2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24550222
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
務台 俊樹 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (80313112)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 蛍光 / 有機結晶 / ESIPT発光 / 相転移 / 固体発光材料 / 分子内水素結合 / イミダゾピリジン / ベンズイミダゾール |
Research Abstract |
本研究は、2'-ヒドロキシイミダゾ[1,2-a]ピリジン(HPIP)の固体ESIPT発光に着目し、化学修飾による直接的かつ大きな電子状態制御(粗調整機構)と、分子集積構造変化による微小の発光特性制御(微調整機構)を二元制御機構ととらえ、固相発光の波長範囲を広くかつ段階的に制御可能にする新しい方法論を確立し、新しい有機固体発光材料の創成を目的とする。 本年度は第一に粗調整機構について集中的に検討し次の成果を得た。 化合物HPIPのフェニル環とイミダゾピリジン(IP)環がドナー・アクセプターの関係にあることから、電子供与/吸引性の異なる置換基(メトキシ、メチル、ハロゲン、シアノ基など)を種々の位置に導入し一連の誘導体を合成した。単分子状態での固体吸収/発光特性評価より、IP環を置換することで発光準位が、フェニル環を置換することで基底準位がそれぞれ選択的に制御できることを見出し、その機構を計算化学により合理的に説明した。合成化学による粗調整機構の有用性と適用範囲を明らかにした。 続いて、分子集積構造に基づく微調整機構について有用性を示す次の知見を得た。 HPIP類似体に体積の異なる置換基を種々導入したところ、立体障害を適切に制御することで複数のねじれコンホメーションを取り、これをもとに異なる分子集積構造を形成することを見出した。これらは発光量子収率が大きく(100倍以上)異なった。分子集積構造を変えることで、化学構造が同一の分子が大きく異なる固体発光特性を示すという事実は微調整機構の有用性を示すものである。また、HPIP類似体を用いたことで当初の研究計画を超えた非常に興味深い結果が得られ、HPIP誘導体と合わせて次年度以降に集中的に検討をおこなう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は助成事業の初年度にあたり、1.ESIPT 発光物質の化学構造と固体発光特性との関連性の検討を集中的におこない設計指針の確立を目指すこと、および2.分子集積構造に基づく発光特性制御という方法論の有効性実証と分子設計指針確立に向けた検討に着手することの二点が当初計画であった。 1.についてはほぼ当初計画通り進行し、結果報告をおこなった。 2.については、当初計画の予想を超える有用な結果が得られ、これらの検討に一定の時間が必要であった。よって「分子集積構造に基づく発光特性制御という方法論の有効性」は示すことができたと考えるが、「分子設計指針確立に向けた検討」については次年度に持ち越すこととした。 以上より、自己評価として(2)おおむね順調に進展している。 を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の検討では、電子供与/吸引性に着目して設計した新規な固相発光物質群が得られたことから、二年目となる本年度は分子集積構造の積極的な制御を目指した分子設計と誘導体合成をおこない、分子集積体と発光特性との関連性を詳細に検討する。 具体的には、分子の電子状態に与える影響を最小限とするアルキル基を、鎖長や分岐様式を種々変えて形状や占有体積の異なる基をさまざまに導入する。一方、電子供与/吸引性の異なる置換基を有するHPIP誘導体についても分子集積体について基本的な発光特性を調べる。これらの類似点と相違点について、結晶中の分子のコンホメーションやパッキングなどのデータも参考にしながら整理して理解し、分子集積構造を固体発光特性の微調整機構として利用する方法論を確立するための、足がかりとする。 さらに、単分子および集積状態での発光寿命などダイナミクスに関するデータを詳細に解析し、集積構造の解析で得られた結果と比較検討することで、固相発光の発現機構を解析する。計算化学的手法での励起状態シミュレーションもおこない、測定結果との対比から、励起状態ダイナミクスの詳細を明らかにする。 最終年度は、昨年度および本年度で得る知見をあわせ、提案している二元制御機構、すなわち(1)合成化学的手法による直接的な電子状態制御という従来法を固体発光特性の粗調整機構、(2)固相中での集積構造に基づく発光特性制御という新しい手法を微調整機構としての利用することの妥当性を明らかにし、その有用性と適用可能範囲を示す。これを基「3.発光特性を多様かつ容易に制御可能な新しい固体発光材料の創成」に向けた材料設計とその実現可能性を明らかにし、本研究の課題を達成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
目的化合物の合成と固体発光特性の評価は概ね計画通りに進行した。 一方、HPIP類似体で見出された、発光量子収率が大きく(100倍以上)異なる分子集積構造は当初の研究計画を超えた非常に興味深い結果であり、新しい発光材料の可能性を示すものと考えて優先的に検討することとした。この現象を定量的に解析する手法の検討と評価に3ヶ月程度の時間が必要であったことから、当初計画を一部変更し、研究費の一部を次年度へ持ち越した。
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Research Products
(12 results)