2012 Fiscal Year Research-status Report
プラズモニックMIMバンドエンハンサーを有するツイン導波路型光ナノプローブの検討
Project/Area Number |
24560060
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
押鐘 寧 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40263206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 元博 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40164256)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 金属薄膜 / 誘電体薄膜 / 金属/誘電体/金属構造 / 表面プラズモン共鳴 / 真空蒸着 / 銀 / 分光反射率 / フッ化マグネシウム |
Research Abstract |
研究課題において重要な成膜プロセスの開発に従事した.まず,研究に必要で十分に性能を満たす有機蒸着装置を購入した.このため,早速にMIM(金属/誘電体/金属)構造の多層成膜プロセスと成膜特性の検討に着手した.当初,プラズモン共鳴を誘発する金属層(M層)として有望視している銀薄膜の成膜状態が思わしくなく,電磁場シミュレーションの予測に対応するプラズモン共鳴現象を誘起することができなかった.しかし,(1)水晶振動子式膜厚計による成膜プロセス中のリアルタイムな膜厚モニタリングシステムの導入,(2)蒸着速度を一般的な速度の100倍程度である10nm/s程度まであげた試作実験と膜質の走査電子顕微鏡観察・評価,(3)膜厚と蒸着速度のパソコン制御による自動化とそれに伴う高真空下(大気開放無し)での多層成膜プロセスの実現,を実施することにより,銀薄膜については残留ガスによる酸化を最小限に抑えた,平坦度および結晶性のより多結晶薄膜を作成することができた.また誘電体薄膜(I層)については,蒸着が容易とされるフッ化カルシウムを材料として試作を始めたが,試行の結果,充填度の低い膜(密度の低い膜)が形成されることが分かり,膜厚や光学特性の制御が非常に困難であったため,研究進行速度を下げないために,材料をフッ化マグネシウムへ変更した.この結果,充填度がほぼ100%で平坦度や光学特性も良好な誘電体層としての成膜を実現できた.以上より,膜質,膜厚ともに良好なMIM構造の試作に成功し,分光反射率特性も,電磁場シミュレーション結果に良く対応する結果が得られるようになった.そこでI層の厚みを変えた試作実験を行ない,反射率カーブにおける吸収dipの波長シフトを再現性良く観測することができ,これに対応したI層内の光の溜め込みについて,最表層のM層にFIB加工にて200nm四方の開孔を設け,その発光色より確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の「エンハンサー」として機能すべきMIM積層構造の良好で再現性の高い成膜プロセスを確立することができ,研究は概ね順調に進展しているといえる.研究目的に合致した成膜結果であることは,分光反射率特性に現れる吸収dipの深さ,幅で評価することができる.吸収dipの深さ(dipの底)は,MIM構造の基板であるガラス板の端面反射分だけ底上げされた結果となっており,膜質,膜構造による劣化は認められていない.また吸収dipの幅は金属膜である銀薄膜(M層)の膜質,膜厚を反映しているが,これも電磁場シミュレーション結果を良く反映した半値幅(8nm程度)を示しており,問題ない.
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Strategy for Future Research Activity |
MIM積層構造を良好な特性で作製できるようになったため,今後はこの構造を,先鋭化した光ファイバ端面に構築し,同様な吸収dip特性が得られるかを確認してゆく.ファイバの加工は溶液エッチング処理と集束イオンビーム加工とによる.MIM構造の構築後,光ファイバ内へ白色光を入射し,MIM構造による反射光のスペクトルを観察して,ガラス基板上と同じ特性が得られるかを確認してゆく.そして,最先端にあたる金属層に集束イオンビーム加工装置を用いて,サブミクロンの開孔構造を作製し,I層に溜め込まれている光波を効率よく取り出す実験に移行してゆく.ここでは,開孔形状の創成,電磁場シミュレーションによる設計,予測に基づいて加工実験を進める予定である.開孔から発せられる微弱光の診断には光学顕微鏡と高感度冷却CCDとを組み合わせたシステムを利用し,絶対光量や偏光特性などを詳細に検討する.試作するMIMプローブの評価装置についても検討を始めてゆく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(7 results)