2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24550253
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金森 主祥 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60452265)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エアロゲル / 多孔体 / 有機高分子 / 有機-無機ハイブリッド |
Research Abstract |
本研究は、透明かつ高気孔率の多孔体であるエアロゲルの化学組成および作製法を拡張し、高い機械的特性や新しい物性・機能を持った有機高分子系エアロゲルの簡易的な合成法を開発し、基本的物性を調べることを目的としている。特に、超臨界乾燥を用いないエアロゲル状キセロゲルの開発を進め、高い断熱性能や機能性を示す新しい多孔性材料を創製することで工業的応用の可能性を高め、喫緊の環境・エネルギー問題へ貢献することを目指す。 平成24年度は、これまでにエアロゲル化およびエアロゲル状キセロゲル化が明らかになっているポリメチルシルセスキオキサン(PMSQ)系の拡張から行った。PMSQはメチルトリメトキシシラン(MTMS)からゾル-ゲル法により得られ、有機-無機ハイブリッドネットワークを形成したものであるが、有機高分子の含有量を増やすために、ポリプロピレンオキシドで架橋されたアルコキシシランである、ビス(メチルジメトキシシリル)ポリプロピレンオキシド(BMPO)を用い、新たにゾル-ゲル反応系を設計して検討を行った。BMPOでは非常に限られた条件においてのみ単独重縮合してシリコーンゴム状の柔軟なゲルが得られたが、強度が低いため、強固なネットワークを形成するテトラメトキシシラン(TMOS)と共重合することで機械的強度の調節をはかった。様々な溶媒を検討した結果、柔らかく低密度なエアロゲルを超臨界乾燥により得ることができたが、乾燥時にゲルが不透明化することと、ゲル自身の弾性が低いことが現在の課題となっている。今後前駆体の分子設計を行うことで高い弾性を示す低密度・透明エアロゲルの作製を検討したい。 また、エアロゲルの柔軟化の別の方法として、MTMSとジメチルジメトキシシラン(DMDMS)とを共重合した系では高い疎水性を示すマシュマロ状の低密度キセロゲルが得られ、油吸着や低温での柔軟性などの優れた特性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに分かっているPMSQエアロゲル/キセロゲルを作製するゾル-ゲル系を拡張することで、有機高分子成分を多く含むポリシロキサン系低密度エアロゲルを得ることができた。分子構造や細孔構造を最適化することで、機械的特性などの諸物性を向上させることは可能であり、今後の方針に関して指針がひとつ得られたと考えている。今回の結果も含め明らかになったことは、分子構造の最適化は特に重要であり、pHや温度など合成時の条件はもちろん、前駆体単量体の構造設計も行う必要があるということである。今後は合成化学的な視点から前駆体設計も含めた検討を行う予定である。 同じく、PMSQと比べて有機鎖を多く導入したMTMS-DMDMS系マシュマロ状ゲルに関しては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)類似のネットワーク構造を導入できたことが固体NMR測定などから明らかとなり、閉環構造を作りやすいDMDMSをネットワーク中に取り入れるための反応条件を見出せたと言える。この系も有機高分子成分を適切に多く導入することで、より広範な細孔構造・機械的特性制御が可能だと考えている。 その他の予備実験的な試みとして、ビニル基などの反応性有機部位を導入したエアロゲルの検討も進めており、最適な反応系・条件が見いだされつつある。このようなエアロゲルも有機高分子との共有結合に基づく複合化が可能で、機械的強度などの諸物性をより高度に制御できる可能性がある。 これらのことから、次年度以降に繋がる多くの知見が得られたといえ、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度に得られた知見をもとに、研究の最終目的である有機高分子系エアロゲルの簡易作製に繋がるよう、前駆体分子構造の最適化や作製条件、ゲル合成後の後処理方法に関して精力的に検討を行う。具体的には、以下のような検討を行う予定である。 ・架橋ポリジメチルシロキサン系において、分子レベルでさらに最適なネットワークが得られるよう、2官能性シランと3または4官能性シランの反応条件最適化をはかる。通常の水系におけるゾル-ゲル反応とともに、低極性非水溶媒中での反応も検討する。 ・BMPOのみならず、他の有機高分子部位を導入したアルコキシシラン前駆体を出発物質としたゾル-ゲル系において機械的特性に優れたゲルが得られないか検討する。 ・ビニル基など反応性有機官能基を表面にもつポリシルセスキオキサン系エアロゲルの作製条件を最適化し、表面処理などによる機械的特性向上を目指す。 いずれも、シロキサン結合に基づくゲルの合成、物性評価に関する検討であるが、同時にラジカル重合や重縮合に基づく純有機高分子系の検討も開始したい。エアロゲル作製に最適なコロイド状ネットワーク形成が容易なゾル-ゲル系と比べて有機高分子ゲルではコロイド状ネットワークの形成が容易ではなく、前駆体の種類や反応機構に基づく分子レベルでのゲルネットワークの性状変化など基礎的な研究を進める必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、試料作製のための試薬、ガラス器具、試料評価用の消耗品は概ね予定通り支出したが、旅費や学会参加登録費用の支出が抑えられたことと、データ処理補助などの人件費を支出する必要が無かったため、全体としては約70万円の繰越が生じた。 平成25年度も引き続き、試料作製のための試薬、ガラス器具、試料評価用の消耗品の支出が多く見込まれる。設備・備品などの購入は現在計画していない。さらに、得られた研究成果をより多くの国内外の学会で発表し、議論する機会を設けることで新しいアイディアを醸したいと考えている。そのため、おおむね予定通りの支出が見込まれるが、人件費に関しては現在のところ未定である。 以上より、おおむね当初の予算通りに使用する計画であるが、軽度の繰越が発生する可能性もある。
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Research Products
(20 results)