2012 Fiscal Year Research-status Report
近接した半導体ナノ粒子間の相互作用メカニズムの解明と新規光機能性
Project/Area Number |
24560015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
金 大貴 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00295685)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 半導体ナノ粒子 / 共鳴相互作用 / 光物性 |
Research Abstract |
ナノ粒子間距離を高精度で制御した積層構造を作製し、ナノ粒子間距離が異なる種々の試料の光物性を調べることにより、ナノ粒子間共鳴相互作用メカニズムを明らかにすることが本研究のめざすゴールである。平成24年度は下記の研究成果を得た。 半導体ナノ粒子の発光特性における最大の特徴として、量子効果によりスピン一重項-三重項励起子分裂エネルギーが増大した結果、スピン三重項励起子(ダーク励起子)が発光過程に大きく寄与することが挙げられる。そこで、スピン一重項-三重項励起子分裂エネルギーを広範囲で制御するために、CdS、CdSe、及びCdTeなどの種々の半導体物質のナノ粒子の作製に取り組み、サイズ及び表面構造が制御されたCdS、CdSe、CdTeナノ粒子の作製に成功した。 液相法により作製されたナノ粒子の光学特性に関する従来の研究は、室温での測定がほとんどであり、温度依存性を調べた研究は皆無に等しい。発光メカニズムを解明する上で、光学特性の温度依存性を系統的に調べることは必須である。さらに、分散状態での発光メカニズムの解明は、ナノ粒子間相互作用メカニズムを明らかにする上で根幹を成す極めて重要な課題である。そこで、半導体ナノ粒子の発光メカニズムを解明するために、ナノ粒子を高分子フィルム中に均一に分散させる手法を確立し、吸収・発光スペクトル、さらには発光減衰プロファイルの温度依存性を詳細に測定した。その結果、上記ナノ粒子の発光メカニズムの解明に成功した。 さらに、ナノ粒子間の共鳴相互作用メカニズムを解明するために、ナノ粒子と電解質ポリマーとの交互積層膜の作製に取り組んだ。ポリマー層の厚さによりナノ粒子間距離を1 nmの精度で制御すること、ナノ粒子間距離が異なる種々の試料の作製に成功した。吸収スペクトルのナノ粒子間距離依存性を詳細に調べ、共鳴相互作用エネルギーの粒子間距離依存性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の具体的な目的は、(1) ナノ粒子の発光過程に大きな影響を及ぼす一重項-三重項励起子分裂エネルギーの大きさが異なる種々の半導体ナノ粒子(CdS、CdSe、CdTeナノ粒子など)を作製し、その発光メカニズムを調べるとともに、(2) ナノ粒子間の距離を1 nmの精度で制御した積層構造を作製し、ナノ粒子間の共鳴相互作用メカニズムの全容を解明すること、(3) さらには、これまでの研究成果を集約し、ナノ粒子間相互作用の制御による新規光機能性材料を創製することである。 これまでに、(1)の目的は達成し、(2)の目的についてもナノ粒子間距離の制御方法を確立している。さらに、ナノ粒子間距離が異なる種々の積層構造の作製にも成功しており、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に引き続き、先に述べた研究目的を達成するために、研究を展開し、共鳴相互作用メカニズムを明らかにする。先に述べたように、スピン一重項-三重項励起子分裂エネルギーの大きさは半導体ナノ粒子の発光過程に大きな影響を及ぼす。このスピン一重項-三重項励起子分裂エネルギーの大きさは半導体ナノ粒子サイズだけでなく、物質にも大きく依存する。例えばCdTeナノ粒子においては最大で2 meVであるのに対し、CdSナノ粒子においては最大で60 meVにもなる。また、スピン一重項-三重項励起子状態間の熱分布の割合は温度に大きく依存することから、相互作用メカニズムも温度に依存することが予想される。したがって、種々の物質のナノ粒子を対象に、ナノ粒子間距離が高精度で制御された試料構造を作製し、光学特性の温度依存性を詳細に測定することによって、はじめて真のメカニズムが明らかになると考えられる。 これまでのナノ粒子間の共鳴相互作用に関する研究は、定常状態での発光スペクトルのみの議論であり、発光ダイナミクスや温度依存性の研究は行われていない。一方、本研究で対象とする液相法により作製したコロイドナノ粒子間の共鳴相互作用に関する研究は全く無く、本研究が初の試みである。そこで、スピン一重項-三重項励起子分裂エネルギーの大きさが共鳴相互作用に及ぼす影響に着目し、CdSeやCdTeを用いたナノ粒子積層構造を作製する。スピン一重項-三重項励起子状態間の熱分布の割合は温度に大きく依存することから、温度依存性を詳細に測定することによって、半導体ナノ粒子間共鳴相互作用の真のメカニズムを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(8 results)