2012 Fiscal Year Research-status Report
面間トンネルスペクトロスコピーによる高温超伝導銅酸化物の擬ギャップ相の研究
Project/Area Number |
24560017
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
北野 晴久 青山学院大学, 理工学部, 准教授 (00313164)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 固有ジョセフソン接合 / 超伝導ギャップ / 擬ギャップ / トンネルスペクトル / Bi2212 |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体の固有ジョセフソン接合系を用いた面間トンネルスペクトロスコピーから超伝導ギャップおよび擬ギャップを観測するための測定手法と素子構造を検討した。測定手法については、短パルス法で得られる電流電圧特性の数値フィッティングから微分電気伝導度スペクトルを求める手法が、ギャップ構造観測に有効なことを確認した。素子構造については、接合部の面積を約1平方マイクロメートルに微細加工するだけでなく接合数を10接合以下に抑えることが、自己発熱効果を低減してギャップ構造を精密に得るために、非常に重要なことを見出した。これらの研究成果に基づき、Bi2Sr2CaCu2Oy単結晶を微細加工して10接合以下の固有ジョセフソン接合素子を作製し、短パルス法による電流電圧特性の測定から超伝導ギャップ及び擬ギャップに起因する微分電気伝導スペクトル変化の観測に成功した。 次に、キャリアドープ量の変化に伴うスペクトル変化の観測に向け、Bi2212のCaサイトをYで10%置換したBi2Sr2Ca0.9Y0.1Cu2Oy単結晶を作製した。得られた単結晶の超伝導転移温度の変化は予想よりも小さかったが、電子線元素分析(EPMA)による組成分析からY置換量が仕込み量と一致することを確認した。この単結晶試料を微細加工して固有ジョセフソン接合素子を作製し、その電流電圧特性を測定したが、キャリアドープ量の変化に伴うトンネルスペクトルの系統的変化を検出するには至らなかった。 当初、予定していた他の測定手法(ロックイン検出法と直流法)の検討と直流法に用いる精密電流源の購入については以下の2つの理由で断念した。(1)短パルス法の有効性を実証するために超伝導ギャップおよび擬ギャップの観測実験を優先した。(2)低温実験に不可欠なヘリウム再凝縮装置に冷却水漏れ事故が発生し、その対策にチラーを導入する必要が生じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超伝導ギャップや擬ギャップを観測するための測定手法や素子構造については部分的な検討しか実施できなかったが、短パルス法による測定手法と小面積かつ少数接合の素子構造による超伝導ギャップや擬ギャップの観測に一定の目処が付いたこと、およびBi2212のCaサイトをYで置換した単結晶試料の作製とその評価を着実に実施できたことから、研究計画は順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に着手したCaサイトをYで置換したBi2Sr2(Ca_1-xY_x)Cu2Oy単結晶をさらに系統的に育成して固有ジョセフソン接合素子を作製し、不足キャリアドープ領域における超伝導ギャップと擬ギャップの観測実験を進めると共に、短パルス法によるギャップ観測の成否を握ると考えられるパルス波形の伝送特性について、素子構造との相関関係に着目した系統的研究を進める。さらに、固有ジョセフソン接合素子の接合数を少数に制御する技術として、ガリウムの集束イオンビーム加工とアルゴンのイオンシャワー加工を組み合わせた加工技術の開発に取り組む。このため、当初の計画にあったメサ型微小接合素子の作製は延期し、Bi2212単結晶を酸素雰囲気中で熱処理することによる過剰キャリアドープ領域の試料作製に着手する。また、Bi2212系との対比に用いる予定のLa-Bi2201単結晶については、単結晶育成の準備を進めると共に他研究室からの試料提供が可能かどうかの検討も進め、最終年度の研究に備える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(4 results)