2013 Fiscal Year Research-status Report
長周期Al基正10角形準結晶の非周期長距離秩序構造
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24560002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高倉 洋礼 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30284483)
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Keywords | 準結晶 / 結晶構造解析 / 結晶成長 / X線多重回折 / 結晶評価 |
Research Abstract |
構造複雑系物質のひとつの典型である長周期Al基正10角形準結晶と近似結晶の純良単結晶育成を基本として、それらの原子構造を電子密度分布レベルで解明し、非周期長距離秩序形成のメカニズムと構造安定性の起源についての知見を得ることを目的に研究を行った。具体的には、Al-Cu-Rh系でのセルフフラックス法による単結晶試料育成を昨年度にひきつづき試みて、0.4nm周期の正10角形準結晶の数ミリメートル大の単結晶の育成の最適条件を探った。得られた単準結晶は、高次元結晶構造解析のために、実験室系X線回折装置を用いてX線回折強度の収集を行った。また、5次元構造モデルの構築と検討を行った。つぎに、新たな系として、Al-Pd-Ru系においてセルフフラックス法による単結晶試料育成を試みた。その結果、準結晶の単結晶は育成できなかったが、代わりに1.6nm周期の正10角形準結晶に対応する近似結晶の一つであるε16相のX線構造解析が可能なサイズの単結晶を育成する条件を見出すことができた。ε16相の構造を今後決定することができれば、この結晶構造から得られる知見は他の合金系の1.6nm周期をもつ正10角形準結晶の高次元構造解析のためのモデル構築において重要な役割を果たすと考えられる。そのほかに、運動学的理論にもとづく準結晶のX線多重回折のシミュレーションプログラムを改良し、正20面体準結晶にリニアフェイゾン歪が導入されて、正20面体対称から対称性が低下した場合のシミュレーションがおこなえるように整備した。これにより、X線多重回折測定から正20面体準結晶の対称性の評価が行う基礎が完成した。Zn-Mg-Dy正10角形の乱れた平均構造の構造解析に初めて成功し、Al基正10角形準結晶とは全く異なる高次元構造をしていることを明らかとした。Al基F型正20面体準結晶の新しい構造モデルを構築し検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構造複雑系物質のひとつの典型である長周期Al基正10角形準結晶と近似結晶の純良単結晶育成を基本として、それらの原子構造を電子密度分布レベルで解明し、非周期長距離秩序形成のメカニズムと構造安定性の起源についての知見を得ることを目的に研究を行った。そのために、準結晶とその近似結晶の単結晶試料の作成、構造評価、単結晶構造解析のための強度データ収集、構造モデル構築、単結晶構造解析を同時並行的に進めてきた。研究業績の概要に記したように、Al-Pd-Ru系という新たな系での単結晶育成の試みで、1.6nm周期の正10角形準結晶に対応する近似結晶の一つであるε16相の単結晶得ることができた点、準結晶のX線多重回折のシミュレーションプログラムにおいて、リニアフェイゾン歪がある場合でもシミュレーションできるように改良した点、そして、Zn-Mg-Dy正10角形の乱れた平均構造の構造解析に初めて成功し、Al基正10角形準結晶とは全く異なる高次元構造をしていることを明らかにできたこと、また、Al基正10角形準結晶と関連したAl基F型正20面体準結晶の新しい構造モデルを構築することができたことから、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
基本方針は平成25年度と同様である。Al-Ni-Ru正10角形準結晶の育成と構造評価を基準として、他の長周期Al基正10角形準結晶と近似結晶の純良単結晶育成を進める。単準結晶の育成はフラックス法を基本としつつ、他の手法による方法も検討する。純良単結晶が得られた準結晶と近似結晶から、X線結晶構造解析順次進めてゆく。平成25年度に準結晶のX線多重回折を評価するためのシュミレーションプログラムで、リニアフェイゾン歪が導入された正20面体準結晶のシュミレーションプログラムもできるように基礎が完成したので、そのプログラムをさらに改良するとともに、多重回折の実験を実施し、単準結晶を対称性、フェイゾンの有無、回折ピークの半値幅および散漫散乱の観点から構造評価行い、準結晶の高精度な構造因子データーを実験的に得るための方法と補正法の検討を進める。そして、構造未知な準結晶のクラスターモデルによる高次元構造解析と高次元電子密度解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費として試料原料の高純度金属材料を予定していたが、手持ちの原料に余裕があったことと、年度末の忙しい時期であったことから購入を見合わせたため、次年度使用額が生じた。 直接経費の内訳は物品費と旅費である。物品費は、消耗品のみの使用を計画している。それから、旅費として、共同利用施設での実験と成果発表のための学会出張のための旅費等を予定している。
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Research Products
(7 results)