2013 Fiscal Year Research-status Report
シンジオタクチックポリスチレンを用いた機能性オルガノメタリックシステムの構築
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24550249
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
板垣 秀幸 静岡大学, 教育学部, 教授 (10159824)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤渡 千枝 静岡大学, 教育学部, 教授 (70196319)
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Keywords | シンジオタクチックポリスチレン / ゲスト分子 / 共結晶 / 配向結晶化 / 偏光蛍光角度分布法 / 基底状態ダイマー / 広角X線回折 / ポリマーブレンド |
Research Abstract |
有機金属錯体をゲスト分子とするシンジオタクチックポリスチレン(SPS)共結晶の作製と機能発現を目指し、申請書の計画通りに順調に研究遂行し、成果を出すことができた。①(SPS/ゲスト分子)共結晶の生成条件を明らかにするために、SPS鎖間の自由体積とゲスト分子の物性(分子サイズ・溶解度パラメータ・動的な分子形状など)の相関を系統的に求め、共結晶生成のための必須条件であるゲル形成可能な分子の条件をまとめることができ、一部を論文報告した。② 複素環誘導体やアミノ基など非共有電子対をもち金属イオンと錯形成可能な有機分子とのSPS共結晶に、ヨウ素を反応させたり、銀鏡反応をおこさせたりして、SPSフィルムに銀膜を固定することに成功した。③ ピリジン・塩化銅(I)など有機金属錯体をSPS固体に固定させ分布させることに成功した。②・③は従来にないSPS材料であり、今後の幅広い展開が可能になった。❹シリカナノ粒子などの無機化合物を分散させたSPSゲルの作製とこれから形成されるキャストフィルムの特性を明らかにした。一方、配向化に関しては、⑤ ゲストとしたい化合物の液体にSPSフィルムを浸漬すると、溶媒分子がゲスト分子となって共結晶化が起こるとともに、共結晶のフィルムに対する配向性が生じるような一群のゲスト分子の条件を絞りつつあるところである。⑥ ゲスト分子の含有量が低いときにもその配向性を決定できるPFR法の開発にも成果を上げ、この手法を用いてポリエステルの配向結晶化過程の解明に成功し、さらにこの事例を参考に、SPS基底状態ダイマーの配向から共結晶配向化の解明を可能にし、現在はこの方法を用いてSPS結晶配向化の制御方法を明らかにしつつあるところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
① シンジオタクチックポリスチレン(SPS)と包接型またはインターカレート型共結晶を形成できるゲスト分子の条件を絞ることができたので、具体的に、有機金属錯体形成可能なゲスト分子との共結晶化を経由して、SPSと有機金属錯体の共結晶化に成功した。また、ゲスト分子の還元反応を経由して銀塩から銀膜をSPSに固定することにも成功した。計画書に沿って順調に進展してきたといえる。一方、②「SPSとシリカ粒子のコンポジットシステムの創製」に向けた、シリカナノ粒子の表面改質やpoly(N-isopropylacrylamide)(PNIPAAm)ゲルへのシリカナノ粒子の共有結合化にも成功しており、ゼオライトと共有結合したPNIPAAmゲルの合成にも成功し、さらにSPSとシリカナノ粒子の混合ゲルも作製できた。③ 共結晶をフィルム全体に対して高秩序で配向させる方法については、一軸延伸などの力学的方法は確定的である一方で、共結晶の配向性が溶媒特性と関係があることが実験的にわかりつつあり、現在、SPSを多数の溶媒に系統的に浸漬し、浸漬による結晶配向化の様子を調査していて、この部分の解明についても計画通りの進行といえる。全体的に当初の計画と同等あるいは同等以上に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の結果を踏まえ、①有用性の高い有機金属錯体をゲスト分子として包接ないしはインターカレートするSPS共結晶の作製と、②SPS共結晶のゲスト分子が反応することで機能性のある被膜や分子配列を生成する系の構築、を模索しながら、電気伝導性などの機能をもつSPSフィルムの作製を行い、SPSを筺体とする機能性フィルムシステムを提言する。さらに、③共結晶をフィルム全体に対して高秩序で配向させる方法の開発を目指し、特に、SPSフィルムをゲスト分子液体(室温で固体のものは高温で液体化して)に浸漬する際にSPS/ゲスト分子共結晶が配向する現象を明らかにし、配向方法として確立するさらに、④「SPSとシリカナノ粒子あるいはゼオライトなどのコンポジットシステムの創製」を遂行する。SPSのゲル化を、シリカナノ粒子やメソポーラスシリカ・マイクロポーラスシリカなどが分散した有機溶媒で行い、物性を明らかにした上で、この分散状態からキャスト法でフィルムを作製し、SPSとシリカなどのコンポジットを作製し、この構造を解析する。
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