2012 Fiscal Year Research-status Report
水素ラジカルと高分子固体との表面反応にアレニウス則を適用した化学反応機構解明
Project/Area Number |
24560032
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
堀邊 英夫 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (00372243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 昭彦 金沢工業大学, 基礎教育部, 講師 (40597689)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 水素ラジカル / 加熱触媒体 / ポリマー膜 |
Research Abstract |
平成24年度は,タングテンによる加熱触媒体(Hot-wire法)により生成した強い還元力を有する水素ラジカルを用いポリマー薄膜の分解速度を1次評価として行った.具体的には,水素ラジカル照射時間,レジストの初期膜厚,ポリマーの化学構造(ベンゼン環の有無),ポリマーの分子量等をパラメータにポリマーの除去速度を検討した.1回の水素ラジカル照射時間が長時間になるに伴い,加熱触媒体からの輻射熱により基板温度が上昇し水素ラジカルとポリマーとの反応性が向上するため,ポリマーの除去速度は速くなった.また,水素ラジカル照射初期では,膜中の残存溶媒の蒸発による膜減りが起こり,ポリマーの除去速度が速くなることが判明した.スピンコート時の回転数を変えポリマー膜の初期膜厚を変えた場合,膜厚が厚いほど,膜中の残存溶媒が多いため水素ラジカルによる除去速度が速くなった.一方,それ以降の水素ラジカル照射では残存溶媒の影響がなくなるため同じ除去速度になることがわかった.以上より,水素ラジカルとポリマーとの反応性を検討する際には,水素ラジカル照射時間を固定し,かつ残存溶媒の影響の無い時間域のデータを用いる必要があることがわかった.また,ポリマーの化学構造と除去速度との関係においては,ベンゼン環を有するフェノール樹脂,ポリスチレン,ポリビニルフェノール,ポリメチルスチレンは,ベンゼン環の共鳴安定化により除去速度が遅くなることが判明した.また,ポリマーの分子量が異なる場合でも除去速度は同じであることが明らかになった.これは,水素ラジカルのアタックサイトとなる膜表面のモノマーユニット数は分子量により変化しないためであると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終的に,「水素ラジカルと高分子固体との表面反応にアレニウス則を適用した化学反応機構解明」にあたり,今年度の評価で水素ラジカルとポリマー薄膜に関して,水素ラジカル照射時間,ポリマーの初期膜厚,ポリマーの分子量とポリマー除去速度との関係が明確になった。すなわち,水素ラジカルとポリマー薄膜との分解除去反応の1次評価が終了したと言える.これにより次のステップであるポリマーの化学構造を変化させ,かつ反応温度を変化させることにより,水素ラジカルと種々の化学構造の高分子固体との除去速度を求めそれぞれアレニウス則の関係が得られ活性化エネルギーが算出可能となり,ひいては化学反応機構を解明することになる.
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Strategy for Future Research Activity |
近年,光・電子デバイスの多様化,高精細化の進展に伴い,レジストの露光波長の短波長化が求められている.実際,レジストの露光光源は,波長436/365nm(g/i線)→波長248nm(KrFエキシマレーザー)→波長193nm(ArFエキシマレーザー)と短波長化している.これに伴い,レジストのベースポリマーも,ノボラック樹脂(g/i線用)→ポリビニルフェノール(KrF用)→ポリメチルメタクリレート(PMMA,ArF用)へと変遷している.水素ラジカルによるレジスト除去技術の実用性を明らかにするためには,レジストの化学構造と除去性との関係の解明が不可欠といえる.しかしながら,ArF用レジストのベースポリマーであるPMMAを基本構造としたポリマー(“PMMA系ポリマー”と呼称)と水素ラジカルとの反応性に関する報告例はない.これは,現在の半導体製造プロセスで用いられるレジストの主流がノボラック系レジストであることが大きな要因と考えられる.将来的に配線サイズの更なる微細化が進めば,PMMAをベースとしたArF用レジストによるプロセスが主流となる.水素ラジカル照射による化学構造が異なるPMMA系ポリマー薄膜の除去速度(反応速度)を評価して,ポリマーの化学構造と水素ラジカルによるポリマー除去性との関係を明らかにする. 具体的に評価するPMMA系ポリマーは,以下のものである。PMMAのα位の側鎖は2つあるが,1つを側鎖R1,もう1つを側鎖R2とする。1)側鎖R1が水素原子である主鎖架橋型ポリマー2)側鎖R1がメチル基である主鎖崩壊型ポリマー3)側鎖R2にベンゼン環を有する主鎖崩壊型ポリマー4)側鎖R2にベンゼン環を持たない主鎖崩壊型ポリマー また,側鎖R1が水素原子である主鎖架橋型ポリマーにおいて,側鎖R2の嵩高さの影響.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在雇用しているポスドクの方の人件費の一部として使用する.ポスドクの方には,本テーマの「水素ラジカルと高分子固体との表面反応にアレニウス則を適用した化学反応機構解明」の研究も行ってもらっている.
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Research Products
(3 results)