2013 Fiscal Year Research-status Report
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24550222
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
務台 俊樹 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (80313112)
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Keywords | 蛍光 / 結晶多形 / ESIPT発光 / 相転移 / 固体発光材料 / 分子内水素結合 / イミダゾピリジン / 分子軌道計算 |
Research Abstract |
本研究は、2'-ヒドロキシイミダゾ[1,2-a]ピリジン(HPIP)の固体ESIPT発光に着目し、化学修飾による直接的かつ大きな電子状態制御(粗調整機構)と、分子集積構造変化による微小の発光特性制御(微調整機構)を二元制御機構ととらえ、固相発光の波長範囲を広くかつ段階的に制御可能にする新しい方法論を確立し、新しい有機固体発光材料の創成を目的とする。二年目にあたる本年度は、「微調整機構」の有用性の確立を目指し、分子集積体の作成とその発光特性との関連性について以下の成果を得た。 前年度までに合成した十数種類のHPIP誘導体(J. Org. Chem. 2013, 78, 2482.)について、結晶作成を種々の条件下でおこない、多くの誘導体で二種類以上の結晶を得ることに成功した。発光スペクトルの結晶多形依存性は、化学修飾による発光変化と比較して一般に小さかったが明確であり、微調整機構という方法論の有用性評価に向けた重要な基礎データが得られた。 なかでも6-シアノHPIPは結晶構造に依存する三色の発光を示したことから、結晶多形と発光特性との関連性を検討する適切な系と考え、分子軌道計算TD-DFT法を用いて分子パッキングが発光エネルギーに与える影響を検討した(CrystEngComm, 2014, 16, 3890.)。単一分子、二分子、ONIOM法など種々のジオメトリを比較した結果、π-スタックした二分子で実測値を定性的に再現し、最近接分子との相互作用が発光特性変化に重要であることが示唆された。さらに、多分子系の計算に有効とされるFragment Molecular Orbital (FMO) 法を用いて、3~17分子からなるクラスターについても計算した(Phys. Chem. Chem. Phys. 2014, DOI:10.1039/c3cp55461a)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の当初計画は、1.ESIPT 発光物質の化学構造と固体発光特性との関連性の検討を集中的におこない設計指針の確立を目指すこと、および2.分子集積構造に基づく発光特性制御という方法論の有効性実証と分子設計指針確立に向けた検討に着手することの二点であった。 1.については初年度にほぼ当初計画通り進行し結果報告をおこなっている。 本年度は2.について集中的に検討をおこなった結果、「分子集積構造に基づく発光特性制御という方法論の有効性」について一定の進捗が見られ、最終年度に向けた有用な成果を得た。 以上より、自己評価として【(2)おおむね順調に進展している。】を選択した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度に当たることから、まず分子集積構造(結晶構造)を利用する発光特性制御(微調整機構)に集中し、より積極的な集積構造制御や計算化学を駆使した分子パッキング様式と発光特性とのより詳細な関連性の解明などをおこなう。 さらにこれまで得られた成果をもとに、当初計画である「合成化学と分子間相互作用の二元制御機構に基づく、固相発光の波長範囲を広くかつ段階的に制御可能にする新しい方法論の確立」について、研究の取りまとめ作業をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度内に分子軌道計算アプリケーションを導入予定であったが、当初計画よりもより有用性の高いバーションに変更することとなり、その契約作業が平成25年度内に完了しなかったことを理由に次年度使用額が生じた。 なお、当該アプリケーションは平成26年度5月中に納入予定である。 当該アプリケーションの契約作業は滞りなく進行していることを確認しており、平成26年度5月中に納入予定である。
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