2013 Fiscal Year Research-status Report
GaN結晶のメゾスコピックなスケールでのひずみ場の研究
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24560009
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
秋本 晃一 日本女子大学, 理学部, 教授 (40262852)
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Keywords | 化合物半導体 / X線回折 / 結晶工学 / 窒化ガリウム / メゾスコピック / シンクロトロン放射光 / 格子ひずみ |
Research Abstract |
代表的なワイドギャップ半導体であるGaNは光デバイスばかりでなく電子デバイスとしての期待も大きい。しかし、電子デバイスとして利用するためには結晶の品質のさらなる向上が必要になると考えられている。本研究では、X線トポグラフィーの手法により最近発見された、微小に傾いたμmオーダーのメゾスコピックなスケールの結晶グレインの解明および制御がGaN結晶のさらなる結晶性の向上の鍵をにぎると考え、その詳細を明らかにすることを目的とする。また、加工の難しいGaN結晶の研磨について表面近傍のひずみ測定を極端に非対称なX線回折法により行い研磨技術の確立に資する。 高エネルギー加速器研究機構の放射光研究施設のシンクロトロン放射光を利用し、X線トポグラフの撮影にCCDカメラを用い、トポグラフ像を詳細に解析することにより、アモノサーマル法で作製された欠陥密度の少なく非極性面であるm面及びc面のGaN結晶についてμmオーダーでの結晶面の傾きのずれ(⊿θ)と結晶の面間隔の伸縮(⊿d)を分離し画像として可視化した。本年度は、今まで分離することを手作業で行っていたため解析に多大な時間がかかっていた問題に対して、自動解析ソフトを開発することにより大幅な解析時間の短縮に成功した。また、表面から結晶面が傾いているオフ角のある試料についても、はじめて解析することに成功した。さらに一連の解析結果から結晶欠陥について考察した。 また、アモノサーマル法で作製されたGaN基板上にHVPE法でGaN薄膜を成長させたGaN結晶について、薄膜成長時に試料に導入される大きなひずみを可視化する方法を新たに考案した。この結果試料全体の「そり」とひずみの関係を議論することが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
X線をすれすれに入射する条件でのバルク結晶からの回折線を用いた表面に敏感なX線回折法において、定量的なひずみ評価にはDarwinの動力学的回折理論が必要である。本研究では現在までに、六方晶系の物質における計算としてはじめて定量的なひずみ評価に成功した。今後この計算方法を用いて、さまざまなGaN結晶成長条件におけるひずみの定量的評価が可能になった。計算方法が確立できたことから、この極端に非対称なX線回折法と呼ばれる研究手法において、実験と計算の両面によるひずみ解析から非破壊・広範囲での総合的な結晶評価法が確立できた。 さらに、GaN結晶についてμmオーダーでの結晶面の傾きのずれ(⊿θ)と結晶の面間隔の伸縮(⊿d)を分離し画像として可視化する際、これまで分離することを手作業で行っていたため解析に多大な時間がかかっていた問題に対して、自動解析ソフトを開発することにより大幅な解析時間の短縮に成功した。これは平成25年度の大きな研究の推進方策の一つであったことである。また、表面から結晶面が傾いているオフ角のある試料についても、はじめて分離解析を行うことに成功した。これらの解析方法の開発により、多くの解析結果から結晶欠陥について詳細な考察をすることが可能になった。 また、アモノサーマル法で作製されたGaN基板上にHVPE法でGaN薄膜を成長させたGaN結晶について、薄膜成長時に試料に導入される試料全体の大きなひずみを可視化する方法を新たに考案し、薄膜成長条件の最適化を行うための準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度までに得られたに得られたDarwinの動力学的回折理論を用いた定量的なひずみ評価法をもとにして、GaN結晶の表面近傍のひずみに関する研究を行う。GaN結晶の表面近傍のひずみはその後の結晶成長に大きな影響を与え、デバイス特性にも影響を与える可能性がある。本研究では、さまざまな結晶成長の条件について表面近傍のひずみの研究を進めるとともに、応力やひずみによる構造変化に関し、結晶成長初期過程についても研究可能な手法である電子線を用いた研究も行う。 また、平成25年度に新たに開発に成功した、X線トポグラフの解析の大幅な時間短縮が可能にした、μmオーダーでの結晶面の傾きのずれ(⊿θ)と結晶の面間隔の伸縮(⊿d)を分離の自動解析法を用いて、膨大な量の解析結果から結晶欠陥について詳細な考察を行う。 さらに、アモノサーマル法で作製されたGaN基板上にHVPE法でGaN薄膜を成長させた大きなひずみのあるGaN結晶について、平成25年度に新たに開発した試料全体の大きなひずみを可視化する解析方法をさらに発展させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
超高真空中での電子線を用いた研究の必要性は、X線トポグラフによるひずみについての研究が進展するにつれ次第に明らかになってきたものである。特にアモノサーマル法で作製されたGaN基板上にHVPE法でGaN薄膜を成長させた試料には、他の半導体のホモエピタキシャル成長では考えられない大きなひずみが発生している。この問題の解決が、今後のGaN研究の将来を左右すると考え、電子線による表面構造の研究を開始した。表面構造研究のために用いる超高真空装置の開発には当初予定していた研究費より多額の研究費が必要であると見積もられ、これが次年度に使用する研究費が生じた理由である。 表面近傍のひずみの研究を、その後の結晶のそり等に大きな影響を与えると考えられる結晶成長初期過程について電子線を用いて研究を遂行するために、超高真空装置及び電子回折装置の整備を昨年度に引き続き行う。また、GaN試料の清浄化のための試料まわりについて装置の試作を行う。さらに、試料に含まれる不純物原子の種類及び結合状態の情報を、解析結果の解釈が簡単な、熱脱離の実験により得るため、そのための装置を整備する。また、その際用いる通電加熱による試料加熱装置も試作する。 X線トポグラフの解析においては、μmオーダーでの結晶面の傾きのずれ(⊿θ)と結晶の面間隔の伸縮(⊿d)の分離を行う際、さらに試料全体の大きなひずみを解析する際、解析位置をCCDのピクセル単位で特定することを迅速に行うための画像処理ソフトおよび解析用コンピュータを昨年度に引き続き整備する。
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Research Products
(3 results)