2013 Fiscal Year Research-status Report
バクテリアセルロースを用いたナノC/Cコンポジットの摩擦・摩耗特性
Project/Area Number |
24560086
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
小沢 喜仁 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (00160862)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 嗣 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00154261)
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Keywords | 材料設計 / プロセス / 物性・評価 / 摩擦摩耗特性 |
Research Abstract |
本研究においては,開発された天然繊維バクテリアセルロースの三次元ナノ構造を利用した新規摺動材であるC/C コンポジットについて,とくに摩擦摩耗特性をはじめとする材料特性を実験的に明らかにしながら,材料の添加物,炭化・焼結温度など最適な材料成型を明らかにした. (1)FRP 材料の炭化・焼結工程の検討;焼成温度を700~1100℃までの範囲で,昇温速度も変化させてC/Cコンポジットを成型して,摩擦・摩耗特性に及ぼす成形条件の影響を詳細に調べた.曲げ試験,ビッカース硬さ試験による評価を行い,焼結温度が上昇するにつれて硬さ値が上昇し,比摩耗量は減少して摩耗特性が向上すること,ホルムの関係式が成立することが明らかとなった.動摩擦係数においては,焼結温度及び昇温速度による影響は小さいことがわかった.摩耗粉の形成についてBCファイバーブリッジングの様子を観察して力学的モデル作成のための基礎的データを得た. (2)第3成分としての添加剤の検討;イネ科の植物である竹粉は,ケイ素が豊富であるため焼結時にSiC を形成して材料の硬度が向上するため,さらなる摩耗特性の向上が期待される.BCの前処理についても考慮して第3成分の添加によるハイブリッド化を検討し,動摩擦係数が低い材料SiC-C/Cコンポジットの開発に成功した.また,焼結温度1500℃における成型についても予備実験を行い,基礎的データを得た. (3)特性評価のための弾性数理解析;解析においては,多孔質体の空孔と強化粒子について関して,周期的領域においてランダム分布とし,また,それらの大きさは擬似的なポアソン分布としてモデル化を行った.多孔質性複合材料の周期モデルについて,温度と変位場に関して,漸近展開を適用して均質化理論に基づいた微視的擾乱温度と変位に関する定式化を示し,多孔質性複合材料の有効熱伝導率や熱弾性特性を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規摺動材C/Cコンポジットがもつ優れた摩擦摩耗特性に及ぼす,FRP材料の炭化・焼結工程の確立,第3成分としての添加剤の可能性,BC 炭素繊維のナノファイバー・ブリッジング効果について検討した.当該年度に実施を計画した項目において一定の成果を得ており,ほぼ順調に推移していると考えている. FRP 材料の炭化・焼結工程の詳細な検討については,BC-FRP プリプレグのプレス成型時のガス抜き工程と真空装置を用いた脱気などさらなる性能向上を試み,摩擦・摩耗特性に及ぼす成形条件の影響を詳細に調べた.この温度範囲での安定な成型手法を確立するとともに,摩耗粉の形成についてSEM観察によりBCファイバーブリッジングの様子を観察してモデリングのための基礎的データを得ている. 第3成分としての添加剤の影響については,木質セルロースは構造由来の微細な孔や特有の成分元素が存在することから,BC繊維のナノ構造との相互作用による摩擦性能の向上が期待できる.イネ科植物である竹を焼成した竹炭はケイ素が豊富であるため焼結時にSiC を形成し硬度が向上する.これを微細化して,ナノ構造を有するBC繊維網との混合を試み,ハイブリッド化したSiC-C/Cコンポジットの開発に成功し,動摩擦係数が著しく低いことを明らかにした.この過程において,焼結温度1500℃における成型を目指した予備実験を行い,基礎的データを得ることができた. BC 炭素繊維のファイバー・ブリッジング効果については,摩耗プロセス記述のための基礎的なデータを取得しており,複合材料のモデル化と熱伝導・熱弾性特性評価により得られた解析手法を用いて解析を進めている.摺動ローターに付着した摩耗粉の分析に時間を要したために開始時の計画から約3ヶ月遅れて進行しているが,今後の解析の可能性が示されたと考えており,総合的に判断して,ほぼ順調に推移しているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画最終年度である平成26年度においては,研究主題であるC/Cコンポジットの摩耗プロセスをナノレベルの検証により明らかにし,これに及ぼす成型温度などの成型条件の確立と第3成分添加や材質の均質性確保による摩擦・摩耗特性の向上を図る.材料の炭化・焼結工程については1100℃以上での試作を試み,研究協力者や企業技術者の意見も踏まえてBC 由来のナノ炭素繊維の黒鉛化に挑戦したい.これまでの検討をさらに進め,開発した新素材の比摩耗量を10^-12 のオダーへと高めたい. 摩耗粉の脱落を妨げるナノレベルでのBCファイバー・ブリッジング効果については,力学モデルを用いて弾性数理解析を行い,その様相を明らかにする.摩耗粉の脱落に関するBC繊維の処理,第3成分の添加物の効果などの影響を数値的に評価して,材料設計の視点から検討を行う. 微視力学の観点から総合的に結果を検討し,この新規摺動材の変形挙動および摩擦摩耗のメカニズムについて,考案したランダム性を有する繊維網構造の力学モデルによる理論解析の妥当性を確認する.併せて,試作した新規摺動材を用いた立体カム機構を用いて,ミリサイズ・マシンの材料適用の妥当性について総合的に評価したい. 平成26年度の研究計画を実施するために,代表者65万円,分担者25万円を使用して、この年度の研究計画の達成にあたる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額2,851円が生じているが,これは,申請者が当初の見積額よりも低価格での購入,納入がなされたためである.今年度以降においては大学の経理システムとできる限り照合しながら,十分に注意して経費使用にあたりたい. 次年度使用金額ついては,平成26年度の「物品費(消耗品)」として適切に支出することを計画している.
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Research Products
(5 results)