2013 Fiscal Year Research-status Report
フッ素系電子受容体の合成とそれを用いた二次電池正極材の開発
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24550213
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
松原 浩 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20239073)
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Keywords | 二次電池 / 正極活物質 / フッ素系化合物 |
Research Abstract |
本研究では、ペルフルオロアルキル基の強力な電子求引性を活用した高性能の酸化剤を合成し、さらに、この特長を活かした機能性電子材料、すなわちフッ素系二次電池正極材料を開発を目指している。平成25年度は(1)フルオロベンゾキノン類を用いた二次電池材料、および(2)その類縁体を用いた二次電池材料の開発を行った。以下に概要を述べる。 (1)前年度の研究によりペルフルオロアルキル基を導入したベンゾキノン類は強力な酸化剤として有用であることが明らかとなった。また、それらを正極活物質として用いた二次電池の作製にも成功した。しかしながら、作製した二次電池はペルフルオロアルキル基が大きな分子量を有していることから容量密度が小さくなってしまうことが分かった。そこで、当初予定していたトリフルオロメチル基に代えてフッ素を複数直接ベンゾキノン骨格に導入したフルオロベンゾキノン類の開発を行うことにした。具体的には、フルオロアルキルベンゾキノンとして、2,5-ジフルオロベンゾキノン、2,3,5,6-テトラフルオロベンゾキノンを合成し、それらを用いて二次電池を作製した。作製した二次電池の容量密度やエネルギー密度、充放電特性、サイクル特性などを評価した。その結果、容量密度は大きくまた出力電圧も高かったがサイクル特性が悪くなった。 (2)フルオロベンゾキノンの類縁体として、クロロベンゾキノン、ブロモベンゾキノンを正極活物質として用いた二次電池を作製しその性能を評価した。具体的には、2,5-ジクロロベンゾキノン、2,3,5,6-テトラクロロベンゾキノン、2,5-ジブロモベンゾキノン、2,3,5,6-テトラブロモベンゾキノンの4種類である。その結果、臭素を導入したベンゾキノン類のサイクル特性が最も良いことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ペルフルオロアルキル基の強力な電子求引性を活用した高性能の酸化剤を合成し、さらに、この特長を活かした機能性電子材料、すなわちフッ素系二次電池正極材料を開発することを目的としている。今年度は、以下3つの成果を挙げることができた。 (1)フルオロベンゾキノン系正極活物質の合成に成功した。 (2)得られた材料を正極活物質として用いる二次電池を作製し、評価した。 (3)クロロベンゾキノン、ブロモベンゾキノンを正極活物質とする二次電池を作製し、その性能を評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに高性能な正極活物質を開発する目的で、新たな骨格を持つフッ素系(広義にはハロゲン系)正極活物質の合成を行う。 正極活物質として以下の条件を満たす化合物が必要である。①可逆な多電子レドックス反応を起こす有機物であること、②大きな容量密度を得るためにはできるだけ分子量が小さいこと、③合成や精製が簡単で電気的に安定であること、④電極から正極活物質のリー チングをさけるため有機溶媒への溶解度が小さいこと。とりわけサイクル特性を向上させるためには、溶解度の低い材料を開発する必要がある。 平成26年度はベンゾキノンの多量体の合成と正極活物質としての評価を行う。ベンゾキノンを直結した二量体やメチレン鎖やエチレン、アセチレンで架橋した二量体を合成し、得られた化合物を用いて二次電池を作製し、その性能を評価する。更に性能の向上を目指して三量体以上のオリゴマー合成へと研究を展開する
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬やガラス器具などは研究室保有の物品を最大限活用することができたため、材料費を節約することになり、結果的に約60万円の未使用研究費が発生した。 次年度は新たな骨格の正極活物質を合成し、合成した正極活物質を用いて二次電池を試作後、その評価を行うことを予定している。そのため、薬品代を中心に以下の内容で研究費を使用する計画である。(1)ベンゾキノン多量体の合成(薬品:60万円、合成実験用器具:20万円)(2)ベンゾキノン多量体の評価(二次電池材料:15万円、測定セル:5万円)(3)旅費(学会発表:電池討論会、日本化学会):20万円、合計120万円。
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