2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24560048
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡本 卓 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (40204036)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ランダムレーザー / 超拡散 / 多重散乱 / モンテカルロシミュレーション / 時間領域差分法 / 光硬化性樹脂 / スペックル |
Research Abstract |
微粒子を分散させた媒質中での光子の拡散状態を解析するモンテカルロ (MC) プログラムを作成し、光子の超拡散状態を実現するための媒質構造を探索した。微粒子間の距離分布を変化させるため、多分散の隙間用微粒子をランダムに配置した。この隙間用微粒子の平均粒径・粒径分布・体積濃度や散乱用微粒子の粒径・体積濃度を変化させ、光子が超拡散を起こす構造条件を求めた。その結果、これらのパラメータ値を工夫することで、光子の自由行程の有限範囲では、超拡散状態を実現しうることが明らかとなった。 さらに、時間領域差分 (FDTD) 法とレート方程式を組み合わせた光増幅シミュレーターを構築し、隙間用微粒子をランダムに配置した媒質でシミュレーションを行った。現在のところ、計算能力の限界からくる媒質領域の狭さにより超拡散状態は実現できていない。ただし、隙間用微粒子径を変えると発光スペクトルの特性も変化することから、光子の拡散状態がレーザー発光に影響を及ぼすことは確認できた。 同時並行して実験的検証も行った。光硬化性樹脂にレーザー色素・酸化チタン微粒子・隙間用微粒子(光硬化性樹脂で作製)を混合し、光増幅ランダム媒質を作製した。こちらも超拡散状態には至っていないと思われるが、微粒子が一様に分散した通常の媒質に比べて高いスペクトルピークを持つ発光が観測された。モード解析の結果、各発光モードで発振スペクトルの選択性がより高まっていることが確認された。この結果より、微粒子分散の不均一性がランダムレーザーの波長選択性を高め、発光スペクトルのピーク強度を高める結果となることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モンテカルロ (MC) シミュレーションでは、目標であった、ある程度超拡散に近い媒質を作り出すことに成功した。しかし、通常拡散とは明らかに異なる超拡散を実現するためには、通常拡散に比べて格段に大きな媒質体積を必要とする。時間領域差分 (FDTD) 法でも同様の壁が存在するが、これらは計算機の能力次第であるので改善は可能である。実験においては、超拡散状態でない場合でも通常とは異なる波長選択性の高い発光が確認されたことが大きな成果である。実験では光子の超拡散の実現は可能と考えられるが、そのための隙間用微粒子の選定が今後の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、微粒子粉体を用いた光子超拡散構造のモンテカルロ (MC) シミュレーションおよび時間領域差分 (FDTD) 法によるレーザー発振シミュレーションを行う。課題である計算能力の向上のため、GPUを用いた計算手法や並列計算も検討の対象とする。MCシミュレーションに関しては、光増幅を考慮に入れた計算を行い、強い光増幅が得られる媒質構造を探る。このシミュレーションでは非共鳴型のランダムレーザー発光のみが解析可能である。共鳴型ランダムレーザー発光については、干渉現象も組み入れる必要があるため、FDTD 法を用いて計算する。 さらに、微粒子を用いたランダムレーザーの作製および発光実験も引き続き行う。今までは粒度分布が不明な隙間用微粒子を用いてきたが、今後はより定量的な評価を行う。すなわち、粒子径が均一な(単分散)微粒子を複数種類用意し、それらの配分および濃度を変えることで、発光スペクトルのピーク強度やピーク波長がどのように変化するかを調べる。特にランダムレーザーでは発光スペクトルの制御性が最近の課題となっているため、隙間用微粒子によって発光波長が制御できるかどうかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度に予定していた国際会議への出席をH25年度に繰り延べた。5月にドイツで開催される国際会議CLEO Europeに出席し研究発表する際の旅費として使用する。
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