2013 Fiscal Year Research-status Report
準希薄溶液中で生成するミクロ相分離構造とグレイン構造の形成メカニズム
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24550250
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡本 茂 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50262944)
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Keywords | 中性子散乱 / コントラスト変調法 / コントラストマッチング / 高分子鎖の広がり / 重水素化ブロック共重合体 |
Research Abstract |
ポリスチレン(PS)とポリメチルメタクリレート(PMMA)とのジブロック共重合体(PS-b-PMMA)を用いた。数分子量は2.1 E5でPSの体積分率は 0.64である。溶媒はテトラヒドロフラン(THF)と水の組み合わせと、トルエン(Tol)とメタノール(MeOH)で、それぞれ重水素化溶媒と非重水素化溶媒を混合し、中性子に対する散乱長密度の変調を行った。これにより、コントラスト変調法による中性子散乱測定実験を行った。高分子濃度は26%で一定とした。また、THF/水系ではTHFと水の添加量はそれぞれ68, 6%であり、Tol/MeOH系ではTolとMeOHの添加量はそれぞれ60, 14%とした。その結果、 THF/水系ではPS相中におけるTHF/水=65/4%、PMMA相中ではTHF/水=70.4/7.7%であった。THF、水ともにPS相よりPMMA相中の方が濃度が高いことが分かった。それに対して、Tol/MeOH系では、PS相中におけるTol/MeOH=62.4/11.9%、PMMA相中ではTol/MeOH=57.6/16.1%であった。つまり、TolはPS相中での濃度が高く、MeOHはPMMA中での濃度が高かった。THF/水、Tol/MeOHともに溶媒同士は良く混合し、かつ、THFもTolもPSとPMMAに対して良溶媒であり水もMeOHもPSとPMMAに対して貧溶媒であるのにも拘らず、両相への分配挙動が大きくことなることが分かった。これは、両相の間の偏斥力を増大させつつ、屈折率差をも制御するための有効な手段を発見したことになる。そこで、PS体積分率がともに約60&で数平均分子量が3.44E5と3.50E5のPS-b-PMMAとdPS-b-PMMA(dPSは重水素化ポリスチレン)を合成し溶液中での鎖の広がりを測定することを目的とし、前述と同様のコントラスト変調法で溶媒の分布を再確認するとともにコントラストマッチングする系を調査した。次年度はコントラストマッチングにより鎖の形態変化を調査する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的のための重水素化ブロック共重合体と非重水素化ブロック共重合体を用いて、溶媒と共重合体の空間分布および、コントラストマッチングポイント計算のための十分な結果が得られた。鎖の広がりの測定はビームタイムの不足から進展度合いが少し遅れているものの、溶媒の組み合わせの違いにより、グレインの巨大化に必要な偏斥力の制御方法として新たな知見が得られたことは非常に大きい進歩である。これらのことから、今年度も概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に発見した空間分が大きく異なる系に関して、それぞれ高分子鎖の広がりを調査し、偏斥力変化および構造のモルホロジーやグレイン成長へ与える影響について精査することにする。昨今の事情により中性子線を利用出来る機会が少なく、重力効果の影響まで進展できない可能性があるが、前年度に発見して溶媒の効果も新規で非常に興味がもたれ、当初目標の巨大グレイン形成メカニズムの研究にとっては重要な知見が得られると期待出来る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中性子散乱実験のための旅費を抑えることができ節約することができた。 重水素化溶媒などは高額であるため、その支出に充てることにする。
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Research Products
(9 results)