2013 Fiscal Year Research-status Report
単結晶内部の延性損傷進展挙動に関する放射光白色X線による研究
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24560083
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
柴野 純一 北見工業大学, 工学部, 教授 (60206141)
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Keywords | 単結晶 / 延性損傷 / 転位密度 / プロファイル解析 / 装置関数 / 白色X線 / 放射光 |
Research Abstract |
結晶方位とき裂進展の関係を明らかにするためには単結晶レベルでの延性損傷進展に関する基礎的検証が有効である。平成24年度には大型放射光施設SPring-8に設置された共用ビームラインBL28B2において、引張負荷下で単一すべり系が優先的に活動するアルミニウム単結晶試験片の延性損傷進展と結晶方位の関係を明らかにすることができた。平成25年度は、111すべり面が負荷方向に対し直交あるいは平行となるアルミニウム単結晶試験片を作製して引張試験を行い、き裂の進展挙動を検証した。試験片には平行部中央に片側ノッチ、両側ノッチをそれぞれ施した。111すべり面が負荷方向に平行な片側ノッチ試験片では、ノッチの部分から荷重方向に対してV字方向にすべり帯が発生し、せん断帯も同じ方向に進展することが確認できた。両側ノッチ試験片では、両側のノッチ部分からすべり帯が発生し、せん断帯がひし形状に全体に広がっていくことが確認できた。そして、引張方向に対して垂直にき裂が発生し進展した。111すべり面が負荷方向に直交する片側ノッチ試験片では、すべり帯がノッチ部ではなくチャック部に発生した。すべり面が直交している方が平行の時と比べ二次すべりの挙動が制限され、チャック部分の応力集中が優先したと考えられる。両側ノッチ試験片では、両側のノッチ部分から荷重方向に対して45°の方向にすべり帯が発生し、せん断帯も同方向へ進展した。アルミニウム単結晶の延性破壊の進展はすべり帯の発生、き裂の進展方向など結晶方位によって違いが顕著に見られた。一連の実験により、結晶方位と延性破壊の進展に依存性があることを確認できた。しかし、今年度は放射光白色X線を用いた実験課題を申請したが採択されなかったため転位密度の変化などは確認できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白色X線を用いた単結晶回折X線プロファイル延性損傷解析システムの構築を目的として、平成25年度までに0次元検出器として半導体検出器SSDを利用した塑性域における単結晶透過回折白色X線の測定およびプロファイル解析についてはほぼ確立することができた。特に、単結晶のプロファイル解析で問題となる装置関数の除去について、放射光白色X線を用いる場合の新しい手法を提案した。また、2次元検出器のフラットパネルセンサが転位セルの回転の追跡には極めて有効であり、測定ごとに結晶方位をフラットパネルセンサで定め回折X線プロファイルをSSDで測定することで精度の安定した延性損傷解析が可能となった。結晶方位についてはこれまでに、引張負荷下で面内4すべり系と単一すべり系が優先的に活動する試験片について測定ができており、平成25年度までの目標としてはほぼ達成できている。平成25年度では111すべり面が負荷方向に対し直交あるいは平行となるアルミニウム単結晶試験片を作製して引張試験を行いき裂の進展挙動を観察したが、放射光白色X線を用いた転位密度評価については実験課題が採択されなかったため実施できていない。この実験に関しては次年度に再度申請し行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度及び25年度の成果を基に、平成26年度は引張負荷による塑性変形に伴うアルミニウム単結晶内部の延性損傷評価を2次元検出器と0次元検出器を併用し以下の手順で行う。 1)放射光白色X線による実験を予定して、[001]と[010]結晶方位が負荷方向に対してそれぞれ45°の角度を有するアルミニウム単結晶試験片及び111すべり面が負荷方向に対し直交あるいは平行となるアルミニウム単結晶試験片を新たに作製する。2)引張試験片平行部の片側(or両側)に放電加工による微小ノッチを導入する。3)塑性域の各段階で負荷を停止し、延性損傷の起点になると思われるノッチ近傍に放射光白色X線を照射、透過回折X線の測定を繰り返す。その際、2次元検出器を用いて転位セルの回転を追跡する。4)開発した解析手法を用いて、転位セルの生成、結晶方位の回転、転位密度、不均一ひずみなどを評価する。 研究成果をまとめ、1)放射光白色X線を用いた単結晶延性損傷解析システムの提案、2)白色X線による単結晶内部の延性損傷評価手法の提案、3)負荷方向及び結晶方位が異なる単結晶の延性損傷進展挙動の解明、に関する成果の公表を行い、結晶内部の延性損傷進展挙動に関する放射光白色X線による実験・解析手法の確立を図る。
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Research Products
(7 results)