2013 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロエピタキシャル成長における歪みの原子ミキシングへの影響
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24560031
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
重田 諭吉 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 教授 (70106293)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸坂 亜希 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 助教 (20436166)
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Keywords | 薄膜成長 / インターミキシング / 歪み半導体 / 角度分解光電子分光 / 表面伝導バンド |
Research Abstract |
機能性材料の創成に重要な薄膜成長において、歪みの影響、特に、‘ヘテロエピタキシャル成長における原子の混合(Intermixing)に与える歪みの影響’について焦点を絞り明らかにすることを目的とした。 平成24年度は、Intermixing が起こると薄膜成長、特に、ナノスケールの薄膜形状に大きな変化が予想されることから、Ge(111)表面上に形成するSiエピタキシャル層の成長について詳細に観察し、Ge(111)面上のSi薄膜は、Si層の厚みが2層を超えるとGe基板からSi層にGe原子がIntermixingを起こす事を明らかとした。 平成25年度は、格子定数を制御したGeSi(111)バッファー層にSi層を成長させSi(111)√3×√3-Agの表面バンドの状態を測定することで、有効質量の延伸歪みに対する依存性を詳細に測定することを目標とした。しかし、バッファー層の表面平坦性に強い成膜条件およびアニーリング条件依存性があること、また、バッファー層がSiGe混合層ではIntermixingの有無を判定することが難しくなることが分かり、Si/Ge/Si(111)の3層構造の中間のGe層の厚みを変えることで、最上層のSi層の歪み量を変化させる実験を試みた。その結果、昨年度明らかにしたGe層が3層以上でintermixingが起こることと対応し、Ge層が2層までは平坦な表面を形成することが分かり、その上にさらに平坦なSi層を形成させられることが分った。また、その時のSi層の歪みは、約1.8%の延伸歪みとなり、√3×√3-Agの表面バンド有効質量は歪みに対して線型ではないことが分った。 この他、平成24年までの成果を国際会議で発表したが、上述の平成25年度の成果は、今後、国際会議で発表し、英文誌に投稿の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
格子定数を制御したGeSi(111)バッファー層にSi層を成長させSi(111)√3×√3-Agの表面バンドの状態を測定することで、有効質量の延伸歪みに対する依存性を詳細に測定することを目標としたが、歪み層の成長条件探査に手間取り、Si/Ge/Si(111)の3層構造の中間のGe層の厚みを変えることで、最上層のSi層の歪み量を変化させる実験を試みた。その結果Si層の延伸歪み1.8%の試料が測定できた。そして、√3×√3-Agの表面バンド有効質量は歪みに対して線型ではないと言う大きな結果が得られた。 これに加え、平坦な表面を持つGe歪み層を得るために、Si(111)面上にアモルファスGeを数十層成長させアニーリングによって、固相エピタキシ-させた表面では、アニーリング温度が400℃までは、インターミキシングが起こらないことを見出した。ただし、Ge原子の拡散は非常に活発で、大きな溝を形成することが分った。この溝の間隔は数百nm程度であり、かなり大きなテラスが形成される。また、アニーリング温度が600℃を超えるとIntermixingが始まりSiおよびGe原子の拡散がさらに活発化し、溝の幅が広がり台地状のSiGeの島(幅:数百nm)が形成することが分った。 また、表面の歪み量を定量的に測定する方法として、角度分解光電子分光測定のΓ点の位置から格子定数を求めていたが、光電子測定が高エネルギー加速器研究機構でないと測定できないため、実験室で行える反射高速電子回折から見積もる手法を考案した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、平成26年度の計画は、SiC(111)表面上のSiおよびGe薄膜の圧縮歪みに対して実験を進める予定であったが、SiGe(111)表面上の成膜に手間取り、測定を終了できなかった。しかし、平成25年度の研究成果として、√3×√3-Agの表面バンド有効質量は歪みに対して線型ではないことを示唆するが得られた。そこで、平成26年度も、25年度に引き続き、詳細な関係を解明するため SiGe系多層膜による歪みの制御を行い、光電子分光測定を進める。ただし、高エネルギー加速器研究機構のBL-18Aが閉鎖されたため、多層膜の成膜時間が十分に取れるビームラインを新たに探す必要がある。現在、立命館大学のSRセンターの共同利用が出来るよう副センター長の難波先生と話を進めている。 また、表面歪み量の測定方として、反射高速電子回折の菊池線を利用する手法を考案したので、実際に、実験的にどの程度の歪みを測定できるかの検証を行い、我々の多層膜系に応用したい。 これと平行し、Si(111)表面上のGe層の固相エピタキシ-の実験で、あるアニーリング温度を境にIntermixing が起こることを示唆する結果が得られたので、この臨界温度について実験を進め、Intermixing と原子拡散に関して、実験を進める予定である。 今後の研究費としては、SiやGeの材料費などの消耗品費および立命館大学のSRセンターを利用して実験を行うための旅費、そして、成果報告を行うための出張旅費が主な経費と成る。 また、この課題で得られる成果は、新機能材料の設計や創成に重要な情報と考えられるので、成果報告を日本物理学会や応用物理学会および国際会議に発表する予定である。これに加え、論文の投稿・掲載も計画しており、世界に向けて成果発表を行うための費用とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、高エネルギー加速研究機構への共同実験のための旅費および謝金に準備していたが、装置の不具合のため、ビームタイム(2週間)が一回分キャンセルと成った。また、学会出張旅費を学内の旅費で賄ったため、予算が余った結果と成ってしまった。 今年度は、立命館のビームラインを利用するため、共同実験のための旅費が多くかかることが予想される。また、研究成果がまとまり、その成果発表のための学会出張旅費も増加する予定である。
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