2013 Fiscal Year Research-status Report
レーザー分光測定を用いた有機分子のIn-situ結晶崩壊・成長モニタの研究開発
Project/Area Number |
24550214
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
佐々木 哲朗 静岡大学, 電子工学研究所, 特任教授 (20321630)
|
Keywords | テラヘルツ / 結晶 / 有機分子 / 半導体 |
Research Abstract |
本研究の目的は、高精度テラヘルツ分光スペクトル測定手法を有機分子結晶の結晶性定量評価に適用することであり、実用的には結晶成長・崩壊過程におけるIn-situモニタに適用できることを示すことである。本研究遂行に必要な単色光テラヘルツ波の周波数精度・強度・操作性など分光測定システムとしての性能向上が達成されたので、本年度論文発表した。 有機半導体として一般的に用いられるルブレン、ペンタセン、アントラセンについて、ポリ結晶のテラヘルツ分光スペクトルを得るとともに、昨年度導入した真空チェンバを用いて気相成長を実現した。測定に適当な成長膜厚を得るために厚膜成長を継続している。この時用いた真空チェンバの真空ポンプについて当初他装置と共用していたが、稼働時間が足りなくなったために新たにターボ分子ポンプを導入し、現在は支障なく利用できるようになった。 昨年度新規開発したテラヘルツ分光スペクトル測定試料専用単結晶成長装置について、制御を安定化させて結晶品質の向上を図るとともに、操作性を上げつつシステム簡便化・低コスト化を達成した。 本研究がターゲットとする有機結晶の結晶性評価については、特に医薬品製造分野でニーズがあるものの、テラヘルツ分光測定を利用する一般的な利用手法が提示されておらず、業界内で模索されている段階である。医薬品単結晶を作成してテラヘルツ分光測定で評価することによって、それぞれの吸収スペクトルの帰属を解明できれば、利用方法の道筋を示すことができる。そこで本年度は、喘息の処方薬として用いられているテオフィリンを例にとり、上記開発装置でその単結晶成長を実施して測定試料を作成して偏光分光測定を得、X線回折測定と量子化学計算結果との比較からテラヘルツ吸収を分子振動に対応させることに成功した。現在この結果の産業界への適用を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気相崩壊モニタリングでは、より適当な真空チェンバを試作し、その測定に取り掛かっているが、未だ明瞭な変化を捉えられていない。また、気相成長モニタリングについては、装置の準備段階で若干の遅れが生じている。 逆に液相成長では、成長装置・評価から産業応用まで含めて予想以上の進捗・成果であると考えられるので、その中間の自己評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画では気相成長を主と考えて実際に気相崩壊モニタをスタートさせていたが、液相成長で良好な結果と見通しを得ているために、液相成長も有力と考えるべきであると考えている。水溶液であるので吸収の大きい水の影響が問題であったが、試料結晶部分では透過するので大きな問題ではない。特に本年度液相成長の対象としたテオフィリンは70℃付近で水和物結晶と無水物結晶の疑似結晶多形が形成される分岐点となるので、このモニタリングは実用的にも意義深いと考えられる。このことによる経費使用用途の変更は特に無い。 液体ヘリウムの供給難が大きな問題となっている状況は改善しないが、冷媒フリーの検出器(別プロジェクト導入)の利用や、テラヘルツ波の高強度化による室温検出器の利用のように、最大限冷媒を用いない方法を画策する。 本年度は、結晶成長試料のための材料費と結晶成長装置の改良のための光学部品、電気・電子部品を消耗品として導入する。また、論文投稿・学会発表を行って成果の発表を進める。
|
Research Products
(9 results)