2013 Fiscal Year Research-status Report
高圧反応による共有結合性金属化合物群の創製と新規超伝導体の探索
Project/Area Number |
24550233
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
福岡 宏 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00284175)
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Keywords | 高圧 / 超伝導 / 金属間化合物 / Zintl相 / 高圧合成 / 強相関系 |
Research Abstract |
1. Ce(Sn,Ge)3固溶系 の高圧合成とCeの価数揺動状態の解析 以前我々が高圧合成によって得たCeGe3というセリウムの二元系ジャーマナイドについて、詳細な構造解析を行ったところ、この化合物がCu3Au型構造を基本とする超構造を持ち、6個のGe原子からなる正八面体型Zintlアニオンを含んだ構造を有することが明らかになった。これはCu3Au型関連構造をとる一連のセリウム化合物において、最もセリウムイオン間距離の小さい物質である。ところで、Cu3Au型構造をもつ化合物には、重い電子系として有名なCeSn3がある。そこで我々はこのCeSn3にGeを固溶させることで、セリウムイオン間の相互作用を変化させ、CeSn3の物性がどのように変化するか研究を行った。その結果、この系が全率固溶体を形成することを見出し、ICFモデルを適用することでCeイオンの価数がGeの置換量とともに3.4価から4価に変化していくことを見出した。 2. シェブレル相の初めての多形であるMo3S4の高圧合成と結晶構造、電子構造の解明 高圧条件下での反応により、シェブレル相Mo6S8の初めての多形となるMo3S4の合成に成功し、単結晶構造解析によりその結晶構造を解析した。その結果、Mo3S4はシェブレル相とは異なり、MoS6八面体が稜と面を共有して連結した構造をもつことが明らかになった。また、電子軌道計算により、そのバンド構造の解析を行った。 3. 構造未知のLuジャーマナイド超伝導体の結晶構造解析 我々のグループで以前高圧反応により合成したLuジャーマナイドについて、その結晶構造の精密化に成功した。本化合物は一重と二重のGe正方格子層を含む興味深い層状構造をもち、その組成はLu2Ge5であることが明らかになった。またこのLu2Ge5が確かに超伝導臨界温度(Tc) 3.6 Kをもつ超伝導体であることの確認を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では共有結合性金属化合物の電子状態の解明を大きな目標の一つとしているが、研究実績の概要にも記載の通り、本年度はモリブデン系、セリウム系における新化合物の発見と結晶構造の詳細な検討、それらの化合物の電子状態のバンド計算による解析に成功し、多くの進展を見ることができた。とくにセリウム系化合物の研究では、CeSn3-CeGe3固溶体の高圧合成に成功し、結晶構造解析、比熱・電気伝導度測定、磁化率測定等より、セリウムイオン間距離と価数揺動の性質についての関連性を深く探索することができ、前年度の実施状況報告書で今後の推進方策にあげた目標を達成することができた。また、新構造をもつ超伝導体の探索、という目標に関しても、Luジャーマナイドの系で構造が確定していなかったTc=3.6 Kの超伝導相について、その組成と結晶構造を決定することに成功した。以上のことから、現在までのところ、目標達成に向けて研究がおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度となる26年度は、共有結合性金属化合物の電子状態の解明について、より広範な希土類、アルカリ土類ジャーマナイド、シリサイドを対象に、ホスト-ゲスト間での電子のやり取りや、伝導バンド・フェルミ面の構造を詳細に検討・研究する予定である。特に、X線吸収分光分析における吸収端近傍構造(XANES)から、ホスト、ゲストの価数を詳細に見積もり、金属化したZintl相である共有結合性金属化合物において、構成元素間での電子の分配様式がどのような規則にもとづいているか、詳細に研究する計画である。また、新規超伝導体の探索も引き続き行う。特に、これまでは二元系化合物を中心に超伝導体の探索を行ってきたが、次年度は三元型にも探索の手を広げ、新しい超伝導体の発見を目指した高圧合成を進める予定である。更に、簡易高圧合成装置の開発も引き続き行い、研究計画書に提示した5万気圧程度の圧力での合成実験が手軽にできる装置の開発を行いたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度高圧合成に使用した消耗品について、計画段階よりも耐久性の高い素材が開発され、それを使用したため、繰り返し使用できる平均回数が多くなり、その結果当初予定していた消耗品費よりも、使用金額が少額で済んだため。 上の理由に記したとおり、高圧合成に使用する消耗品の耐久性が増したことで、購入費が少額になっているが、その分、次年度には必ず更新しなくてはならないので、今年度使用しなかった分は、次年度の消耗品費にそのまま移行して使用する予定である。
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