2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
峰本 紳一郎 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90323493)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 非線形光学 / 分子配列 / 偏光分光 |
Research Abstract |
2012 年度は、本研究計画全体において中核的な装置となる偏光分解干渉計を設計・開発し、その性能評価を行った。偏光分解干渉法は、信号光(配列した分子から発生する第3 高調波)と適切な時間だけ遅延させた参照光(信号光と同程度のバンド幅が必要)を同軸上にして分光器に入射し、スペクトル上に現れる干渉信号から信号光の位相を取り出す方法である。ここで、分光器の直前に偏光ビームスプリッターを設置して鉛直あるいは水平成分のみを観測し、各成分間の位相を比較すれば時間に依存した偏光状態を評価できる。参照光としては、β-BaB2O4の結晶2枚を用いた従来型の手法で第3高調波を発生させた。結晶の角度を調整し、スペクトルが広がるように位相整合を最適化したところ、信号光スペクトルの全領域で干渉信号を見ることに成功した。 また、予備実験として、非断熱的に配列した窒素分子を媒質に用い、発生した第3高調波の偏光状態を調べた。基本波として、水平方向に(ほぼ)直線偏光したフェムト秒パルスを用い、窒素分子を水平方向に配列させて観測したところ、水平、鉛直成分ともに有意な干渉信号を得ることができた。水平成分は信号光の強度が強いため、干渉信号自体をスペクトル上で確認するのは難しいが、ノイズやDC 成分を除去する処理により、再現性良く位相を抽出することに成功した。また、鉛直成分は、基本波にわずかに残っている楕円成分が第3高調波発生時に増幅されて観測されるものであり、極めて強度が弱い信号であるが、十分な精度で位相を抽出できることが確認できた。これらの位相情報から3 倍波の時間波形、および時間に依存した偏光状態を再現したところ、楕円率は予測通りパルス全体に渡ってほぼ0であり、直線偏光に近いことが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、本研究計画全体の骨格をなす偏光分解型干渉計を開発し、アルゴンなどの希ガス原子を試料として性能評価する計画であった。消耗品として購入したミラー、ビームスプリッター、波長変換素子等により干渉計を開発し、光学素子の固定法を工夫した結果、高分解能マルチチャンネル分光器(設備備品として本年度購入)にてスペクトルを観測したところ、上述したように十分な精度で位相を抽出することに成功している。初年度の目標は十分達成している。 さらに、次年度以降に計画していた、配列した分子から発生する第3高調波に対しても偏光特性の評価に成功している。期待通り、分子配列に必要十分な強度のポンプ光によって位相測定の結果に影響が出ないことを確認できており、一部では当初の計画を上回っていると言える。 一方、偏光分解干渉計の開発に関してはいくつかの課題が残った。単一試料の観測のように短時間(数秒程度)ではπ/10程度の十分な精度で位相の測定に成功しているが、長い周期(5分程度以上)では位相の測定にπ/2 程度のドリフトが見られ、分子配列の依存性や圧力依存性などを定量的に評価するまでにはいたっていない。光学部品の固定法をさらに改良すれば、長時間の位相ゆらぎを現在の1/5程度に抑えられる。また、偏光分解干渉計部を金属箱などで覆って温度安定化を行うことで、空気ゆらぎに起因する位相ドリフトを抑えられると期待できる。今後、これらの改良を早急に進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はまず、課題として残っている干渉計の位相ドリフトを改善することに取り組む。光学部品の固定法を改良し、より振動の影響を少なくするほか、干渉計部の温度を制御して安定化することにより信号光と参照光間の遅延時間のゆらぎを少なくする。このことによって、位相ゆらぎを1時間以上に渡ってπ/10以下にすることを目指す。 干渉計の特性を十分評価した後、配列した分子を試料とし、発生する第3高調波の偏光評価を行う。まず、Type I 位相整合、すなわち、プローブ光の偏光方向を分子軸(ポンプ光の偏光方向)と平行、および垂直にして、発生する第3 高調波の偏光状態を調べる。試料分子の圧力依存性から位相不整合の大きさを、また、プローブ光の強度依存性から非線形感受率を推定する。試料としては窒素分子および二酸化炭素分子を取り上げ、電子状態やその配列依存性について考察する。 また、プローブ光の偏光を分子軸から傾け、Type II位相整合についても観測する。分子軸の向きに対するプローブ光の偏光の角度を変えた時に信号光の偏光状態がどのように変化するかを調べる。試料の圧力依存性やプローブ光の強度依存性など多くの側面から依存性を観測する。さらに、楕円率を変え、空間成分間の基本波の位相を変えたことによる効果を調べ、非線形感受率や屈折率の虚部についても考察する。同時に第3高調波の発生及び伝搬を再現するようなシミュレーションコードの開発にも着手し、Type I位相整合とType II位相整合で得られた結果の妥当性について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「研究の推進方策」で述べたように、干渉計の位相ドリフトを改善するため、ホルダーやベースの光学部品を消耗品として購入する。 また、プローブ光の偏光を変えながら測定するためにも、多くの光学部品を購入する。さらに、試料を変えて測定するために、いくつかの真空部品が必要である。
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