2012 Fiscal Year Research-status Report
局所空間の選択的分解反応による中空多孔性構造体の創製とミクロ反応容器としての利用
Project/Area Number |
24550231
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡本 昌樹 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (10262263)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 中空多孔体 / コア-シェル構造体 / 塩基処理 / 界面活性剤 |
Research Abstract |
規則性多孔体は,形の整った細孔が存在し高表面積を有することから,触媒や吸着剤などに利用されている.細孔構造や細孔径の制御という点から多くの研究がなされているが,粒子の形状を制御するという点からは微粒子化や薄膜化などの一部に限られている.そこで形状制御の一つである中空構造に着目し,これまでに規則性メソ多孔体およびゼオライトの中空化に成功した.本研究では,規則性メソ多孔体およびゼオライトの中空化の簡便で大量合成に適した方法を開発すること,および中空多孔体のミクロ反応容器としての利用を検討することを目的とする. 中空多孔体の利用を考慮すると中空多孔体の簡便かつ大量に合成する方法の開発が必須である.初年度の平成24年度では,簡便かつ大量合成に適した方法の開発を行った.これまでの研究では,中空部の形成に炭酸ジメチルを用いるシリカ分解反応を用い,選択的に内部のみを分解した.親水性のコアに疎水性のシェルを成長させた多孔体に,親水部のみにシリカ分解触媒を選択的に担持することでコアのみを分解した.しかし,この方法では高温で炭酸ジメチルによる処理を行うため,大量に合成することができない.そこで,シリカ分解法として塩基性水溶液による処理を中空構造の形成に用いた.親水性コアと疎水性シェルのコア-シェル構造体のメソ多孔体を塩基で処理すると中空部は形成したが,シェルの細孔構造の一部が崩壊し,元の規則的な細孔をもった中空多孔体にならなかった.塩基性水溶液に界面活性剤を添加することによって,細孔構造の崩壊を防ぐことができることを見出した.この方法は,塩基であるアンモニア水中で攪拌するという簡便な方法で,大量合成にも適している.界面活性剤は疎水性シェルの細孔壁を覆うことにより,塩基による溶解を防ぐことがわかった.しかし,この方法は中空ゼオライトの形成には適応できなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度では中空多孔体の簡便かつ大量に合成できる方法の開発を行うことを目的とした.既に中空メソ多孔体の合成において,中空部の形成に炭酸ジメチル処理を用いることにより,中空ゼオライトおよび中空メソ多孔体が得られることを報告した.しかし,この方法では,中空部の形成において350℃以上という高温で炭酸ジメチル蒸気により処理を行う必要があるため,大量合成に適していなかった.そこで,大量合成に適した,塩基性水溶液による処理により中空部を形成する方法の開発を行った. 中空メソ多孔体の合成においては,コアに通常のメソポーラスシリカ,シェルにプロピル基で修飾したメソポーラスシリカを調製し,その後にアンモニア水によって選択的にコアのみを取り除けることが事前の実験によりわかっていた.しかし,シェルもアンモニア水によって侵され,細孔構造が一部崩壊した.プロピル基による細孔壁の保護をより強固なものにするため,カチオン性界面活性剤の存在下で塩基処理を行うことにより,シェルの細孔構造をほとんど破壊せずに中空部を形成できることを見出した.この方法は,界面活性剤を加えたアンモニア水中で,コア-シェル粒子を攪拌することにより中空粒子を得ることができるため,勘弁で大量合成に適した調製法である. 一方,中空ゼオライトにおいては,コアに欠陥のあるゼオライト,シェルに欠陥のないゼオライトを調製し,塩基処理をしても中空部を形成することができなかった.コアとシェルの性質が異なる様々なゼオライトを調製したが,中空ゼオライトを形成するに至らなかった. 以上のことから,中空メソ多孔体の調製については目的を達成できたが,中空ゼオライトについては達成できなかった.また,次年度の予定である中空多孔体をミクロ反応容器として利用するための予備実験についても行った.
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Strategy for Future Research Activity |
中空メソ多孔体については,塩基性水溶液による処理という,ミクロ反応容器として使用するために必要な量を調製できる簡便な方法を開発した.しかし,中空ゼオライトにおいては,塩基性水溶液による処理などのグラムオーダーで調製できる簡便な方法を見出すことができなかった.中空ゼオライトについては,一回で調製できる量が少ないが,これまで通り炭酸ジメチル処理を用いて合成することとした.平成25年度からは,まず大量の合成できるようになった中空メソ多孔体を用いて,予定通り,ミクロ反応容器への利用を行う.二つの観点からミクロ反応容器としての利用法を検討する. 一つ目として,二相系反応における相間移動を行うミクロ反応容器としての利用を行う.二相系反応では,二相の界面で反応が進行するため,攪拌によりエマルションを形成させる.または,アンモニウムイオンやクラウンエーテルなどの相間移動触媒を用いる場合が多い.相間移動触媒は反応系内で溶解しているため,再利用には適していない.エマルションの液滴より小さく,分離も容易な中空粒子(直径約1μm)を用いることにより,中空メソ多孔体は相間を移動する反応容器として期待できる. 二つ目として,反応容器の細孔内に刺激に応答をするゲートの修飾を行う.反応容器として用いる場合,ある条件で反応容器内への出入りが可能になる特徴を持たせることにより,多段階ステップの反応をワンポットで反応が行えるようになると期待できる.平成25年では,pHの変化に伴うゲートの開閉が行える反応容器の開発を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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