2014 Fiscal Year Research-status Report
高分子の結晶化と分子認識:普遍性と個性に基づいた第一原理材料設計
Project/Area Number |
24550257
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
山本 隆 山口大学, 理工学研究科, 教授 (00127797)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 高分子結晶化 / 分子シミュレーション / 標準理論 / 個性的振る舞い / 螺旋高分子 / 流動結晶化 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分の結晶化を分子レベルで理解し、その微視的および巨視的な構造を制御することは、高分子材料設計の基礎である。高分子結晶化には、美しい「標準モデル」で表わされる極めて普遍的な側面と、螺旋高分子などの特異的な「分子認識」で代表されるような個性的な側面がある。しかし、これらの分子レベルでの起源の解明は現在でも非常に困難な問題である。本研究では、実験的研究における閉塞状態を打破するため、分子シミュレーションを用いて、高分子結晶化の標準モデルの確立、螺旋高分子の結晶化と特異な分子認識メカニズムの解明、流動場における結晶化、分子トポロジーと特異な結晶化機構など、を解明することを目指している。以下に、2014年度における研究の進捗状況の要約を項目別に記す。詳細は、次項“現在までの達成度”を参照。 ①高分子結晶化の標準モデルの確立;モデル高分子の大規模系の研究は一段落し、昨年度に論文発表した。現在は、高分子結晶化の新たな側面(メモリー効果)の解明に取り組んでおり、計算はほぼ終了したので、データ解析を急いでいる。 ②流動場における結晶化;流動と変形下での高分子結晶化の微視的過程、および生成され繊維構造の力学的性質に関する研究を完成させ、昨年度に論文発表した。現在は、更に大規模系での振る舞いの研究を行っており、以前の研究での課題(サイズ効果)の解明に取り組んでいる。 ③螺旋高分子の特異的な分子認識のメカニズムの解明;長時間計算成果をまとめ、2014年度に研究成果を論文として発表した。 ④分子トポロジーと結晶化;興味深いトポロジカル構造を有する高分子の個性的な結晶化挙動の研究を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトでは、次の四つの大きなテーマを設定した。①大規模計算による高分子結晶化の標準模型の確立、②らせん高分子の結晶化と分子認識機構の解明、③流動場での結晶化と分子配向秩序形成のメカニズム解明、④グラフト鎖結晶化のメカニズム解明と共役系高分子への挑戦。 ①大規模計算による高分子結晶化の標準模型の確立:十数万原子からなるモデル高分子系(理想化ポリエチレン)に対してマイクロ秒に及ぶ分子動力学を実行した。今年度は、新たな課題であるメルトメモリー効果を解明するために長時間の計算を行った。メルト(融液)状態に保持する時間によって、その後の結晶化速度が大きく変化することを確認した。現在、この計算結果のミクロな起源の解明に取り組んでいる。 ②らせん高分子の結晶化と分子認識機構の解明:配向状態からの結晶化を直接観測することに成功した。データの解析から、らせん高分子の興味深い結晶化過程とメゾスコッピク構造の形成過程を明らかにした。これらは、最近論文として発表された。 ③流動場での結晶化と分子配向秩序形成のメカニズム解明:モデル高分子に対して、流動場で高度に配向した液体を作成し、分子鎖が秩序的な積層ラメラ構造を形成する過程を明らかにした。研究経過の一部は論文に掲載された。今年度は、更に大規模な系を取り扱うことにより、従来の研究で残された課題(核形成と成長の明確な分離、前駆的な秩序構造の詳細な解析)の解明に取り組んでいる。 ④グラフト高分子の結晶化メカニズム解明と共役系高分子への挑戦:実験的には様々な特異なトポロジー構造を有する高分子の研究が盛んに行われており、その結晶化機構は非常に重要な技術(高分子エレクトロニクス)の基礎となりつつある。興味深い様々なトポロジー(枝分かれ構造)を有するモデル高分子の秩序化過程を精力的に研究しており、明瞭な結晶化が観測できる系が存在することを明らかにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究は概ね順調に進んできた。 「高分子結晶化の標準模型」と「流動結晶化」および「螺旋高分子の秩序化過程の直接観察」に関しては論文発表も済んだ。今後は、新たな課題である 「メルトメモリー効果」と「大規模系での流動結晶化」に取り組む。 また、「高分子のとポロジーと結晶化」は、H26年度の試行錯誤を通して、漸く方向性が見え始めており、研究の加速が急務である。
研究計画を一年延期し、これまでの研究成果をまとめて、2015年12月の米国での国際会議(Pacifichem)で発表する。
|
Causes of Carryover |
最終年度の仕上げとして、2015年3月のDenvorでの米国化学会で研究発表を行う予定であったが、2015年12月にHawaiiで高分子結晶化の国際会議が開催されることが決まり、この会議で発表する方がより効果的であると判断した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述の会議で、招待講演を行うので、そのための費用として残金を使用する。
|
Research Products
(10 results)