2012 Fiscal Year Research-status Report
高温超伝導体単結晶薄膜の表面ナノ加工と超伝導特性制御
Project/Area Number |
24560021
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
大井 修一 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (10354292)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高温超伝導 / 局所陽極酸化 / 固有ジョセフソン接合 / 渦糸状態 |
Research Abstract |
高温超伝導体単結晶の低ダメージナノ加工を可能にすることにより、ナノ構造をもつ高温超伝導体における新規物性・機能の発現を目指す目的で、局所プローブを用いたBi2Sr2CaCu2O8+y(Bi2212)単結晶薄膜の微細加工および評価に取り組んだ。本年度はこれまでに行ってきた光リソグラフとFIBによるプロセスに加え、原子間力顕微鏡(AFM)の探針を用いた局所陽極酸化法によるBi2212単結晶薄膜のナノ加工を実現するべく、既存のAFM装置に湿度調整器を導入した。これにより、陽極酸化加工の際の重要なファクターである表面吸着水の形成に必要な環境を安定して作り出すことができるようになった。現在、Si表面でのテストを終え、Bi2212の加工条件を評価中である。また、もう一つの局所的な超伝導制御法として、超伝導特性、中でも超伝導転移温度(Tc)をin-situで制御できるとする、最近報告された固有ジョセフソン接合スタックへの電流注入によるドーピング制御に注目し、試料作製および追試を行った。試料の準備においては、FIBのみを用いた微小かつ簡便な固有ジョセフソン接合の作製法を考案した。現段階で、電流注入時の電圧を変えることで、過剰ドープ側および不足ドープ側のどちらサイドへも制御できることを確認したが、必ずしも可逆な変化となっていない。大電流による試料温度上昇による酸素量の変化の可能性も考えられるため、サイズを変えた試料などで比較を行っている。一方で、電流注入ドーピング前の接合特性の評価において、磁場中抵抗の詳細な測定を行ったところ、単一渦糸の侵入を抵抗変化として捕えることに成功、また固有ジョセフソン接合素子の形状に依存した渦糸配置の変化による渦糸格子融解転移温度の磁気振動現象を発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度予定した装置の改良や硬質導電性探針の準備、また試料の位置決めを精度よく行うための直上顕微鏡観察装置を新たに導入する等、加工装置系の準備に関してはほぼ目標を達成した。Bi2212単結晶薄膜の加工に関しては、現状数100nmのライン加工の段階ではあるが、加工可能であることを確認できた。当初の予定より若干遅れはあるが、今後、任意の形状・パターン加工を可能とすべく取り組むと同時に、作製した試料の評価を進める。また、電流注入ドーピングに関しては、電流注入によりドーピングレベルが変化することを確認するという目標は達成できたが、現状ドープ・アンドープの繰り返しによる変化は必ずしも可逆なものではなかった。今後、試料サイズや電流注入部の配置を変えた試料での実験から、この現象のメカニズムを見極める。物性測定においては、ドーピング制御の前段階として行った、固有ジョセフソン接合の磁気抵抗の詳細な測定において、単一渦糸侵入および渦糸格子融解転移の同時観察に成功した。接合サイズが小さいため、試料形状の影響を受けた渦糸配置・渦糸格子の安定性を反映して、渦糸格子融解転移温度が侵入した渦糸の本数に応じて振動する様子を見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
既存のプローブ顕微鏡を高温超伝導体の局所陽極酸化加工用への拡張をほぼ完了したので、今後実際に試加工を行い、加工性能(位置決め精度・最小加工サイズなど)の評価とともに陽極酸化加工されたBi2212超伝導体の物性評価を行う。加工応用として、アンチドット格子をもつBi2212薄膜やBi2212ナノワイヤ、固有ジョセフソン接合構造、SQUID構造の作製など、超伝導デバイスの萌芽になりうる素子構造を試作し、その物性を評価する。 一方、電流注入による超伝導特性制御に向けて、Focused Ion Beamによる微小固有ジョセフソン接合の作製を続け、その素子特性の向上を図るとともに、3端子型の電流注入素子形状を試作し、評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、主に、導電性AFM探針や蒸着材料、単結晶基板、ガスなどの消耗品費、および学会参加のための旅費に充てる。
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