2013 Fiscal Year Research-status Report
多重極ソースモデルを用いた磁場源推定逆問題の直接解法と応用
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24560072
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奈良 高明 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (80353423)
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Keywords | 逆問題 / 磁場源推定 / MEG / RFID / 漏洩磁束探傷 / 直接解法 |
Research Abstract |
本研究は,磁場源を多重極で表現し,その位置,モーメントを観測データから直接推定する解法を導出し,そのための適切な計測構造を開発することを目的としている. 本年度は,第一に,昨年度提案した双極子・四重極子ソースモデルを用いた脳磁場逆問題の直接解法の検証として,四重極子ファントムデータの解析を行った.双極子2個を仮定する従来法では安定な定位ができないが,提案法では安定に四重極位置を推定できることを示した.また補足運動野や視覚野の鳥距溝など,接近した逆向き双極子が生じるうる部位に電流源を仮定したシミュレーションにより,提案手法の有効性を確認した. 第二に,磁気双極子ソースを囲まない部分境界上の観測データを用いた直接定位法の基礎となるオイラー方程式に関して,磁場の空間微分から形成される係数行列が特異となるのは,観測点から見た双極子位置とモーメントが直交する時に限ることを明らかにした上で,その場合でもMoore-Penroseの一般化逆行列を用いれば双極子位置が一意に再構成できることを示した. 第三に,RFIDタグの位置推定の応用として,2m四方の面の法線方向磁束および面内方向磁束を計測するコイルを18個組み合わせた部屋型センサを開発し,三次元領域内でも磁気双極子ソースの位置を代数的に再構成可能であることを示した.また,作業用机上程度の三次元領域内でのRFIDタグ定位のため,6個の平板状センサで3軸の磁気双極子ソース位置を直接推定する手法も開発した. 第四に,磁気双極子の直接定位法を漏洩磁束探傷に適用し,配管中の漏洩磁束の1次フーリエ係数の振幅と位相から,配管上の傷位置が推定できることを示した.またフーリエ係数を直接計測するためのセンサとして,円周上にパーマロイを配置し,巻き数で正弦,余弦の荷重を表現するコイルを作成し,探傷可能なことを実験的に示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,以下の4点を目的としている:1) 複数領域に存在する電流ソースを多重極モデルで表現し,領域中心位置,サイズ,および領域数を,観測磁場データから直接推定する逆問題手法を構築する,2) 上記1)の手法を脳磁場逆問題に適用し,活動源中心およびサイズをパラメトリックに推定する手法を開発する,3) 電流ソースを囲まない部分境界上の観測データを用いた直接解法を構築する,4) 上記3)で必要な磁場の面/線積分量を直接計測するセンサを開発し,磁気双極子のリアルタイム定位システムを構築する. 昨年までに開発した複数多重極子の直接推定法を今年度,脳磁場逆問題に適用し,ファントムデータで実証したことで,交付申請書に記載した4つの目的のうち1)と2)の前半が達成されたといえる.ソース領域サイズ推定法の確立はH26年度の課題である. 目的3)の電流ソースを囲まない観測データを用いた直接解法に関しては,双極子が平面上に存在する場合,もしくは,双極子を囲まない領域の境界全体で磁場を計測する場合に関する理論を導くことができ,それを応用することで,目的4)の荷重積分センサの開発,およびRFIDタグ定位,漏洩磁束探傷への応用が実現できた.特にRFIDタグの位置推定に関しては,ソースを3軸の磁気双極子とすることで,センサは四角形境界上のコイルのみを用いる手法が開発できた.線上あるいは面上の観測領域を仮定した場合のより一般的な直接解法の開発は,H26年度の課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
部分境界観測データを用いた直接解法を,より一般の問題設定で導出する.具体的には,今年度性質を明らかにしたオイラー方程式から出発し,観測領域が線上の場合,あるいは面的な領域である場合に,荷重積分により磁場源位置に関する線形方程式を導出する.オイラー方程式に,磁場のもつ性質を制約条件として適切に組み合わせることが鍵となると考えられる.それぞれの観測領域に対し,適切なセンサ形状,荷重選定方法について検討する. また,昨年度来,磁気双極子の位置推定として検討してきた雪崩遭難者用ビーコンに関して,さらに,瓦礫埋没者探索への応用展開を計る.まず,上記の荷重積分法を実現するために円周アレイセンサを開発し直接定位を行う.また,瓦礫埋没者発見のため,環境中にある磁性体の影響を理論解析,シミュレーション,実験により検証する.円周アレイセンサとともに,磁場ベクトルを計測する3個の局部的センサも開発し,観測者が探索のため動き回る状況下において,ビーコン位置を直接,高速かつ正確に推定するアルゴリズムを導出し,実験的検証を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度の研究過程で磁気双極子定位の新たな応用として雪崩遭難者発見用ビーコンの直接定位という着想を得た.数値計算用にH24年度に計上していた備品・消耗品費の一部をH25年度に実験部品として使用した.H25年度後半に,同一手法を瓦礫中要救助者探索へ適用する予備実験を行い,見通しが立ったため,H26年度に引き続き展開すべく,次年度使用額を生じさせている. 瓦礫中要求助者探索のための実験部品購入に使用する.またH26は最終年度のため,成果報告を積極的に行う.H25年度から指導していた大学院生1名に加え,H26年度に新たに指導を始めた2名の大学院生を研究協力者とし,論文共著者として旅費を支出する.具体的には北海道大学で開催されるSICE Annual Conference 2名分,および佐賀大学で開催されるセンシングフォーラム4名分である.
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