾値電圧にも大きく依存する.閾値電圧制御には,平成25年度の成果である,酸素プラズマによる方法を応用する.また,簡単なシミュレーションを行い,シミュレーション結果と実験結果との相違について評価する.さらにシミュレーション結果と実験結果との相違を考慮し,シミュレーションにより高速化のための閾値電圧の最適化を行う.さらに,ゲート絶縁膜に高誘電率材料を用いCMOS回路の低電圧動作もこころみる.
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Research Products
(15 results)