2012 Fiscal Year Research-status Report
陶磁器表面に形成する金属光沢模様における酸化鉄関連化合物の生成と色調の関連
Project/Area Number |
24550240
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kurashiki University of Science and the Arts |
Principal Investigator |
草野 圭弘 倉敷芸術科学大学, 芸術学部, 教授 (40279039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 実 岡山理科大学, 工学部, 教授 (20150815)
高田 潤 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (60093259)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | セラミックス / 陶磁器 / 備前焼 / スピネル / 微構造 / 色調 |
Research Abstract |
連携研究者(備前焼作家)から提供された「金彩」および「銀彩」備前焼について、模様構成相と組成を電子顕微鏡により検討した。他の研究組織は、「金・銀彩」模様は炭素膜に起因し、その膜厚により銀色から黒色に変化すると報告している。本研究にて詳細な電子顕微鏡観察を行った結果、100-500nm径のヘマタイト(アルファ型酸化鉄)粒子が主に観察され、炭素や他の結晶相は観察されなかった。電子線回折の結果、ヘマタイト粒子は配向性が非常に高いことが明らかとなった。ヘマタイトは、ベンガラとして知られ赤色であるが、薄膜や微粒子の場合は赤黄色を示すことが知られている。「金彩」模様は、ヘマタイト膜の赤黄色に表面に生成したガラスによる散乱光が加えられた色であることが考えられ、今後詳細に検討する。 一方、「銀彩」備前焼について電子顕微鏡観察を行った結果、炭素の存在は確認できず、~300nm径の酸化鉄が生成していた。しかし、「金彩」模様中に生成するヘマタイトではなく、酸化鉄の多形であるイプシロン型酸化鉄が生成していることが明らかとなった。更に、「銀彩」模様中にはイプシロン型酸化鉄以外にMg-Al-Fe-O系化合物も生成していることが明らかとなった。この化合物とイプシロン型酸化鉄が共存した粒子像を得ており、両相に結晶学的な関係が存在する可能性がある。電子線回折および粉末X線回折によるMg-Al-Fe-O系化合物の結晶構造、イプシロン型酸化鉄および色調との関連について詳細に検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画通り、連携研究者(備前焼作家)から提供された「金・銀彩」備前焼模様中の生成相を同定し、その粒子形態を明らかにした。これらの模様は、登り窯内である条件下で加熱および冷却すると現れると考えられているが、その焼成条件については全く分かっていない。連携研究者(備前焼作家)に聞き取り調査を行ったが、詳細を解明するには至らなかった。 以上のことから、今年度は概ね達成できたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
備前焼作家と連携し、「金・銀彩」模様が現れやすいと考えられている焼成条件、登り窯内の位置、雰囲気について詳細に調査する。また、作家の登り窯での焼成の際、窯内に試料片を入れて模様の作製を試みるとともに、備前焼作家の窯焚きに立ち会い、焼成条件のデータを収集する。得られた調査結果を踏まえ、酸素分圧の制御が可能な電気炉にて、備前焼作家により使用されている備前焼粘土などの材料を用い、種々の酸素分圧下で熱処理して模様の再現を試み、模様の形成条件を確立する。 上記で得られた試料について、粉末X線回折による生成相の同定および相変化を明らかにし、模様の組成分析をエネルギー分散型X線分光にて明らかにする。さらに、透過型電子顕微鏡観察により詳細な微構造および結晶の方位関係を解明する。また、分光測色計により色調をデジタル化し、色調と微構造の関係を明らかにする。これらの結果と、連携研究者から提供された試料の結果を比較し、相違点を明確にして模様の再現実験にフィードバックする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試料作製に必要な備前焼粘土および試薬などの消耗品費、得られた試料の微構造観察を行うための電子顕微鏡などの施設使用料を計上する。また、得られた結果を公表するため、論文作成に掛る校閲・印刷費、学会参加費および旅費を計上する。
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Research Products
(3 results)