2013 Fiscal Year Research-status Report
近接した半導体ナノ粒子間の相互作用メカニズムの解明と新規光機能性
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24560015
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
金 大貴 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00295685)
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Keywords | 半導体ナノ粒子 / 共鳴相互作用 / 光物性 |
Research Abstract |
水熱合成法によりCdS、CdSe、CdTeナノ粒子を作製した。共鳴相互作用の距離依存性を明らかにするために、Layer-by-layer 法(LBL法)を用いてナノ粒子層状構造を作製した。ナノ粒子を1-8層積層させたナノ粒子層状構造を作製し、吸収スペクトルの測定を行なった。ナノ粒子の積層数を増やすに従い、吸収強度が線形的に増大する振る舞いを観測し、LBL法によりナノ粒子の層状構造を作製できることを明らかにした。また、吸収エネルギーに注目すると、積層数を増やすに従い、吸収ピークが低エネルギー側にシフトする振る舞いを観測した。この結果は、積層方向に近接したナノ粒子間で共鳴相互作用が起こっていることを示唆している。共鳴相互作用は、隣接したナノ粒子間で波動関数の重なりが生じ、結合状態を形成する現象であり、共鳴相互作用を起こしたナノ粒子は、隣接したナノ粒子との結合エネルギー分だけ安定になるため、吸収ピークが低エネルギーシフトすると考えられる。本実験結果は、積層数の増大とともに、吸収ピークのエネルギーシフト量が大きくなっており、確かに共鳴相互作用が起こっていることを示している。 ナノ粒子のサイズ及びナノ粒子間距離が異なる種々の試料を系統的に作製し、ナノ粒子のサイズ依存性、層間距離依存性を調べた。共鳴相互作用のナノ粒子の粒径依存性において、ナノ粒子のサイズが大きくなるほど、波動関数のしみ出し長が短くなり、共鳴相互作用の効果が弱くなることを反映して、吸収ピークのエネルギーシフト量が小さくなる振る舞いを観測した。また、共鳴相互作用のナノ粒子層間距離依存性を調べた結果、スペーサー層厚が厚くなるほど共鳴相互作用の効果が弱くなることを反映して、吸収ピークのエネルギーシフト量が小さくなる振る舞いを観測した。以上の結果から、ナノ粒子のサイズと層間距離によって、共鳴相互作用を制御できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の具体的な目的は、(1) ナノ粒子の発光過程に大きな影響を及ぼすスピン一重項-三十項励起子分裂エネルギーの大きさが異なる種々の半導体ナノ粒子を作製し、その発光メカニズムを調べるとともに、(2) ナノ粒子間の距離を1 nmの精度で制御した積層構造を作製し、ナノ粒子間の共鳴相互作用メカニズムの全容を解明すること、(3)さらには、これまでの研究成果を集約し、ナノ粒子間相互作用の制御による新規光機能性材料を創製することである。 平成24年度に、(1)の目的を達成し、(2)についても、ナノ粒子間距離の制御方法、ナノ粒子間距離が異なる種々の積層構造の作製に成功している。平成25年度において、共鳴相互作用のナノ粒子層間距離依存性を明らかにするとともに、ナノ粒子のサイズと層間距離によって、共鳴相互作用を制御することに成功しており、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24、25年度に引き続き、本研究の目的を達成するために、研究を展開し、共鳴相互作用メカニズムを明らかにする。スピン一重項-三十項励起子分裂エネルギーの大きさは、半導体ナノ粒子のサイズだけではなく、物質にも大きく依存する。例えばCdTeナノ粒子においては最大で2 meVという理論計算があるのに対し、CdSナノ粒子においては最大で60 meVにもなる。また、スピン一重項-三重項励起子状態間の熱分布の割合は温度に大きく依存することから、相互作用メカニズムを解明するために、光学特性の温度依存性を詳細にしラバることが重要となる。平成26年度において、これらの研究を推進することにより、半導体ナノ粒子間共鳴相互作用の真のメカニズムを明らかにする。
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Research Products
(10 results)