2012 Fiscal Year Research-status Report
金属酸化物表面修飾による酸化チタンバンドエネルギー微調節および強吸着サイトの創出
Project/Area Number |
24550239
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
多田 弘明 近畿大学, 理工学部, 教授 (60298990)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光触媒 |
Research Abstract |
化学吸着-熱処理サイクル(CCC)法を用いて、酸化ニッケルクラスターおよび酸化スズクラスター表面修飾酸化チタンを合成し、キャラクタリゼーションおよび光触媒活性評価を行った。これらの表面修飾効果を、すでに研究済みの酸化鉄クラスター表面修飾酸化チタン系と比較検討した。 1.酸化ニッケルクラスター表面修飾系(NiO/TiO2):①Ni(acac)2(H2O)2を原料としたCCC法を用いて、Ni担持量の異なるNiO/TiO2を調製した。②各種分光法を用いて、NiO/TiO2のキャラクタリゼーションを実施した。③NiO/TiO2が、TiO2のUV光活性を維持しながら、酸化鉄表面修飾TiO2系(FeOx/TiO2)を超える高い可視光活性を発現することを見出した。③各種分光法および密度汎関数理論(DFT)計算により、可視光活性の発現が、NiOクラスター表面修飾に伴うTiO2価電子帯上端の上昇に起因することを明らかにした。④これらの研究成果を学術雑誌に公表した。 2.酸化スズクラスター表面修飾系(SnO2/TiO2):①[Sn(acac)2]Cl2を原料とするCCC法を用いて、Sn担持量の異なるSnO2/TiO2を調製した。②NiO/TiO2系とは異なり、僅かに可視光吸収が現れるのみであることが判明した。③フォトルミネッセンス測定およびDFT計算によって、NiO/TiO2系とは違い、SnO2表面修飾に伴って、価電子帯上端は殆ど変化しないが、伝導帯下端付近にSnO2に由来する空レベルが形成されることが明らかになった。④SnO2/TiO2系のUV光活性は、TiO2の結晶形に強く依存し、アナタースに対しては効果がないのに対して、ルチルでは活性が向上することを見出した。⑤これらの研究成果を2つの学術雑誌に公表した。 3.酸化マンガンおよび酸化コバルトクラスター表面修飾系の研究を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究目的は”実験的および理論的手法を駆使して、CCC法を用いた3d金属酸化物クラスター表面修飾TiO2のバンドエネルギーを決定し、そのファインチューニングが可能であることを実証すること”である。 1.NiO/TiO2系が、TiO2UV光活性を維持しながら、同時にFeOx/TiO2系を超える高い可視光活性を示すことを見出した。 2.協力研究者との密な連携によって、可視光活性の発現メカニズムを電子レベルで明らかにすることができたことから、今後のTiO2光触媒の可視光活性化のための新しい設計指針が得られた。 3.吸着実験を行う中で、酸化マンガンクラスターおよび酸化コバルトクラスター表面修飾TiO2が、光触媒活性に加えて、高い熱触媒活性を有することを見出した。 これらの結果は、これらが光に無関係に常時働く”環境触媒”になる可能性を示唆しており、当初の期待以上の成果であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の当初の方針は、”CCC法を用いて各種遷移金属クラスター表面修飾TiO2(MOs/TiO2)を調製し、光触媒活性を評価するために、環境浄化の点から実用上意味のあるアセトアルデヒド(代表的VOC)気相分解および2-ナフトール(アゾ色素の原料)液相分解を行い、合わせて触媒の寿命評価を実施する。さらに光触媒表面への基質の吸着等温線を測定する。”ことであり、基本的には実施内容の変更はない。しかし、酸化マンガンおよび酸化コバルトクラスター表面修飾TiO2系は、高い熱触媒活性を示すことが明らかになったことから、上記の実施事項に加えて、新たに熱触媒活性の評価を実施したい。 以下に詳細な実施事項をまとめる。 ① 可視域に吸収を持たず、かつ環境浄化の点から実用的意味のあるアセトアルデヒド分解および2-ナフトール分解に対するMOx/TiO2の光触媒活性および寿命を評価する。②MOx/TiO2表面への基質吸着特性を評価する。③光触媒の活性支配因子を明らかにする上で、その光触媒反応の基本的なメカニズムを明らかにする必要がある。光触媒反応における活性酸素種を特定するために、活性に対するOHラジカルおよび正孔捕捉剤添加効果について検討する。④MOs/TiO2の熱触媒活性の評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通り、主に薬品・材料、消耗品の購入に充てたい。 また、現在、国際学会における招待講演の依頼を受けており、そのための出張旅費に使用したい。
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