2012 Fiscal Year Research-status Report
酸化亜鉛・マンガン酸化物ヘテロ積層膜の作成および新規p-n接合概念の提案と検証
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24560026
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
遠藤 民生 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80115691)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マンガン系酸化物 / 酸化亜鉛 / 新規p-n接合 / 薄膜配向成長 / 面直面内配向 / ステップ・テラス成長 / I-V整流特性 / 温度依存性 |
Research Abstract |
イオンビームスパッタ法で各種基板上に六方晶系のZnO下層薄膜を堆積し、種々の堆積条件(基板温度や酸素分圧)で立方晶系のLSMO及びLBMO上層薄膜を成長した。これらの結晶性を面直・面内XRDで評価した。どれも高品質の結晶性が得られ、結晶配向性はバラエティーに富むが、堆積条件によって完全に制御でき、単相配向膜の成長に成功した。ZnO下層膜はMgOとサファイア基板上では面直(001) 配向し、LAOとSTO基板上では(110) 配向する。(001)ZnO上のLSMOは(001),(110)および(111)の3相が成長し、低基板温度では(001)、高基板温度では(110)相が優先単相成長する。酸素分圧を小さくすると(111)単相が得られる。成長中に酸素プラズマを供給すると、この配向相割合の温度依存性は良く似ているが、そのパターンが若干低温側にシフトし、低温成長が促進される。(110)ZnO上では(001)LSMOの配向成長が強く現れる。面内配向については、(001)LSMOは結晶基本軸がZnOのそれと平行にならず、(110)LSMOは平行に成長する。共に3つの等価配置(60度3回対称)を取る。(111)LSMOは3角対称なのでシングルドメインで成長する。これらの面内配向の実験結果を界面での格子マッチ(計算)によって説明を試みた。格子の歪みエネルギーだけでは説明できず、イオン性を取り入れたクーロンエネルギーによって説明できた。LBMOはLSMOと少し異なる配向をするが、格子マッチの違いに依ると推測できる。各基板上のZnOはステップ・テラス成長し、その上のLBMOも明瞭なステップ・テラス成長をした。LBMO(p型)/ZnO(n型)接合は優れた整流(I-V)特性を示し、それは温度によって大きく変調できることに成功した。すなわち、LBMOの巨大磁気抵抗効果を反映したp-n接合が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マンガン系酸化物(LSMO, LBMO)が有する大きな特徴である、巨大磁気抵抗効果を利用し、高品質薄膜成長が期待できるZnOと組み合わせることによって、新規p-n接合を作成することが本研究の目的である。すなわち、温度・磁場・光照射で大きく変調できるp-n接合である。安定した制御性の良い接合特性を得るためには、結晶薄膜の配向成長を先ず制御できなければならないが、これは、基板温度、酸素分圧、酸素分子かプラズマ供給の堆積条件によって解決できた。次に均一な空乏層を得るためには表面平滑で結晶性の優れた薄膜を作成する必要がある。これもZnOとLBMOのその場成長・イオンビームスパッタ法を開発することによって、綺麗なステップ・テラス成長を示すほどの高品質薄膜成長を実現できた。このような薄膜の面内配向も明らかにでき、その原因が格子マッチに依ることが解明できた。積層薄膜に電極を付け、接合のI-V特性を測定することによって、明瞭な整流特性を得たので、p-n接合が作成できた。整流比の大きさはある中間温度で極大を現わすので、明らかにLBMOの巨大磁気抵抗効果に基づく、絶縁体-金属転移の振る舞いを反映している。このように当初の目標のほぼ1/3ほどが達成できているので、おおむね順調に計画が進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今計画している新規p-n接合は4通りの組合わせがある。つまり、LSMO/ZnO, LBMO/ZnO, ZnO/LSMO, ZnO/LBMOで、前2者は基板に先にZnOを堆積し、後2者は基板にLSMOやLBMOを先に堆積する。更にそれぞれの組合わせにおいて、配向相の組合わせが6(2x3)通りあるので、薄膜成長を極めて能率的に行わなければならない。そのためには、配向成長のその場モニターを活用する必要がある。その目的のためにRHEEDモニター系をチェンバーに取付け、成長中に堆積条件をコントロールして、薄膜配向成長をその場制御する。 現状では電極付けが上手く出来てないために、I-V特性の測定が安定しない。蒸着法やスパッタ法などによって電極付けを改善しなければならない。 p-n接合の整流特性の温度依存性は得られたが、もっと詳細に、もっと低温まで測定しなければならない。クライオスタット系、特にヒーター部分の改良が必要である。 試料の温度をコントロールしながら磁場印加するためには、別のクライオスタット系を用いなければならない。そのための装置準備が必要になる。更に、このクライオスタット系を用いて光照射に依る変調実験も計画する。 FETタイプの積層接合試料を作成し、LSMO表面ドレイン電流をZnOゲート電圧でコントロールし、その磁場印加と光照射効果を確認したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
RHEED測定系の電源は初年度の予算で購入した。その他の部品を次年度予算で購入する予定であったが、予算不足が懸念される。そのため、以後の購入計画に変更が生じる可能性がある。場合によっては、RHEED部品の一部は別予算で調達しなければならない。
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Research Products
(49 results)