2013 Fiscal Year Research-status Report
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24560005
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
神島 謙二 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20321747)
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Keywords | 結晶工学 / 応用物性 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、カリウムを用いて強磁性六方晶M型フェライト試料の作製を試みた。カリウム、ランタンで置換した試料を、通常の酸化物セラミック作製法で 1200~1300℃ の焼成温度で作製した。その際、カリウムの飛散を防ぐため、白金ルツボ内に試料を置き、その上から塩化カリウムで覆い、ルツボもろとも電気炉中で焼成した。得られた試料について、粉末X線回折実験を行ったところ、六方晶M型フェライトが主相となった。この試料は室温強磁性であり、VSM測定を行ったところ印加磁場 15 kOe において飽和磁化値 60 emu/g を示した。磁化-温度測定では1つのキュリー点が観測され、その温度は 440℃ であった。 したがって、安価でありふれた元素を用いて強磁性六方晶M型フェライトを作製するという目的を達成しつつある。本試料は、カリウムとランタンを同時に含むことで強磁性を発現した。理化学研究所にてEPMA測定を行ったところ、カリウム含有量はランタンと同程度であった。これは、1価のカリウムに対して、電荷補償のための3価ランタンを含むことにより、バリウムの2価と同様の働きをしているためだと考えられる。 また、その周辺物質の探索も行い、複雑な結晶構造を有する六方晶U型フェライト、鉄の価数制御をした新たなフェライト、噴霧熱分解法によるフェライト微細粒子の作製にも成功した。 このような新物質探索は、新材料開発研究の礎石となるものであり、重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カリウムを用いて強磁性六方晶M型フェライトを作製するという目的を達成しつつある。前年度に引き続き、イオン半径の近いランタンとカリウムを同時に用いることにより、強磁性が発現した。X線回折実験を行ったところ、六方晶M型フェライトが主相であることが判明した。室温での飽和磁化値は 60 emu/g 程度、キュリー温度は約 440℃ であり、一般的なM型バリウムフェライトと同程度であった。 次は、よりありふれた、より人体に優しい構成元素の割合を増やすことを目論む。六方晶M型フェライト相を主相として作製することに成功したため、次はランタンを減らすことが課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目に探索したカリウムを含むM型フェライトの作製条件を出発点とし、更にイオン置換の可能性を探る。 具体的には、ランタンを減らすのが課題となる。これはカリウムの電荷補償をしていると考えられる。このことは、EPMA組成分析からも実験的に明らかになったので、ランタンを減らすのにともない、カリウムも減らさなければいけないと考えられる。 そこで、カルシウムの二価イオンを加えることとする。カルシウムイオンはイオン半径が小さいため、純粋な六方晶M型 CaFe12O19 は作製出来ていない。イオン半径が大きいカリウムが一緒に入ることにより、カルシウムを含む六方晶M型フェライトが作製できるものと期待できる。 イオン置換の他に遊星型ボールミルによる原料粉末のナノサイズ粉砕などを駆使し、良質な強磁性六方晶M型フェライト試料の作製を試みる。作製した試料について、X線回折実験ならびに磁気測定を行うことにより、強磁性試料生成の最適条件の探索を引き続き行う。また、理化学研究所(埼玉県和光市)に出張し、EPMA分析で組成を確認する。
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Research Products
(6 results)