2013 Fiscal Year Research-status Report
電界成長を用いた自己組織化による高輝度ナノカーボン電子源の作製と評価
Project/Area Number |
24560024
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中原 仁 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20293649)
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Keywords | 電界放出電子源 / 電子顕微鏡 / 電界誘起成長 |
Research Abstract |
本研究課題は、電界誘起成長(Field Emission Induced Growth: FEIG)による自己組織的な作製方法を用いて、電子顕微鏡用の新規な高輝度電子源を開発し、既存研究で行われている単原子電子源やカーボンナノチューブ(CNT)電子源の最大の弱点である軸調整の困難さを解決することを目的としている。初年度にはFEIG用の成長システムを構築し、これによって作製したFEIG電子源が軸調整が極めて容易で且つ走査電子顕微鏡電子源として十分実用的な性能を出せることを実証した。本研究計画の2年目である平成25年度は、成長中の電子源の状態を解析するため、成長中の電流・電圧特性が測定できる計測システムを構築し、これによって以下の成果を得た。 1) 成長したFEIG電子源はCNT電子源並みの小さな電子放出面積(単結晶タングステン電子源の数百分の1)を持ちつつ単結晶タングステン電子源並みの小さな電界増強因子(CNT電子源の十分の1以下)を持っていることを明らかにした。これはFEIG電子源が高輝度電子源として理想的な形状であることを意味している。 2) 成長の様子は放出電流として成長中にモニタすることが可能であり、成長の制御を行うことが原理的に可能であることを示した。 3) 同条件下で得たCNT電子源に対する相対輝度はほぼ同程度であると見積もられた。 また、以上の成果を国際会議(9th International Symposium on Atomic Level Characterizations for New Materials and Devices: ALC'13, 2013年12月, 於ハワイ)にて発表するとともに、e-Journal of Surface Science and Nanotechnologyへ投稿し、2014年4月7日に受理されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は当初の研究計画2年目に行う予定であった実機による実用試験を優先して行い、本研究の推進意義を明確にした。平成25年度(2年目)は当初計画の1年目に予定していた成長プロセスや輝度の評価を行った。実績欄にも記載したように、成長中の電流・電圧測定の測定と解析には成功し、成長による電子源形状の変化を捉えることができた。また、輝度もCNT電子源並みであることを実証した。しかし、予定していた透過電子顕微鏡(TEM)による先端形状・組成の解析は、作製した電子源をTEM試料台へ移送することの困難さ(許容できる試料のサイズが非常に小さいため、作製した試料を加工しないとTEM試料台へ搭載できない)に阻まれ、現時点では成功していない。また、先端形状が計測できていないため電界シミュレーションとの対応をつけることができない状態である(電界シミュレーションは既に実行可能な準備を整えている)。現在は最終年度の計画と平行してTEM観察実現のための努力を継続しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度(平成26年度)は達成度に記したように現在遅れているTEM観察と平行して以下の計画を実行する。 1) FEIG電子源の寿命評価:これまでの試験では数時間程度のエミッション(数μA)を数回繰り返す程度の評価はできているが、エミッション電流を増やして加速試験を行い、寿命や電流耐性を調べる。 2) FEIG電子源の再生可能性の検証:寿命が尽きた(成長させたナノ電子源が失われた状態の)電子源を再度FEIGによって再生できるかどうかを試す。ベースとなるタングステン探針の再利用が可能であれば、現在用いている多結晶タングステンよりも安定した性能が期待できる単結晶タングステンをベースとして用いても、実用性に大きな影響を与えないことが期待できる。 3) FEIG電子源の電子顕微鏡以外への適応可能性を探る:FEIG電子源は高輝度且つ大電流という特徴があり、X線顕微鏡へも応用できる可能性が高い。今後の展開も含めてFEIG電子源の新たな応用範囲を探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に購入した高電圧電源が当初予定より安価であったため初年度に13万円程度の繰り越しを生じた。H25年度は当初予定を3万円ほど超えて支出したが、初年度の繰り越し分が10万円程度残っている状態である。 電子源作製実験と電界シミュレーションを平行して進めるため、次年度使用額を利用してシミュレーション用パソコンの導入(10万円)を予定している。また、現在使用している真空ポンプが老朽化しているため、これも交換する計画である(15万円)。 これらの物品費に加えて、実験用消耗品(35万円)、研究成果発表(30万円)を当初予定に沿って使用する。研究成果発表としては、秋・春の応用物理学会に加えて、Symposium on Surface and Nano Science 2015(Furano)への出席を予定している。
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Research Products
(4 results)