2013 Fiscal Year Research-status Report
局所空間の選択的分解反応による中空多孔性構造体の創製とミクロ反応容器としての利用
Project/Area Number |
24550231
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡本 昌樹 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (10262263)
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Keywords | 中空多孔体 / コアーシェル構造体 / ミクロ反応容器 / 二相系反応 |
Research Abstract |
規則性多孔体は,規則的な細孔と高表面積という特徴から,触媒や吸着剤などに広く利用されている.規則性多孔体の形状制御を行い,これまでに規則性メソ多孔体およびゼオライトの中空化に成功した.本研究では,中空多孔体の利用法の一つとして,ミクロ反応容器としての利用を検討することを目的とする.平成24年度で中空多孔体を簡便かつ大量の合成できる方法を開発した.平成25年度では,この方法で合成した中空メソ多孔体をミクロ反応容器として利用することを検討した. 二相系反応における相間移動を行うミクロ反応容器としての利用を行った.二相系反応では,二相の界面で反応が進行するため,攪拌によりエマルションを形成させて反応を進行させる.エマルションの液滴より小さく,分離も容易な中空粒子(直径約1μm)を用いることにより,中空メソ多孔体は相間を移動する反応容器として期待できる.そこで水相に溶解した臭化ナトリウムと油相に溶解した塩化ベンジルとのハロゲン交換反応に中空メソ多孔性シリカを加えて反応を行った.その結果,無添加時に比べて反応速度が1.9倍に増加した.中実のメソ多孔性シリカを添加しても反応速度は増加するが,中空多孔体ほど増加しなかった.このことは,反応速度の増加には中空であることが重要であることがわかった.中空シリカの細孔壁を有機鎖で修飾するとさらに速度は向上し,フェニル基で修飾したシリカを用いると,無添加時の3.8倍まで向上した.中空多孔体は二相系反応間を移動するミクロ反応容器として有効であることを見出した.二相系反応ではアンモニウムイオンやクラウンエーテルなどの相間移動触媒を用いる場合が多いが、相間移動触媒は反応系内で溶解しているため,再利用には適していない.中空多孔体は濾過により容易に分離でき,再利用も可能であることも明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度では,中空多孔体の利用法を検討することが予定であった.目的としては,二相系反応における相間移動を行うミクロ反応容器としての利用の検討と,反応容器の細孔内に刺激に応答をするゲートを修飾修飾した刺激応答性容器の合成であった. 一つ目の二相系反応におけるミクロ反応容器としての利用では,中空メソ多孔性シリカの添加により反応速度を向上させることができることを明らかにした.また,細孔壁を有機鎖で修飾するとさらに向上することを見いだした.したがって,予定通り進展している. 一方,刺激応答性容器の合成については,アミン系の有機差を細孔壁に固定化することによって,pHの変化に伴うゲート機能が発現することまでしか示せなかった.再現性を含めて完全なpH応答性を示せなかった点は若干遅れているが,ほぼ当初の予定通り進行している. 以上のことから,全体を通しておおむね順調に進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年では,本研究で開発した中空多孔体の利用法の検討について,引き続き行う. 二相系反応における相間移動を行うミクロ反応容器としての利用の検討においては,平成25年度に中空メソ多孔性シリカの添加により反応速度を向上させることができることを明らかにした.しかし,反応速度が向上した理由については,中空シリカが二相間を移動したためであることが推測できるが,直接的に証明した実験結果はない.そこで,反応速度的解析を行い,中空シリカの役割を明らかにする. また,刺激応答性容器の合成については,平成25年度でpHの変化によって開閉するゲートの固定化方法を検討した.しかし,得られたpH応答性ミクロ容器の特性についてはまだ明らかになっていない.そこで,開閉について詳細に調べ,完全なオンオフの実現と,ゲートの開閉の機構を明らかにする.
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