2012 Fiscal Year Research-status Report
負の屈折率メタマテリアルによるコヒーレント放射光源研究開発
Project/Area Number |
24560057
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Institute for Laser Technology |
Principal Investigator |
李 大治 公益財団法人レーザー技術総合研究所, レーザーエネルギー研究チーム, 研究員 (00373209)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メタマテリアル / 負の屈折率 / 電子ビーム放射 / 表面電磁モード |
Research Abstract |
有限厚さのメタマテリアル平板の表面に存在する電磁モードについて理論解析を行った。それに基づいて反射の境界条件を改善するために、平板底部に金属板を置く発想を具体的に解析した。正の屈折率と負の屈折率をそれぞれ設定して数値計算の手法で導出された分散方程式を解く、電磁モード分散関係を明らかにした。メタマテリアル平板の底部に金属板を置くと、表面波が存在するための誘電率と透磁率に対する制限を緩めることが判明された。正の屈折率メタマテリアルにより、負の屈折率の方が電磁モードが多くなり、それを活用すれば、放射源の放射帯域を広げる可能性があると分かった。理論解析を評価するために、particle-in-cellシミュレーションを実行し、理論解析の結果はシミュレーションの結果に一致すると分かった。更に、負の屈折率平板によるチェレンコフ放射の特徴、物理メカニズム、放射の条件などを明らかにした。メタマテリアルによるチェレンコフ型放射に対する理解を深め、グレーティングによる放射の研究に繋げることになる。 グレーティングの表面波と電子ビームとの相互作用については、従来の理論解析は実験とシミュレーションの結果に一致しないので、問題になった。それを解決するために、従来の理論と異なった、物理の本質を正しく反映した厳密な理論を構築した。particle-in-cellシミュレーションの手法で新理論を評価した。この研究ではグレーティングをベースにして放射理論を築くことを目的にしているが、その理論は、例えば、進行波管、後進波管、メタマテリアル新電磁材料などのあらゆる周期構造体と電子ビームとの相互作用に応用できる。今後は、新理論を用いてメタマテリアルによる電子ビームからの放射を解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画の通り、メタマテリアル平板の表面波の特徴、表面波の位相速度、群速度、エネルギー流れ速度などの伝搬特性を理論解析の手法で明らかにした。メタマテリアル平板の底部に金属板を置いて境界条件を改善する考えで、メタマテリアルを透過した電磁波は金属板で反射し、その反射された電磁波を利用することにより、表面波が存在するための誘電率と透磁率に対する制限を緩めることが判明された。更に、理論解析とparticle-in-cellシミュレーションを併用して調べ、表面波の存在には、誘電率と透磁率に制限があり、その物理の詳細を明らかにした。また、屈折率が負の場合は、電磁波の群速度とエネルギー速度に特異性が現れるので、その性質の屈折率依存性を明らかにした。これらの結果より、メタマテリアルにおける電磁波の伝搬特性とその特異な電磁的性質が理解された。その上、電子ビームと周期構造体との相互作用に於ける、従来の解析的理論は実験結果や電磁界ソフトを用いたシミュレーション結果を説明できないことが明らかとなった。それら種々の理論の中に欠陥やミスなどを見出し、正しい結果が得られない理由を指摘した。メタマテリアルによるコヒーレント放射源を開発するには、電子ビームと電磁波との相互作用を効率よく生じさせる必要があり、そのためには、その放射機構を正しく物理的に表現し、厳密で正確な理論を構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は平板状のメタマテリアルを対象とするが、25年度以降は回折格子状のメタマテリアルを対象として解析を行う。コヒーレントスミス・パーセル放射には、グレーティング表面を伝搬する表面電磁波が重要な役割を果たす。電子ビームは、この表面波との相互作用で集群化することにより、コヒーレント放射光が放出される。屈折率が負のメタマテリアルからなるグレーティングについては、表面波の存在条件とその電磁的性質、及びその物理メカニズムが不明である。従って理論解析とparticle-in-cellシミュレーションにより、メタマテリアル回折格子での表面電磁波の存在条件を調べ、誘電率と透磁率への制限、更にその物理の詳細を明らかにする。その上で、電磁波の群速度とエネルギー速度の特異性、およびその分散関係と屈折率との関係を解明する。その結果により、メタマテリアルグレーティングにおける電磁波の伝搬特性とその特異な電磁的性質が理解される。メタマテリアル回折格子による、スミス・パーセル放射並びにコヒーレント放射の物理の基礎を明らかにする。正の屈折率の回折格子の場合と比較しながら、電子ビームからの放射電磁波の特徴、即ち、放射強度と放射角度の関係、電子ビームと電磁波との相互作用のメカニズム、コヒーレント放射の特性などを把握する。そして、負の屈折率、正の屈折率、金属或いは完全導体の各媒質について、電子ビームからの電磁波放射に対する最適な誘電率、透磁率を比較して探求する。その上で、誘電率と透磁率の制御方法を研究し、効率の良いメタマテリアルの作り方を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(6 results)