2012 Fiscal Year Research-status Report
液晶分子の配向方向とアンカリング力の制御:液晶材料からのアプローチ
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24560003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
山口 留美子 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30170799)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ネマチック液晶 / 配向膜 / ラビング処理 / 容易軸 |
Research Abstract |
従来の配向膜からの一方的な配向制御ではない,液晶分子の影響を積極的に取り入れた配向制御を目的とし,「液晶分子の配向方向が,液晶材料の化学構造により異なる」配向現象の検証例を増やすとともに,配向方向の異なる液晶を混合することで,アンカリング力を制御する技術をめざし,研究を行った。 本年度は,液晶分子骨格基,末端基,極性基の種類,およびそれら組み合わせが異なるおよそ20種類の単体ネマチック液晶において,ポリビニルシンナメート(PVCi)のラビング配向膜上における配向方向(容易軸)を明らかにした。その結果,液晶の配向方向はI:骨格基の化学構造に依存しない,II:極性基の種類,極性基の結合部位に依存しない,III:末端基のアルキル鎖長に依存しない,ことが明らかとなった。さらに,ラビング方向と平行に配向する液晶分子,すなわち配向膜の遅延軸に垂直に配向し従来の配向メカニズムに従わない液晶は,両末端がアルキル基であり極性基を持たない液晶,であることを明らかにした。また,水素結合性液晶は,2量体では両末端がアルキル基の構造であるが,ラビング方向と垂直に配向した。このことは,カルボキシル基が極性基として配向方向の決定に寄与していることを示すものである。 PVCiは紫外線照射により架橋反応が生じる。ラビング処理後に紫外線照射を行った配向膜上で液晶の配向方向の確認を行ったところ,すべての液晶において未架橋膜と同じ配向方向を示した。 ラビング方向に対して垂直に配向する液晶と平行に配向する液晶を混合し,配向方向が切り替わる濃度を検証した。この濃度は架橋反応膜と未架橋反応膜とでは異なることを明らかにした。この結果を応用し,紫外線照射部と未照射部では配向方向が90°異なる,といった新規な配向分割技術を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)PVCi配向膜における配向方向の液晶材料依存性の解明において,I:PVCi配向膜の作製および配向処理の最適化は達成できた。II:40種類程度の単体ネマチック液晶および混合ネマチック液晶の配向方向を調べ,化学構造の影響を明らかにできた。すなわち,極性基を有する液晶は,配向膜の遅相軸に平行(従来の配向メカニズムに従う),極性基を持たない液晶(ニュートラル液晶)は遅相軸に垂直,であった。 (2)PVCi配向膜における液晶材料の混合による配向方向変化の解析において,配向方向が切り替わる濃度を明らかにした。今回は極性基を有する液晶として最も基本的な液晶である5CBを,極性基を持たない液晶としては3種類のニュートラル液晶の混合体を用いた架橋反応膜と未架橋反応膜とで配向方向が切り替わる濃度を明らかにし,新規な配向分割技術を提案するに至った。 今年度の計画に挙げた2つの研究内容のいずれにおいても,良好な進展状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)配向膜の種類を増やし,PVCi膜における容易軸の液晶材料依存性を比較検討する。すなわち液晶分子の極性基の有無が配向方向を決定する要因であることが普遍的なものなのか,PVCi膜に限ったことなのかを明らかにする。さらに,液晶材料依存性が発現する高分子と発現しない高分子の比較検討を行う。これにより,液晶配向メカニズムの理解が進むものと予想する。 (2)液晶材料の混合による配向方向変化とアンカリング力変化の測定。異なる化学構造の液晶混合により,配向秩序度の低下,2つの配向メカニズムの競合,が生じると考えており,この場合アンカリング力の低下が予想される。(約10-4N/mから10-7N/mまたはゼロまで)。また,アンカリング力の低下のメカニズムは,液晶材料依存性を持たないポリイミド配向膜を用い,混合液晶の配向状態およびアンカリング力の比較を行うことで明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
備品の購入計画はない。消耗品として,高分子および液晶材料,ガラス基板,測定に要する光学部品の購入を予定している。研究成果発表のための旅費,学会研究会の登録費を予定している。
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Research Products
(6 results)